第八章 霊媒師弥生-6
今週は急ぎの依頼がないという事で、先週に引き続き座学をしてもらえる事になった。
講師はもちろん社長だ。
今回はたまたま出社日が重なった弥生さんも同席してくれるという。
ありがたい事だ。
ヨシ、ここはまずご挨拶からだろう。
「改めまして、弥生さん。岡村英海と申します。入社して1週間、まだ右も左もわかりませんが、研修期間中に1つでも多く吸収させて頂こうと思っていますので、ご指導よろしくお願いいたします」
弥生さんは霊媒師歴10年の大先輩だし、なにより大福の恩人だ。
僕は心を込めて90度きっかりの角度で頭を下げた。
「やだぁ!そんなにかしこまらないでよ。本当はねぇ、先週のH市の現場あったじゃん。そこに後から合流してエイミーちゃんに会いに行こうと思ってたんだけどさぁ、」
あ、そう言えば先代がそんなような事言ってたっけ。
だけど結局来なかったんだよな。
あの日は現場が終わった後も、藤田家の家族の再会に立ち会ったりとバタバタしてて、弥生さんの事すっかり忘れてました……とは言えないので「気にしないでクダサイ」なんて曖昧に笑う。
「あの日ね、あれからH市に向かってたんだけどさぁ、途中で仲間から飲みに行こうって連絡きちゃって、それで行けなくなっちゃったんだ。ごめんねー寂しかったー?」
わっ!軽い!めっちゃ軽いよ!
だけど、なんとなく憎めないのはなぜだろう?
「おぅ、弥生!」
ガラガラとホワイトボードを押しながら社長がやってきた。
「とりあえず午前中は弥生が教えてやれよ。親睦もかねてさ!」
社長はさらに続ける。
「エイミーの進捗だけど、今習得してるのは放電と言霊だけであとはまだ全然だ。だけどな、前職は通信会社の営業とクレーム対応。控えめなキャラに見せかけて、謝罪と人の懐に入り込むスキルは相当高い。高いと言えば霊力だ。ジジィから聞いてるかもしれねぇが、おそらくこの会社で一番だろう。俺みたいにソウルアーマーを装着しなくても霊体に触る事ができ、さらに霊の視え方だが、生者となんらかわりのない姿で視る事ができる。びっくりだろ?あまりに視えすぎるせいで、今まで自分に霊能力がある事に気が付かなかったくらいだ」
「へぇ、たいしたもんだねぇ。こりゃ早いトコ色々覚えてもらって、ウチの会社のエースになってもらおう。そうすりゃ私が楽できる」
「へへっ!俺もだ!」
さっきまで激しくマシンガンの打ち合いをしてたのに、今ではすっかり意気投合。
この2人って似てるかも。
エースなんて絶対無理だけど、せめて他の霊媒師の足を引っ張らないくらいにはなりたい。
今日は弥生さんもいる、色々教えてもらえるチャンスだ!
「あの、弥生さん」
「ん?なぁに?質問?」
「はい。あのですね、先週社長に習ったんです。個々の霊媒師によって同じ霊でも視え方が違うって。社長の場合は姿はハッキリ視えるけど、陽炎のような揺らめきが霊体を包んでいるって聞きました。その揺らめきがあるかないか生者と区別するとも。弥生さんの目にはどんなふうに視えているんですか?」
「私?私はねぇ、姿はハッキリ視えるんだ、欠損部分もなく完全にね。だけど誠が言うような揺らめきってのは私には視えない」
「じゃあ、僕と大体一緒なんでしょうか?」
「いや、大きく違う所があるわ。私の目に映る霊はね、色がないの」
「色がない?」
「そう、白と黒だけ。だから街を歩いててもすぐにわかるよ」
「そうなんですか!いいですね、それってわかりやすい!」
「うん、結構便利。さらに言っちゃうとね、その霊の悪霊度が増すほど黒の割合が高くなるんだ。怨み辛みが強いゴリッゴリの悪霊だと白い部分が全然なくて、もう全身真っ黒なわけ。そんなの視るとさ、うは!コイツなに全身タイツなんか着ちゃってんの?って笑いそうになるんだけど、そこで笑うと悪霊も怒るから極力ガマンしてる。でも深夜に視ちゃうとダメね!夜中のテンションで笑いの沸点下がるから、タイツ野郎キターーーーって爆笑しちゃうんだよ!あははははは」
うわぁ……デリカシーがないというか、怖いもの知らずというか……。
とりあえず弥生さんと田所さん会わせなくて良かったぁ。




