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霊媒師募集  作者: たまこ
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第三章 霊媒師研修1

「オッス!オラ、社長!今日から始まるオメェの研修の教官だ!ビシビシ鍛えてやるから覚悟しろォ!オメェみてぇな強ぇヤツが入社して、オラァ、ワクワクすっぞ!」


『株式会社おくりび』出社1日目。

ホワイトボードを背に満面のドヤ顔の清水社長は、世界的にも有名なアニメキャラの口調を高いクオリティで真似ていた。


「あ……えっと……よろしくお願いします」


「なーんだよ。エイミー、ノリが悪いなぁ。あれ?もしかして、あんまり似てなかった?」


「い、いや、似てますよ。すごく上手だと思います。それから社長……‘“エイミー”って、もしかして僕の事ですか?」


「そ!岡村君の下の名前“英海”(ひでみ)でしょ?だから“エイミー”って呼ぶ事にしたんだ!」


「そ、そうですか。まぁ、“エイミー”と読めなくはないですけど、そんな風に呼ばれるのは初めてです」


「ま、そーゆー事!どこかの錬金術師も二つ名を貰ってるでしょ?あれと一緒だよ!そんな事より俺の悟○のモノマネ上手いっしょ!すっげー練習したんだ!」


「確かに上手です。そっくりです。ただ……」


「ただ、なに?」


言いかけた僕の目線は、天井のLEDを見事なまでに反射させる社長の ツルツルスキンヘッド一点に集中した。


「その、なんと言うかギャップと言いますか。声は悟○でも見た目は完全に天○飯だったので、少々違和感を感じまして……」


あ……と短い声を発した社長は、ゴツゴツと硬そうな大きな手でツルリと自身の頭を撫でた。


「言われて見れば、確かに……」


その表情はほんのりと寂しそうな感じに取れなくもない……まさかそんな反応を返されると思わなかった僕は慌てて、


「あ、いや、でも、それがかえって良いと思いますよ!」


と、とりなしてみる。

するとしょんぼりから一変、本当にそう思う?と嬉しそうに顔を上げた。

子供か……。


「じゃ、エイミーに誉めて貰ったところで、本題の研修に入るよ!太陽拳!」


立ち直ったと同時に、さっそく天○飯のモノマネねじ込んできたけど、社長、そっちはあまり似ていないみたいです……。



「まずこの研修で覚えて貰いたい事は、除霊云々より先に“生きた人間”と“幽霊”との見分け方だ。エイミーの場合、霊力が強すぎて目視だけでの判別が難しいみたいだから」


モノマネ芸人から教官の顔に切り替えた清水社長の研修が始まった。


「霊の見え方は、見る側の力によって異なるんだ。昨日も言ったけど俺の場合、ハッキリと姿形を捉える事は出来るけど、輪郭には陽炎のような揺らめきがある。生きた人間にはまずありえないものだ。また別の霊力者の場合は半透明だったり、霊の身体一部が欠損してたりもする。昔の幽霊画で足が描かれていないのも、そういった理由があったのではないかと推測できる」


僕はひろげたノートにメモを取りながら、社長の座学に聞き入っていた。


「要は、持ち前の霊力の強弱によって同じ対象でも見え方はが異なるって話。霊力が強ければハッキリと姿が見える。霊力が弱ければ相応に透明度が上がり、霊体はどんどん見えなくなっていく。だから無霊力の人には霊体が見えないんだ。確かにそこにいるのにね」


社長の最後の一言で、僕の身体にぶわっと鳥肌がたった。

“確かにそこにいるのにね”って事は、もしかしてここにも幽霊がいたりするのだろうか……?

僕が気付いてないだけだったり……する?


「あー。エイミー、キョドってるよ?ここにも霊がいるんじゃないかってビビったんだろう」


「は、はい。少しだけ怖いかなーなんて……ハハハ、すみません」


「何言っちゃってるの?ここに霊がいたらエイミーにはハッキリ見えるだろう?それが見えないならここにはいないって事だよ」


「そうでした。はぁ……良かったぁ」


「これから霊媒師になる男とは思えない発言だな。まあ、この会社内に先代以外の霊はいないから大丈夫だよ」


「そうなんですか?」


「ああ。この建物、外壁に蔦でいっぱいだろ?」


確かに。

出勤した時にまず目に入るレンガに絡まる無数の蔦は、なかなか味わい深い仕上がりになっている。


「アレ結界だから」


「え?」


「だから結界。漫画やゲームによく出てくるアレと一緒だよ。結界張っとけば外部から霊は入ってこれないんだ。昔は先代が張ってたんだけど死んじゃったからさ、今は俺が張ってる。念深い悪霊も弾くくらいの威力があるけど、先代の力はもっと上だから、こんな結界じゃ暖簾くらいにしか思ってないみたいで自由に出入りしているよ」


