第六章 霊媒師-大福3
いつもなら朝になれば会社に行ってしまうのに、病院に行った次の日からお姉ちゃんはずっと私と一緒にいてくれた。
お母さんとお姉ちゃんの話し声が聞こえる。
「あんた会社行かなくていいの?」
「大丈夫だよ。今まで使えなかった有給とったの。だからしばらく小雪と一緒にいられる」
「そう……休めるならその方がいいわ。小雪も……あんたがいれば安心だろうからねぇ」
「……うん」
それからの1週間。
私にとってもっとも幸せで安心できた日々だった。
相変わらず眠たいし身体は重いし、下腹はシクシクと痛むけど、朝早くから夜遅くまで帰って来ないお姉ちゃんが、ずっとずっと隣にいてくれるのだ、これ以上の幸せがあるだろうか?
私の命の最後の日。
お姉ちゃんは、それを予感したのか片時もそばを離れなかった。
「小雪、小雪、大好きよ」
飽きもせず何度もそう語りかけるお姉ちゃんの目は涙に濡れて腫れていた。
泣かないで。
ねぇ、笑ってよ。
私は今、幸せだよ。
そう、お姉ちゃんに拾われてから、今までずっといつだって幸せだった。
__雪みたいに真っ白できれいだから!
そう言って、私に”小雪”と名付けてくれたお姉ちゃん。
__小雪!遊ぼう!
20年前、私もお姉ちゃんもまだ幼くて、見るものすべてが新鮮で、一緒にたくさん遊んだよね。
今じゃもうお互い大きくなって、昔ほどはしゃいで遊ぶ事はないけれど、それでもお姉ちゃんに撫でられるのは大好きなんだ。
__小雪はふわふわであったかいなぁ。
夜眠る時はいつだって一緒だったね。
お姉ちゃんは私をふわふわだって言うけど、お姉ちゃんの肌はつるつるしてスリスリすると気持ちがいいの。
私、お姉ちゃんと逢えて良かった。
楽しかったな、嬉しかったな、ああ、でも、なんだか眠い……
「小雪……!小雪……!逝かないで……!目をあけて……!!」
お姉ちゃん……
ごめんね、なんだか眩しくて、目を開けていられないの。
遠くから光る……道?
変だなぁ……家の中に道がある訳ないのに……光る道が私の元に迫ってくる。
眩しくてたまらないよ。
お姉ちゃん?お姉ちゃんには見えないの?
眩しいけどあたたかい……それに身体が楽になってきた……
「小雪!小雪!小雪!逝っちゃやだよーーーーーー!!」
一瞬の暗転の後、私は光る道の上にいた。
抜け殻となった私の身体を抱き締めて泣くお姉ちゃん。
ごめんね、悲しい思いさせて。
私……先に逝くね。
だけど待ってるから。
向こうで待ってるから。
お姉ちゃんが私の分までいっぱい笑って、いっぱい生きて、いつかお姉ちゃんの命が尽きた時、その時また逢えるのを楽しみにしてるから。
生まれ変わったりしないで待ってるから______




