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霊媒師募集  作者: たまこ
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第七章 霊媒師と大福ー大福視点ー1

まったく、なぁにが転送装置だ。

転送なんて聞けば、黄泉の国と東京都F市を瞬時に移動できるものと思うだろう?

いや百歩譲ったとして、数分のうちにそれが叶うと思わないか?

なのになんだ。

“虹の橋のふもと”の役人の操作により発動したのは、「こちらでお待ちください」と案内された鳥居そのものだった。

あの鳥居、赤く塗られて古そうな造りをしてたのに、スイッチが入った途端パァァァァっと光り、ガショーンガショーンという音と共に変形を始めた。

猫は耳が良い。

私はその不愉快な音で脳みそが揺らされるのを我慢しながら眺めていると、宙に浮かんだ鳥居は巨大な矢印へと姿を変え(どうしてそうなる!?)、その先端から操作台にいる役人の声がスピーカー越しに聞こえてきた。


「小雪さーん!この鳥居・第二形態(矢印)がF市の神社までご案内します!なぁに現世時間で30分も走れば着きますよ。30分は長い?大丈夫です!この鳥居に搭載されてる無線機は、規格a43092(よみのくに)で霊道にも強いからリンク切れの心配はありません!到着まで遠隔ですが私とおしゃべりして楽しんで行きましょう!」


結局私はこの飛行機能のついた巨大矢印に(中の人は役人)「こっちですよー」と導かれるまま東京都F市まで、光る霊道を走らされたのだ。


これを転送装置などとよく言えたものだ。

黄泉の国⇔東京都F市神社を繋ぐ、直通霊道のガイドをしてるだけで、移動手段は本ニャンである私のランニングではないか。

せめて矢印の背に乗せてくれるとか、方法はあるだろうに。

それを言ったら「座れる仕様にできてない」とか、「乗ったとしても爪で傷つけられるとチョット……」とか、ゴニョゴニョ言いおってからに。

文句を言うのも面倒だから30分走ったけれどアナログにも程があるわーっ!


ふう。

走ったのと怒ったのとで喉が渇いた。

“虹の橋のふもと”であれば、小川に流れる清らかな水がいつだって飲めたのだが、ここはどうだろう?



ん?ん?ん?


スンスンスンスン……


匂うわ。

清らかな水の匂いだ。

私は東京都F市の神社の敷地内で、確かに感じる清らかな水の匂いに惹かれるままに歩き出した。


にしても、久しぶりに外に出たわ。

お姉ちゃんに保護される前、幼子だった私が路上生活を送っていたのは、ひぃふぃみぃ……56年も前の話。

保護されてからの私は完全室内飼いの箱入り娘。

外は車もカラスもいて危険だからと、決して外出は許されなかった。

そのかわりに家の中はどこでも自由に行き来ができたし、オモチャもタワーもおやつもダンボールもたくさんあって、家の中すべてが私の縄張りだった。

私は窓から不審者がいないか定期的に監視をし、一部屋一部屋すべてのパトロールをして過ごす。

そんな生活に不満はなかった。

むしろ外に出て危険な目に遭うよりは、狭いながらも自分の縄張りをしっかり守る事の方が価値があると思っていたからだ。


お姉ちゃんのお母さんは、いわゆるテレビっ子というものだったのだと思う。

専業主婦だったお母さんは、家事をしてるしてないにかかわらずテレビは常につけたまま。

私はソファの定位置に座り、それをよく眺めていた。

だから、完全室内飼いの私でも外の世界がどういうものなのかというのは多少わかっているつもりだ。

陽の高さから見てまだ午前中、そしてこの規模の神社であるのに参拝者がまばらで閑散としているのは、きっと今日が平日だからではないだろうか?

まばらとはいえ人はいる。

が、しかし、猫であり、ましてや幽体である私が人に気付かれる事はない。

誰もかれも私の横を、もしくは私の身体をすり抜けて去っていく。

当たり前といえばそうなのだが、ほんの少し恐く感じる。

“虹の橋のふもと”ではたくさんの動物達と一緒にすごしてきた。

はしゃぐ事こそなかったが、お互いの毛繕いをしたり、頬を擦り合わせたりと、優しい接触でお互いの存在を認識し合っていた、が、今の私は孤独だ……。

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