「あの蔦……結界だったんだ」


「結界ってな、数時間から数日だけもてばいいものと、このビルみたいに長期的にもたせなくちゃならんのとある訳だよ。短期間ですむ場合は霊力をそんなに使わないけど、長期的にとなると術者の霊力と体力の消耗が激しいんだ」


そう言ってホワイトボードに黒いペンでこのビルらしき簡単な絵を描き始めた。


「3階建てのビル丸々1棟、無期限で24時間365日結界を張るなんて1人じゃ本当に無理。人力だけで張るのなら5~6人の交代制にしてやっとだ。それでも引き継ぎの時に僅かな隙間ができる可能性がある。『一生懸命結界張ったけど悪霊に入られちゃいました』なんてのはプロとしてありえない。そこでだ」


今度は緑のペンに持ち替えて、さっき描いたビルの絵に蜘蛛の巣のような蔦を描き加えていく。


「建物に絡まるなら蔦でも薔薇でもなんでもいい。全体をまんべんなく植物が覆ってくれたら、どこか起点を決めてそこから霊力を流し込むんだ。あとは植物が勝手に霊力を運んでくれるから2~3日に一回霊力を補充してやればいい、簡単だろ?そのうちエイミーにも教えるから強力なの張ってな」


「えぇ!僕が結界を!?」


嘘だろ??

何度も言うが、僕は今まで幽霊も見た事ないし金縛りにもあった事が無い。

そんな僕がビル丸ごと結界張るの?張れるの?本当に?


「ダイジョウブ!張れるさ。いや、俺が必ず張らせてみせる!その為の研修だ」


「あ、ありがとうございます。頑張ります」



「話が脱線しちゃったけど、“生きた人間”と“幽霊”との見分け方に戻るよ。とは言ってもなぁ、エイミーみたいな子は初めてだからなぁ。他の社員でここまで見える子いないから、本当に手探りだよ」


「あ、そう言えば、ウチの会社って僕以外の先輩霊媒師の方って何人くらいるんですか?」


「霊媒師?ああ、現場に出てるのは5人いるよ。だけど基本的に外に出てるから普段は会社にほぼいないんだ。みんな家から現場まで直行直帰で、出社するのは月1くらいかなぁ?ま、そのうちタイミングが合えば追々紹介するよ」


言いながら社長は、ホワイトボードに描かれたビルの絵を消していく。

そして新たに描かれたのは、赤ペンで大きく“電気”という文字だった。


「さて、エイミーってさ、もしかして一年中静電気すごくない?」


「えっ?あっ!はい!すごいです!」


「だよね。じゃあさ、家電、パソコン、照明、そういうのよく壊れない?」


「壊れます!壊れます!昔からそうです!」


「やっぱり帯電体質か。じゃあさ、その電気をエイミーの意志で放電できる?緑の髪の鬼娘みたいにさ」


「そんな事できる訳ないですよ。っていうか鬼娘って誰の事ですか?」


「ああ、わからなければいいや。でもって、放電はまだできないのね、はいはい」


“まだできない”って、社長。

これも研修すれば出来るようになるって事ですか?

まあ、結界を張れと言われるよりは、放電の方がまだイケるんじゃないかと思ってしまうのは、だいぶ社長に毒されてきたという事か。


「人間の脳は電気信号でやりとりされてるって聞いた事ない?」


「あります。でも僕の情報源はちゃんとした授業とかじゃなくて、ネット上での読みかじり程度ですけど」


「充分だ、エイミー。さて俺も専門じゃないが、人間の脳内は電気信号のやりとりで動いている、らしいけど、死んで肉体がなくなると本来ならそれで終わりになる。人は誰しも死ぬ時に悔いるもので、もっと勉強しておけばよかった、もっと人に優しくすればよかった、もっといろんな所に行きたかった、食べたかった、とか思うんだ。だけど普通の人なら多少の後悔はあって当たり前。失敗しない人はいないし、小さな悪い事くらいなら誰だってしてる。人生、60点くらいがちょうどいい」


