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霊媒師募集  作者: たまこ
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第二十八章 霊媒師 三年後ー47

あー、こんなに元気に笑うのなんて久しぶり。

ひみちゃんとはホントに色々あったけど、てかガチで色々やらかしたけど、まぁ、それもぜんぶ終わった事だ。

これからは、仲良くやっていけたらなって思ってるんだ。

それとそれと、近いうちに ”おくりび” のみんなも一緒に集まりたいとも。

ひみちゃんはみんなのコトが大好きで、友達になりたがってる。

だから会わせてやりたいよ……とは言っても、みんな驚くだろうなぁ。

周りを巻き込み散々騒いだその挙句、週が明けたら「『僕達、仲直りしましたぁ!』」ってオチなんだもん。

でもダイジョウブ。

そんなコトで怒るような人達じゃない。

僕から事情をちゃんと話せば、分かってくれると思うしさ。



『あぁ……すっごく楽しいなぁ。幸せだなぁ。僕、無理をしてでも外に出てきて良かったよ』


ひみちゃんはそう言いながら、ゴロンと大地に寝っ転がって笑いながら目を閉じだ。

だから僕も隣に寝転び空を視ながら言ったんだ。


「あはは、そりゃあ良かった。ま、楽しいのは僕もおんなじ。ひみちゃん……今までごめんね、淋しかったよね。だけどもう大丈夫、これからはずっと一緒だ。キミが外に出られるように定期的に僕の霊力ちからを分けてあげるし。ん? 心配しないで平気だよ。だって増幅の印を結べば良いんでしょう?」


すると彼はのそりと起きて、僕の顔をジッと視たあと『ありがとね』と小さく言うと、視る視る顔を歪ませた。

まるで小さな子供みたいに、鼻を真っ赤に泣き笑いをしたんだよ。

あーあー、キミはホントに泣き虫だ。


ひとしきり泣いた後。

ひみちゃんはタオルで顔をゴシゴシしながら言ったんだ。


『えへへ、泣いたら喉が渇いたよ。ちょっとソコまでお水を飲みに行ってくる。そうだ大福、僕に付き合ってよ』


え、ちょ、いきなり?

お水を飲むってどこまで行くの?

聞き出す前に連れ去りアゲイン。

ひみちゃんはエイッとジャンプで、うんてい(・・・・)から姫を担ぐとぴゅーっと走って行ってしまった。


「…………ひみちゃん、姫よりもっと自由だな」


取り残された僕はと言うと、仕方がないから草の上でゴロゴロしながら戻ってくるのを待ったんだ。


……

…………


戻って来たのは30分経ってから。

遅いじゃない、一体どこまで水を飲みに行ったのよ。

ひみちゃんは『ごめんごめん』と頭を掻いて、大福はなんにも言わずに彼にピタッとくっついている。

やだ……この30分でなにがあったの?

やけに仲が良いじゃない(ちょっとジェラシー)。


ジト目で探りを入れた僕。

ひみちゃんはそれを華麗にスルーして、突拍子もなくこんな事を聞いてきたんだ。


『……ねぇ、さっき僕らがバトルをした時。キミはペンダントを、……霊力ちからの塊を呑み込んだだろう? それって急に思い出したの? や、増幅の印にも気づかないキミだから、よくそこに目をつけたなぁって思ってさ』


「ん? ペンダント? ああ、あれは頭の中に声が聞こえてきたんだよ」


____方法は呑み込む事、

____胸元にあるじゃないか、

____4年前に構築した、

____あのペンダントが、


「……って。あれってば僕の声に似てたんだよね。……あ、もしかしてひみちゃんだった? さりげなくサポートしてくれたとか?」


話し方はぜんぜん違った。

でも、他にいないじゃない。

消去法でひみちゃんかなぁって思ったけど、違うの?


