第八章 霊媒師弥生-3
「シキガミ……がよくわかりませんが、この子は僕の大事な猫なんです。だけど僕の不注意で結界に触れさせてしまって意識が戻りません、」
「そういう事か。大丈夫、泣きなさんな。エイミーちゃんは言霊は習ったかな?」
「言霊……はい、最初は社長に誤報を吹き込まれましたが、あとから正しい言霊を先代に習いました。でも使った事はありません」
「誠っ!あんた新人さんからかうとか馬鹿じゃないの?まぁいいわ、それはあとでシメるとして。エイミーちゃん、この猫助けたい?助けたいなら癒しの言葉を1つ選んでちょうだい。そしてこの猫を助けたいって気持ちを込めながら放電すればいい。あ、放電はできる?」
「できます!放電だけは大丈夫です!」
「じゃあ、やってごらん?見た感じ放っておいても大丈夫そうだけど、自分で助けたいんだろう?」
「はいっ!今すぐにでもなんとかしてやりたいです!」
僕は地面に胡坐をかいて大福を乗せた。
言霊……癒しの言霊……となれば……
僕は湾曲させた両手に電気を溜めていく。
大福……大福……待ってて、もう少しだからね。
てっきりいつもの赤い電気が出るものだと思っていた。
だけど僕の手の中に溜まるのは光沢のある雪色で、電気が溜まるほど横たわる大福の輪郭が消えていく。
そして僕の言霊は、
「痛いの痛いの宇宙の彼方に飛んでいけーっ!」
癒しの言霊と言えばこれだろう。
ほぼほぼ田所さんのお母さんの真似をしちゃったけど、あれだけ大怪我を負っていた田所さんの回復っぷりを目の当たりにした僕は、癒し=痛いの飛んでいけ、しかないのだ。
この言霊に反応するかのように、一層の光と温かさに包まれていく。
心地良い……まるで温泉にでも浸かっている気分だ。
徐々に光が消えていく。
真っ白な大福の輪郭がゆっくりと戻ってきた。
僕は大福を覗き込む……どうだろう?
意識は戻るだろうか……?
……
…………
………………
うな?
うなぁ?
うっなぁーん
「大福ーーーー!!生き返ったーーーー!!」
いや死んでるよ?
と、いう外野の声は置いといて、僕のかわいい大福はパチッと目を開け、膝の上で伸びをした。
そしてクネクネ身を捩り、急所であるお腹を丸出しにしたまま僕の顔を見詰めている。
ああ……戻って来てくれた……!
僕は思わず大福を抱き締めた。
「良かった!良かった!目が覚めた!弥生さん!本当にありがとうございます!」
「いいんだよ。私はなんにもしてないわ。言霊で元気にしてあげたのはエイミーちゃんでしょう?良かったね!」
そう言って僕の肩をバシバシと叩き、大福の顔を覗きこんで笑った弥生さん。
28才だとしれっとサバをよんだ38才熟女。
これが僕と弥生さんのファーストコンタクトだった。




