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第八章 霊媒師弥生-21
なのに____
というか、やっぱりと言うべきか、
「ぶはっ!ひひひひひ!ちょ!『うらめし……(数秒溜めてからの)や』って、なんだよ!俺、現場で、幽霊が、リアルに、『うらめしや』って、言うの、初めて、聞いた、ぶはーーーーっ!本当にいるんだな!あははははは!」
空気を読まず人の気持ちに疎い社長の、失礼極まりない馬鹿笑いに僕はなんだか幽霊に対して申し訳ない気持ちになった。
「ちょっと!笑いすぎです!」
とりあえずヒーヒー笑い続ける社長の手を引っ張り幽霊から遠ざけた、次の瞬間。
ガラ……ガラガラガラ……!!
ドーンッッ!!
突然の爆音とともに壁が崩れ、隣の病室が丸見えになった。
さっきまで社長が立っていた場所だ。
偶然、僕が手を引いたタイミングだったから、幸い社長にケガはない。
これって……この幽霊の仕業なんだろうか……?
ガラスの割れた窓枠から入り込む月明かりに、うっすらと巻立つ埃が浮かび上がっている。
そんなチープな煙幕の中、相変わらず手首をだらりと落とした幽霊が、『うらめしや』と呟いていた。
ただ、さっきまでと違っているのはその顔だ。
無表情から一変、耳まで届く裂けた口をまるで弓のように歪ませて、笑っていた。