「そうかもしれませんねぇ」


「だろ?だから大抵の人は悔いる事はあっても、最終的にはこんなものだろうと成仏する。だけどな、その悔いが本人にとって大きな問題だったら?例えば誰かに殺された、突然の事故で自分の死が受け入れられない、小さな子供を残して心配で死にきれない、とかさ。色々ある訳よ。そんな強い思いを抱えた人の脳内では何が起こってると思う?」


「さ、さあ?よくわからないけど社長が最初に言った、電気信号と関係があるのですか?」


「ビンゴ!生前、脳内を飛び交っていた電気信号がすべて、怨みつらみ心掛りに投入されるんだ。今まで手足を動かす為に出されていた電気信号をはじめ、生きる為、動く為に割り当てられてたもの全部な。その強い電気信号の集まりが霊体だと言われてる。幽霊が初夏から夏に多く見られるのはその時期湿度が高いだろ?水は電気を通すから。だから霊力が強い人間は帯電体質が多いんだ。電気に電気が合わさると力は増幅するだろ?エイミーの場合、君自身が強力な増幅装置になってるんだろう」


「なるほど……でも社長、帯電体質の人の全てが霊を見る事ができる、って事は―」


「それは無い。あくまでも理由の1つだ。他にも人の感情に共鳴しやすいとかいくつかの条件が重なる必要がある、が、しかし、すべてが解明されている訳じゃないし、こんなに偉そうに講釈垂れたけどコレみんな仮説だからな!ま、一応有力な仮説って事で大体こんな感じなのかなくらいで覚えとけばいい。メモもとらなくていいぞ」


「はい……なんだかよくわからなくなってきました」


「そだな、ま、難しい事はわかんねーよ。だけど、霊障に困っている“生きた人間”がいて、この世に縛られもがいている“幽霊”がいて、そんな人達助ける事が出来るのは俺らしかいない訳だから、頑張るしかないわな」


あれ……?

普段はハシャギすぎの34歳という印象が強いのに、今の社長の言葉カッコイイじゃないか。

なんのかんの言って先代亡き後、この若さで社長に就任したのは伊達や酔狂ではないという事か。


「ここまではいいかな?じゃあ、次にエイミーがどうやって“生きた人間”と“幽霊”を見分けるかの方法を教えるよ。ま、急遽考えた案で検証してないから、まずはこれを試してみよう。俺はちょっと動きやすい格好に着替えてくるから、10分休憩な」



10分後。


着替えをすました社長は、金ラメの2本線が入った黒のジャージ姿で現れた。

センスはともかく筋骨逞しい身体が更に強調されている。

身長175cmの僕が見上げる程の高身長は、おそらく190cmを超えているのではないだろうか?

にしても、ガチマッチョ×スキンヘッド×ジャージの威圧感がこれほどとは。

深夜のコンビニでしゃがみこむ集団の中に社長がいても違和感は無いだろう。


「おまたせ、エイミー!じゃあ始めようか!」


「はい、よろしくお願いします」


僕はそう言って改めて一礼する。


「とは言っても、これが合っているかはわからないけど、とりあえず第1案でいきますか」


パァン!


突然、社長は力強く手を打った。

室内に乾いた破裂音が響く。


「よし!来い!エイミー!迷ってウダウダ考えても答えは出ない!知ってるか?男ってのは拳と拳をぶつけ合えば大抵の事は解決できるんだ!」


そう叫び、足を大きく開いて腰を落とした社長が、僕に向けた指先をクイクイと曲げ、かかって来いと言っている。


いや、ちょっと待ってください!

拳と拳ってなんですか!?

無理です!

喧嘩なんてした事ないし、社長と僕じゃ大人と子供…いや、野獣と赤子だ!

