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霊媒師募集  作者: たまこ
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第九章 霊媒師事務所の新入社員-13

「何十枚と撮ったんだ。でも僕の霊力ちからではこれが精一杯で____」


最後の幸せな家族写真。

僕の肉眼にはあんなにハッキリ映っていたのに、レンズを通すとその姿は消えてしまう。

電気の集合体である幽霊を写すため、僕は意識的に自分自身を帯電させながら撮った。

電気を帯びた僕と霊体。

微弱な電流が引き合って、ぶつかって、そのエネルギーがレンズに焼き付けられることを願いながら幾度もシャッターを押した。

何十枚と撮った中、たった一枚だけこれはと思う画像ものがあった。

だけど、それはあまりに不確かで曖昧なものだった。


「岡村さん、スマホ、お借りしますね」


ユリちゃんが僕の端末を受け取る手がかすかに震えていた。

ああ、だけど、この写真を見せることは正しいことなのだろうか?

かえって淋しい思いをさせてしまったらどうしよう。

写真の中に写る家族の姿は、個体識別ができない。

家族それぞれが座っていた場所に、柔らかい雲のような白いもやが映り込んでいるだけなのだ。


ユリちゃんは黙ってじっと写真を見詰めていた。

ずっとずっと長いこと、時折画像を拡大させたりしながら、唇をキュッと噛み締め見詰めていた。


「岡村さん、」


長い沈黙のあと、やっと顔を上げたユリちゃん。

彼女は数度の瞬きで大粒の涙をボロボロ零し、口元を歪ませ幼い子供のようにわんわんと泣き出した。


「お、岡村さん、あ、ありがと、ありがと、この写真、ラインで送って、ほしい」


しゃくりあげながら、何度もお礼を言うユリちゃん。

白いもやしか写っていないのに、それでも少しは喜んでくれたのなら、これ以上嬉しいことはない。


「お、岡村さん、すごく、すごく、良い写真です。ママも爺ちゃんも婆ちゃんも、みんな死んじゃったのに、本当なら、もう、会えないはずなのに、あの日、会えただけでも、奇跡なのに、こんな、こんな、良い写真撮ってもらって……みんなすごい笑ってる」


え……!?

みんな笑ってる……?

いや、待ってくれ!

そこに写っているのは白いもやのはずだろう?

それが違うと言うのなら……

その写真、キミの目にはどんなふうに視えているんだい?

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