第八章 霊媒師弥生-20
もー、短気だなぁ。
パワー系なのは重々承知だけど、老朽激しい廃病院なんだから少しは控えてくださいよ。
崩れてきたらどうするんですか。
これはさすがに黙っていられない。
「社長、落ち着いてください。壁のヒビ広がっちゃったじゃないですか。ただでさえ、いつ崩れてもおかしくない廃墟っぷりなんですから、気を付けてくださいよ。でないと僕ら生身の人間はケガしちゃい__うわっ!!え?え?えーーっ!?」
それは本当に突然だった。
血をダクダク滴らせた能面で、動かざることマネキンのごとくだった看護師さんの幽霊が、瞬き2回の寸刻で僕の目の前まで迫ってきたのだ。
____オマエどこ中だ?コラァッッッ!!!
もちろんそんなことは言われてないけど、やんちゃなティーンエイジャーが上記のセリフと共にご挨拶を交わす時くらいの超至近距離で、僕に詰め寄る看護師さん。
てか、めっちゃ見上げてる、めっちゃ見てる!
怖っ!というかビックリした!
僕はドキドキする心臓を落ち着かせるため、深呼吸しながらジリジリと後ずさった。
看護師さんの幽霊はというと、相変わらずの能面で僕を凝視……しながら、おもむろに両手を上げて、手首をだらりと落とした。
え……?
このポーズって……まさか……あの有名なあのポーズ?
てことは、このあとに出てくるセリフは……もしかして……!
『うらめし……や』
うぉっ!
やっぱり、このセリフかーーーー!!
ベタだ!ベタすぎぃ!!
弥生さんではないが、深夜のテンションで笑いの沸点が下がっている今、あまりにベタな『うらめし……(数秒溜めてからの)や』に笑いが込み上げる。
少々丸っこい体型と、古典的なうらめしやポーズが変にファニーさを醸し出してるんだ。
が、ここで笑うのは大人としてどうだろう?
僕は必死に耐えた。