僕は山ほどの言いたいことがあったけど、ジリジリと詰めてくる社長に後ずさりするのが精一杯だった。


「なんだエイミー、遠慮はいらん!思い切り来い!俺の身体は鋼鉄だ、物理攻撃の8割は無効にできる!」


「しゃ、しゃ、社長!え、遠慮なんかしてないです!これ研修と違うでしょ!」


「いや、研修だ!漫画でよくあるだろ?潜在能力を秘めた主人公が、追い詰められてもう駄目だってなった時に力が解放されるってシチュエーション!俺はアレを狙ってる!こうしてエイミーを追い詰めたら放電できるようになるんじゃないかと思うんだ!」


「いや、難しいです!是非他の方法でお願いします!」


「他のって言われてもなぁ……今のトコ思いつかないよ。あっ!わかった!エイミーはやっぱり遠慮してるんだな?新入社員なのに社長に手を出すとのはチョット……的な!安心しろ!この会社、誰が社長だと思ってる!俺だぞ?毎日が無礼講だ!それにホラ!」


社長はホワイトボードの横に置かれた段ボール箱から使い古したフライパンを取り出すと、


「こんな事もあろうかと用意しておいたんだ!良く見てろよ?」


研修には場違いなアイテムに何を想定したんだろう、と、呆気にとられて見ていると、社長は両手でフライパンを掴み、首をコキコキと鳴らす。

そして、


「だぁぁっしゃっ!!!」


グシャッ!


まさに秒だった。

先程まで真円の形状をしていたフライパンが、両方向から加えられた圧倒的な力によって蛇腹にひしゃげ潰された。


「な?俺、エイミーが思ってるより多少は力があるんだ!だから安心してかかって来い!」


いやいやいやいやいや!

多少じゃないです!

それ以上です!

こんな人間凶器みたいな人に冗談でも戦いを挑む訳ないでしょう!


僕は半泣きでフルフルと首を振った__もちろん、横にだ


「エイミー、まだ遠慮してるのか……意外と真面目なんだな。仕方ない俺から行くぞ!」


更に高速で首を振る僕に、「はは、そういうのもういいから」と、手を挙げて制した社長は、拳法のような構えをとった。


僕は__

生まれてこの方、喧嘩らしい喧嘩はした事がない。

趣味なんてものは無いけど、休日にはのんびりと散歩をして疲れたらカフェに入ってお茶を飲むのが楽しみだ。

そして今はワンルームの小さなアパート暮らしだけど、そのうちもう少し広くてペット可のアパートに引っ越したら、そこで猫を飼うのが夢なんだ。

血統証なんて付いてなくていい。

雑種でなるべく不細工な猫を引き取りたいと思っている。

だって、そういうは良縁に巡り合えるチャンスが少ないかもしれないだろう?

僕がそののお父さんになって一生幸せなニャン生を送らせてあげるんだ。

だからこそ、新しく決まったこの仕事を頑張ろうと希望を胸にやってきた。

なのに……なのに……この状況なんなんのぉぉぉ!

正直言ってめっちゃ恐いんですけどぉぉぉぉぉ!!


「ほぉぉぉぉわちゃぁぁっ!!」


満面の笑みで奇声を上げながらジリジリと寄ってくる社長。

机や椅子にぶつかりながら逃げる僕。

ああ、だけどまずいぞ!

もう後ろは壁だ、追い詰められた!


それ以上逃げようの無い僕は懸命に訴える。


「社長、もっと別の方法考えましょう!僕頑張りますから!きっと放電してみせますから!」


「もちろん放電してもらうよ……!感じる……感じるぞ……!エイミーの中の未知なる大きな力を……!その力!俺の重い一発で解き放ってやる!スーパーミラクルダイナマイト放電能力引出しパァァァンチッッ!!」


殴られる!

僕はそう感じた瞬間から全ての動きがスローモーションで見えた。


社長の下半身が大きく捻られ_

握られた右腕が肩ごと後ろに引かれた_

ほんの半瞬、力を溜めた後_

バンッと左足が前に出て_

足から腰、腰から腕に伝わった威力が_

風を切り僕の鼻先に向かってるのが見える_

ゆっくり_

とてもゆっくり近づいてくる_

これなら避けられるんじゃないかな_

僕の鼻まであと30cm_

あと20cm_

10cm_

あれ?なんだろう?これなら、避けるよりも_

3cm_

2cm_

1cm_

0_


ペチン!



バチッ!


二つの音が重なった。


「痛って!!」


社長はその拳が僕の手に触れた瞬間、赤色の光が出る程の激しい静電気にやられ、痛い!バチッときた!と騒いでる。


避けるつもりでいた“スーパーミラクルダイナマイト……”なんだっけ?