『……そうだったの。でも、それは僕じゃないよ。覚えてない? キミがアレ(・・)を呑んだ時、僕すっごい驚いてたででしょ』


「あ、そういやそうだね。じゃあ、誰だったんだろ? ひみちゃん知ってる?」


何の気なしに聞いたんだ。

僕はてっきり ”知ってる!” とか ”知らなぁい” とか、ラフな答えが返ってくると思ってた。

なのに、ひみちゃんは肩をすくめて曖昧に笑うだけ。

何も答えてくれないの____



____その時僕は、心が緩み切っていた。


大好きな大福と、仲直りをしたひみちゃん。

フィールド(ここ)には僕達、フタリとイチニャンだけしかいないと思っていたし、誰にもジャマされない、誰にも干渉されない、そんな場所だと信じて疑わなかったの、……それなのに。



……

…………

………………


____…………ろ……か者、

____役に立たない欠陥め、

____サポートどころか ”希少の子” に害を成すとは救いがない、

____もういい、お前は回収する、



頭の中に突如聞こえた謎の声。

僕のと似ているその声は、さっき聞いたあの声に似t、



ブンッ、



え……?

思考が、強制的に中断された。

謎の声が聞こえてすぐの、あっという間の出来事だった。

ついさっきまで、僕の前にいたひみちゃん。

その彼が消えてしまった。

電子機器の起動音に似た音がしたのと同時。

あーも、うーもない、なんの言葉も残さずにだ。



「え……? え……? ……待って? ……なに……? なにが起こったの……ひ、ひみちゃん? ……ひみちゃんドコ……? 返事してよ……どこ? どこ……? どこ!? どこに消えたのぉぉぉぉ!?」


果てまで続く大草原。

綺麗で、暖かくて、僕らが昔一緒に遊んだ木の公園もあるんだよ。

さっきまで2人でブランコ乗ったのに、これからはずっと一緒と決めたのに、そのひみちゃんが瞬き一つで消えてしまった、…………いや、謎の声に消されてしまったんだ。


辺りを何度も、何度も何度もしつこいくらいに視渡した。

ひみちゃんがどこかにいればと薄い望みに賭けたんだ。

ああ……でも、姿どころか彼の気配がどこにもない。

ひみちゃんが立ってた場所には、僕の作ったタオルがポツンと落ちているだけ。

心臓がバクバクいいだす、どうしようもなく汗を掻く。

さっきの声……”回収する” ってどういう意味なの?

そもそも一体誰なんだ、生者? 死者? それとも____



____英海(ひでみ)



またも突然だった。

頭の中にさっきの声が再び響いてきたんだよ。

息を呑んで上を、横を、近くを、そして遠くも視た、……が、声の主は姿を視せず、声だけで語りかけてきた。



____これまで迷惑をかけてきた、

____詫びを入れさせてもらう、



は……?

なに言ってるの……?

迷惑ってひみちゃんの事?

だとしても、なんでアナタがお詫びをするの?



____奴は立場もわきまえず、

____己の欲を優先させて ”希少の子” に害を成した、

____本来の仕事を忘れ、やるべき事を疎かにし、

____あろうことか ”希少の子” の霊力ちからを奪って

____表に出るなぞ愚かにも程がある、


だから、なにを言ってるの?

言葉の意味が分からない。

己の欲を優先させた?

僕に害を成した?

愚かにも程がある?

それ、ひみちゃんの事を言ってるの?

ふざけないでよ。

確かに彼はやらかしたけど、それには理由があったんだ。



「ちょっと待って! さっきから黙って聞いてりゃ言いたい放題だ。アナタ、ひみちゃんと僕の何を知ってるの? 知りもしないで勝手な事を言わないで。僕の友達をばかにするな。そもそもアナタは誰なんだ。名乗りもしない、姿も視せない、陰に隠れて好き勝手に喋るだなんて失礼じゃないか。とにかく、早とちりをしないでほしい。途中で少々イザコザしたのは認めるけどさ、僕は全然怒ってないし、身内同士の些細なケンカだ。だから今すぐ返してほしい、ひみちゃんを此処に戻して!」


