第四章 霊媒師OJT31
お母さんを連れてきてくれた先代がいて、僕に霊力を分けてくれた社長がいて、初めて今がある。
僕はまだ研修生でスキルもなく非力だ。
だけどこれだけは言える。
僕は独りじゃない。
仕事はハードだけど良い会社に入った……
…………
…………いや、ちょっと待って。
あれ……?
あれれ……?
僕なんで1人なの?
「どうした?エイミー。まだ腹いっぱいになんねーのか?」
「んな訳あるかーいって、お腹はもう充分……なんですけど、」
異空間から戻ってからというもの、社長の勢いに圧倒されてすっかり忘れてた……
僕はキョロキョロと部屋の中を見る、が、いない。
「どうした?キョドってんぞ?」
「あのー、社長?先代達がどこにいるか知ってます?僕、みんなと一緒にこっちに戻ってきたはずなんですけど……」
「ん?ジジィらは、なんか村越さんのところに行くって言ってたぞ」
ああ。
そういえば田所さん、迷惑をかけてしまった村越さんに謝りたいって言ってたな。
でも__僕は腕時計を見る、時刻は6時54分。
村越さんが何時に起きるか知らないが、もしかしたらまだ寝ているかもしれない。
起きていたとしても訪問するには早すぎるだろう。
謝罪のタイミングとしては最悪だ。
できれば相手が食事を終えた後が良い、お腹がすいてるとカリカリしやすいんだ。
話がこじれていなければいいが……。
考えれば考えるほど心配になる。
そもそも村越さんに霊感はあるのだろうか?
いやぁ……ないだろうなぁ。
だとすると村越さんに田所さん達の姿は見えないだろうから、通訳代わりに僕や社長が同行した方が良いんじゃないだろうか?
田所さん達の応援に行くか否か、事情を説明して社長の判断を仰ごうとした時だった。
__あ、あ、テス、テス。こちら持丸。聞こえますか?私は今、岡村君の脳に直接話しかけています。業務連絡、業務連絡。岡村君は清水君と一緒に部屋の外に出てくるように。
朝早いのでくれぐれも大きな声をださない事、オーバー。
あひゃぁっ!!
な、な、な、なにいまの!!
「ど、どうした?エイミー。きっしょい声出して」
「いや!なんか!今!先代の声が聞こえたんです!社長聞こえませんでした!?なんていうか耳からじゃなくて……ああ!そういや先代“岡村君の脳に直接話しかけています”とかなんとか言ってた!なんか気持ち悪い!頭の中で声が響いてた!両耳塞いで喋った時みたいな感じで!」
「ああ?ああ、“脳に直接”って言ってたのか。落ち着けエイミー、大丈夫だ。ジジィ独自の連絡方法だ。ほら、ヤツは幽霊だしスマホ使えないだろ?そう遠くない場所からなら、声を電気信号に変換して飛ばしてくるんだ。そのうち慣れる。で、ジジィはなんて?」
「えっと、僕と社長に外に出てくるようにって。それと朝早いから静かにとも言ってました」
「それだけか?」
「たぶん」
「最後に“オーバー”って言ってたか?」
「あ、はい!言ってました。それってどういう意味ですか?」
「ジジィの話はこれで終わりって意味だよ。エイミーは無線やった事ねぇのか?まぁいいや、OK。それなら聞き漏らした事はないだろう。じゃあ行ってみっか」