そのナントカパンチは、距離を縮めるにつれ明らかにパワーダウンしていった。

やっぱり社長は僕を傷つけるつもりはなかったんだ。

それなら、と、僕は野球のキャッチャーよろしく両手のひらをミットに見立てて社長のパンチを受け止めた。


「あー痛かった!バチィってきたよ!バチィって!」


「すみません。静電気きちゃいましたね」


「ああ、いいんだ!つか、エイミー放電できたじゃん!」


「いや、これただの静電気ですよ」


「違うね。さっきのはエイミーの霊力が放出されたんだよ。バチッてなった瞬間光ったろ?普通の静電気は青白い光か、もしくは黄色に近い緑色だ。だけどアレは確かに赤かった」


「そう言われると、寝る時に布団の中で見る静電気の色とは違うような気がします」


「だろ?まだ量は少ないけど放電できたんだ。初日からすごいな!やっぱり拳と拳をぶつけ合うと分かり合えるもんなんだ!あっ!それから追い詰められて潜在能力が発揮される作戦、大成功だな!」


「えぇ?えぇ、まぁ、結果的にそうかもしれません……」


「よし!しばらく放電の訓練をしよう!で、好きな時に好きなだけ放電できるようになったら、“生きた人間”と“幽霊”を見分けられるようになるぞ。“生きた人間”に放電した場合、相手の身体のどこかに触れて初めて赤く光る。だが、“幽霊”の場合、放電した電気が別の大きな電気の集合体に引っ張られ、直接触れなくてもエイミーから“幽霊”まで赤い電気の線で結ばれる。要は、エイミーと“幽霊”間で小さな落雷が発生した感じになるんだ」


「おぉ!目に見えて印がでるならわかりやすいですね!」


「なっ!そうだろ、そうだろう!これで駄目なら、もう1つ応急処置的な見分け法もあったんだけど、なるべくなら使いたくない手段だったからな!ああ、良かった!」


「もう1つの手段ってどんなのですか?気になります」


「なに、簡単だよ。エイミー、スマホ持ってるだろ?」


「はい、ありますけど」


「スマホのカメラで、判断に迷う対象者にレンズを向けるんだ。“生きた人間”なら映るけど、“幽霊”なら映らない」


「へぇ!その方がずっと簡単じゃないですか!スマホならいつも持ってるし、いっそそれで良いんじゃないでしょうか?」


「あぁ、確かに簡単だ。けどな、今の世の中は盗撮だなんだって騒がれやすいだろ?エイミーにそんなつもりはなくても、男が街中や電車の中でカメラ持ってキョロキョロしてたら面倒な事になると思うぞ?まぁ、そん時は俺が引き取りに行ってやるけどな」


「あ、確かにそうかもしれないですね……やっぱり僕、放電の訓練頑張ります」


「だな。じゃあ、エイミーそろそろ昼にすっか!放電すると腹減るだろ?今日は何でも好きな物食わせてやるから遠慮しないで言ってみ?」


「本当ですか!?嬉しいなぁ!じゃあ、遠慮なく……駅前に雰囲気の良さそうなカフェがあったんですけど、そこに連れてってもらえませんか?」


僕は社長のご好意に素直に甘える事にして、面接に来た時から気になっていた駅前のおしゃれなカフェをリクエストした。

いくらご馳走してくれるとは言ってもあまり高いお店だと悪い気がするし、その点ランチタイムのカフェなら安心だ。


「カ、カフェ?ちょっとエイミー何言ってるの?カフェって女が行く所だろ?それを、オマエ、野郎2人でノコノコ行ったら笑われるだけだぞ……?」


「え、ちょっと社長こそ、それどんな偏見ですか?そんな事ないですよ!僕、休みの日は散歩がてらに1人でも行きますよ?」


「マジか!!オマエ…意外とスゴイ奴なんだな!俺にはそんな度胸、とてもじゃないが……否―――――っ!俺は社長だ!大事な社員が、そのカフェとやらに行きたいと言っているのに何を迷う事がある!よし!行くぞ!ついて来い、エイミー!」


「あ……いや、僕、そこまで行きたい訳じゃないので、なんなら別のお店でも――」


「うるさい!俺が行くって言ったらいくんだよっ――」


「だけど、社長、本当はイヤなんでしょ?――」


「イヤじゃねぇ!カフェで牛丼食うんだ――」


「牛丼は無いと思います――」


「何!んな訳あるか!――」


「……――」


「…―」




結局カフェに行った僕達は、可愛い店員さんお勧めの『自家製トマトソースのポークアボガドライス』のランチプレートを頂きましたっと。



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