腹の底から声を張り上げた。


____返す?

____英海(ひでみ)はあの欠陥を欲するのか、


それは心底意味がわからない、とでも言いたげだった。

その空気、そっくりそのまま返してやりたい。

僕の声と似てるクセして気取った感じに話してさ。

どうでも良いから早くひみちゃん返してよ。


「もちろん、彼は僕の友達なんだ。回収って、どこにやったか知らないけど、今すぐ元に戻してほしい」


____……友達、あり得んな

____そもそも、”希少の子” とは立場が違う、


「はぁ!? 立場ってナニ!? 僕が生者だから? ひみちゃんは違うから? 友達になるのにそんなのぜんぜん関係ない! ひみちゃんは今どこにいるの? 無事でいるの? せめて先にそれだけでも教えてよ、」


嫌な予感で胸がざわつく、時間が経つほど安否が気になる。

答えてくれるかな、答えてほしい、お願いだから。


____どこにいるかは答えられん……が、

____無事ではあると保証しよう、


ああ、良かった……!。

とりあえず彼が無事なら一安心だ。

本当は居場所も教えてほしい、てか声のヒト、勿体ぶらずに教えてよ。

でもまあいい、どうにかして聞き出してやる。

じゃないとひみちゃん、今頃独りで泣いているかもしれないよ。

いつかの約束。

どっちかが迷子になったら、もうどっちかが探すんだよね。

今度は僕が探し出すから、必ずキミを迎えに行くから、だから少し待っていて。


それでだ、なんて聞いたら良いだろう?

ゆっくりしている時間はない。

フル回転であれやこれやと考えてると、まるでそれを邪魔するように声が頭に割り込んだんだ、……そう、そして僕は聞こえた言葉に固まった。


____保証はする……が、但し、

____複雑化した奴の自我は消滅させた、


「………………は? ……今、なんて言ったの? 聞き間違いかな、……ジガって? ジガを……自我を消滅させた……?」


思考がまったく追いつかない。

無事だって言ったよね、それなのに自我は消滅?

それってつまり……霊体いれものは存在するけど、自我は、魂は無くなったという事なの……?

ウソだろ……? ウソだと言ってよ、じゃあひみちゃんは? もう、……どこにもいないの……?

そんな……そんなの……無事とは言えないじゃないか……ふざけるな……ふざけるなよぉぉぉ!!!




……

…………

………………


そこから。

僕の記憶は途切れ途切れで、あんまり覚えてないんだよ。

ただ、やたらと泣いてやたらと騒いだ……それだけは覚えてる。

感情が昂りすぎて自分が自分でなくって、悲しみと怒りと後悔、己の無力に打ちのめされて、そのまま意識が遠のいたんだ。

 



