第八章 霊媒師弥生-7
「そ、そうなんですね。でも怖くないんですか?悪霊相手に爆笑したら逆上して襲ってこないですか?」
「来るよぉ!もぉガチギレ!さすがにヤバッ!って思うけど、笑っちゃうもんは仕方ないじゃん。そういう時は素直にあやまるよ?走って逃げながらだけどねー」
「謝罪としてはサイアクだな……って、いや、なんでもないです。で、どうなんです?それで許してもらえるんですか?」
「あははは!100パー許してもらえない!」
「ですよねぇ……」
「ま、いざとなったら霊力技で霊を縛って、笑って悪かった!許して!ついでに成仏もしちゃってよ!って説得するから大丈夫!」
「はぁ……なるほど、ですね、、、」
僕は研修ノートを広げたまま、なにもメモを取れずにいた。
だって……”全身タイツ野郎”とか”深夜に視ると大爆笑”とかメモを取るべきか否か判断がつかないじゃないか。(ウソ、ホントは判断ついてる。書かなくていいヤツだ、コレ)
だけど、それでもやっぱり僕は弥生さんの話に夢中になった。
だって、社長が言ってたように、霊媒師によって視え方や霊力ちからが違うって話を、今まさにリアルな話を聞かせてもらっているのだ。
弥生さんの話に呆れたり驚いたり感心したり……。
本当に人それぞれなんだな……あぁ、もっと聞きたい!
◆
「じゃあさ、幽霊でもゴハン食べれるのって習った?」
言いながら大きなリュックの中身をゴソゴソ漁る弥生さん。
「あぁ!もう!リュックってさー、モノはいっぱい入るけど、中はもうブラックホール並みにぐっちゃぐちゃで……どこに……なにが……詰まってるか……ワカンネ」
そのブラックホールから次々と出るわ出るわ。
ブラシにポーチにスマホ充電器、ペットボトルの飲みかけコーラに(カロリー0を選んでる)キラキラハートの飾りの先にはジャラジャラと鍵の束、しわくちゃになったハンカチにいかがわしい広告付きのポケットティッシュに、飲み過ぎた時の為だろうか?胃腸薬が数個。
もうこの段階で机の上はフリマ状態。
弥生さんは口を尖らせ、さらに下層を探る。
ソフトビニールで造られた小さな妖怪フィギュア、全5種類コンプリート……これはおそらく駅前のホビーショップ前に並んでたガチャをひねってきたのだろう。
てか、僕ら幽霊相手の仕事なのに、まだ心霊成分が足らないのか?
「あれぇ?先代にお土産買ってきたんだけどなぁ……どこいっちゃったかなぁ……?……ん?んー?……!あったーーーっ!」
ブラックホールに呑み込まれ、その中を彷徨い潰されていた先代へのお土産。
それが今、弥生さんの手によって奇跡の生還を果たした。
「芋饅頭ぅ!」
世界的にも有名な猫型ロボットのキメ台詞のようなイントネーションで、天高く突き上げられた紙袋……は、見るも無残、クシャクシャに潰れていた。
が、しかし、先代の喜びようは尋常じゃなく、
「なに!?芋饅頭!?弥生しゃん!芋饅頭買ってきてくれたの!?」
“弥生ちゃん” が ”弥生しゃん” になってしまう程だった。
そんな先代に目を細めた弥生さん、
「そーよー、だって先代、コレ好きでしょう?だからみんなで食べようかと思って。もちろんエイミーちゃんと誠の分もあるわよ、お茶でも飲みながら幽霊の飲食について研修しよっか」




