第五章 霊媒師休日5
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「キミはこの世の猫じゃなかったんだね」
僕の手のひらに自分の頭をこすり付ける白猫は、無邪気に喉を鳴らしている。
「もしかして本当にこの神社の護り神なのかなぁ」
白猫は僕を見つめながら長いしっぽをピンと立て、ブルブルと小刻みに震わせ始めた。
「や!ウソ!しっぽが震えてる!これって『オマエ大好き!』って意味だよね!嬉しいなぁ、僕を好きになってくれたのか!僕もキミが大好き…………あれ?」
直球の愛情表現に嬉しく思いながら、立てたしっぽに違和感を感じた。
なんだろう……?
なにかが違う……?
僕はキュートなしっぽをジッと見る。
一見普通のしっぽのようで、なのに感じるこの違和感……。
……
…………
………………あーーーーっ!
わかった!
Yの字になってるんだっ!
よくよく見ればそのしっぽ、先端から数センチの所から小さく2つに分かれてる。
血が出てる訳じゃないし、どうもケガじゃなさそうだ。
てことは……この仔、猫又だっ!
聞いた事があるぞ!
猫は年をとるとだんだん妖力が備わって、人語を理解したり、しっぽが二股に分かれるんだ!
てか、それ、都市伝説じゃなかったの!?いたんだ!ホンモノ!!
まだ先端数センチだから猫又になりかけっていうか、猫又見習いっていうか、そんな感じっぽいけど、それならすごく納得だ!
猫又だから僕の言葉を理解する事ができるんだね!
そうだったのか!
スゴイ!スゴイ仔と出逢ってしまった!
しかも猫又見習いって事は妖怪であって、この神社の神様じゃないよね?
たぶんそうだと思うけど、一応、本ニャンに確認しとこ。
「キミはこの神社の神様なの?」
ニャニャニャニャ!
白猫はブンブンと顔を横に振った。
やっぱり!
「じゃあ、ここに住んでるの?」
ニャニャ……?
白猫は首を傾げて、どうでしょう?的なリアクション。
「じゃあ……キミは誰か家族とか仲間がいて、決まった帰る場所が……あるの?」
ニャァ……
今度は力なく顔を横に振った。
「そうか!そうなんだ!キミは今フリーで、神様じゃないから神社から出られないって事もないんだね?それなら僕の家に来ない?家にくれば雨の日も風の日も心配しらないし、キミの食べたいものはなんでも用意するし、それに当たり前だけどキミの事一生大事にする!……って、もちろんキミが良ければの話だけど……どうかな?」
ニャッニャッ。
白猫は僕のお願いに、行ってあげてもいいわよ的な感じで顔を縦に振った。
だいぶ上から目線だけど、さっきから喉のゴロゴロは爆音レベルで鳴っている。
や……やった……!
OKもらった……!
最高だ……こんなにかわいい仔が僕と一緒にいてくれるなんて……なんたる幸運!
いつか猫が飼いたくて、ペット可のアパートに引っ越そうと思ってたけど、その必要もなくなった。
だってこの仔は猫又だもん!
僕や社長や、霊力を持っている人にしか視えないもんね!
ペット可とか不可とか、もはやそんなの関係ない!
「あ!そうだ!名前!名前はなんていうの?って、そうか、人語を理解できても人語を話す事はできないよね。じゃあ、僕が決めてもいいかな?えっとねぇ、キミは真っ白で雪のようにキレイだから……大福!大福にしよう!僕、大福のアイスが大好きなんだ!白くてひんやりして甘くておいしい!キミにぴったりの良い名前だろう?」
ニャニャ!
大福という名前を気に入ってくれたのか、弾む鳴き声で返事をすると、ピョンと僕の肩に飛び乗った。
運命、まさに運命の出逢いだった。
これから長い長い時間を共に過ごす事になる大福。
この仔は後々、霊媒師としての僕を幾度となく助けてくれる護り神になるのだが……それはまた追々と。
まずは大福の為に猫専用おやつをいっぱい買い込まなくちゃ!
言っておくけど、僕は猫に対して甘々よ?
大福ー!
これからよろしくね!
ずーーーーっと一緒にいようねっ!
ひゃっほう!
霊媒師休日__了