目が覚めた時、僕は神社の中にいた。

人気ひとけのない裏手の一角、錆びれたベンチに深く腰掛け、リュックを胸に抱えてた。


『うな! うなぁぁぁっ!』


目を開けたその瞬間。

大福がリュックを蹴飛ばし僕の胸に飛び込んで、『うなぁうなぁ』と心配そうに鳴いたんだ。


「大福、」


本当はさ、”心配かけてごめんね” とか ”フィールドからどうやって戻ってきたの” とか……言いたい事がいっぱいあった。

でも言えなかった。

声が出ない訳じゃない、そうじゃなくて、気持ちが落ちてて話す気力がなかったの。

そんな僕をお姫はザリザリ舐めだして、長い尻尾の4本すべてを僕に巻いてくれたんだ。


ああ……姫、ありがとね。

姫の霊体からだは氷のように冷たいけれど、気持ちがすごく温かい。

僕はなんにも喋らずに、猫の霊体からだを両手で強く抱きしめた。

フワフワ毛皮が優しくて、おひさまみたいな匂いもしてさ、すごくすごく心地が良い。

心地の良さに気持ちが緩む、力が抜けて、そしたら涙が溢れてきたんだ。


しばらくそうして猫を抱きしめボーッとしてさ、気づけば空が赤く染まって夕方になったんだ。


ぐぅぅ……


ああ、お腹が鳴ってしまったよ。

お昼を食べて数時間、どうりでお腹が減る訳だ。

まったく生者は不便だな。

どんなに胸が張り裂けそうでも空腹になるのだから。


『うなぁ、うななな』


姫も音を聞いたのか、僕の顔をペロリと舐めると ”もう帰ろう” と言ったんだ。

あ……そうだね。

神社もそろそろ閉まる頃だし、いつまでも居座れないし……うん、帰ろう。


ココロの中ではしっかりお返事。

だけど言葉が出てこなくって、僕は姫をギュッと抱きしめ「ん」とだけ言ったんだ。

神社から真っすぐ帰れば10分しないで部屋に着く。

とりあえず帰ろう、帰ったら熱めのシャワーを浴びたいな。

それでベッドに寝っ転がって、……じっくりと自分の無力を呪うんだ。


……

…………

………………


アパートに着いて早々シャワーを浴びて、ジャージに着替えてベッドに座る。

お腹が空いてたはずなのに、なぜか今はそれほどでもない。

時間的にはなにかを食べるべきだと思うが、食事の用意がメンドクサくて、僕はまた何にもしないでボーッとしたんだ。


そんな僕を心配したのか、


『う、うなぁ』


と短くお姫は鳴いて、ピョンッとジャンプで僕の隣に来たんだよ。

ゴツンゴツンと頭突きを2回、うるんだおめめで視上げてる。


「…………ひーめ、ありがと……僕は大丈夫だよ、心配かけてごめんね。少し疲れたんだ。ちょっとだけこうして、ゴハンは後で……ん、やっぱりいいや。明日の朝に食べるよ。ちょっと今は……なにもしたくないの、」


なんとか言葉を絞り出し、どうにか笑って可愛い頭を撫で撫でしてさ、そのままゴロンと身体を丸めて目を閉じた。


暗転した瞼の裏側、…………僕は小さくため息をついた。

閉じた視界は真っ暗闇で、そこにはなにも映らない。

僕はさ、少しだけ期待をしたんだ。

もしかしたら、瞼の裏にひみちゃんが現れるかもしれないって。

本物でもそうでなくても、僕とおんなじ顔してさ、子供みたいなワガママ言って困らせに来たら良いのにってね。

でもダメだった。

ひみちゃんはどこにもいない、……そうだ、瞼の裏だけじゃないよ。

”声のヒト” が言ってたじゃないか、”自我を消滅させた” と。

だからもう、二度と会えないんだ。

ひみちゃん……あんなに喜んでいたのに、色々あったけど仲直り出来たのに、これからは一緒にいようと決めたのに、やっと独りじゃなくなったのに……ぜんぶ、僕の無力のせいだ。

目の前にいたのに守れなかったのだから。



閉じた目から涙が流れて耳まで届く。

僕は横になりながら目と耳を指で拭った。

拭っても拭っても後から涙が流れてしまい、もう、拭う事すら面倒になってきて、そのまま放置をしたんだよ。

その時、


ザリ……ザリザリ……


僕の目尻を姫が舐め、代わりに涙を拭ってくれた。


ザリ……ザリザリ……ザーリザーリ……


ありがと……ありがとね、姫は優しいね。

今夜お姫がいなかったらさ、僕はたぶんどうにかなっていたかもしれない。


僕は薄く目を開けて、すぐ傍にいる姫の顎をコチョコチョしたの。

大福は気持ちが良いのか目を細め、喉をゴロゴロ鳴らしてた。

僕らは小さなベッドの上で、向かい合ってゴロンとなって、互いの顔を眺めてたんだ。



どのくらいそうしてただろう。

お姫のおかげで涙は止まり、でも……悲しみと、なんとも言えない苦い思いが胸の中に燻っていた。

大福は、そんな僕をジッと視て、そしてこう言ったんだ。


『うな……うなななな、うななななな……うな』


____霊視して、

____過去を、今日の昼間を、

____あやつからの最後の言葉を聞いてやってほしい、


と。








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