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霊媒師募集  作者: たまこ
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第二十八章 霊媒師 三年後ー3

「あのね、無理に離さなくていいよ。ダイジョウブ、リュックなんか降ろさなくても問題ないし!」

『うなー!』


デレデレしながら言ってみた。

たまにしか会えないし、貴重なモテ期を心ゆくまで味わいたいのもあったしね。


……とココで、弥生さんがニヤリと笑って両手を上げた。

あ、もしかしてその構えは……


「アンタ達、パパと母ちゃんの言うコトが聞けないってか。ほーほー、いいよいいよ。じゃあ、今からママ(・・)を呼んじゃうからな!」


やっぱりだ!

ママ(・・)を呼んじゃう____弥生さんがそう言うと、弥春みはるちゃんも茉春まはるちゃんも顔をパァァと輝かせ、ニコニコソワソワ落ち着かない。

そんな双子を優しい顔で見つめつつ……弥生さんは、かつてあれほど嫌がっていた印をゆっくり結び出した。


「いいかぁ(モタモタモタ)、待ってろよぉ(タドタドタド)、」


途中で1回印を間違え、舌打ちしながら最初からやり直した弥生さん。

2回目はさらにゆっくり慎重に、時間をかけて丁寧に丁寧に……その甲斐あって、おめでとう! 全行程無事クリアー!

あとは言霊、弥生さんは口の中でなにかを呟き、手近な椅子にストンと座ると目を閉じたんだ。



それから数秒。

パチッと目を開け瞬き3回、僕と視線がぶつかった。

途端、嬉しそうにニコーッと笑って両手を振って、そして言ったんだ。


『岡村ぁ! 久しぶりぃ! ウチと会うのは年末以来だよね! 元気だった?』


と。



「わぁ! やっぱりマジョリカさんだぁ、久しぶり! そうそう、最後に会ったのは年末だよね! マジョリカさんこそ元気だった?」


今、僕の目の前には弥生さんが立っている。

特メイ班直伝メイクできゅるんと若くて可愛らしい。

長い髪を高い位置でのお団子ヘア、クリーム色のフワフワニットに黒色のワイドパンツ。

動きやすさを重視しながらシンプルおしゃれにまとめてるんだ。

見た目は間違いなく弥生さんだ。

だけど____


『元気だよー! でも双子のお世話で毎日大変! 大倉と順番こでも目が回りそうだもん! あ、ちょっと待ってね。先にチビ達なんとかしなくちゃ。弥春みはる茉春まはる、ママんとこおいでー』


____声が違う。


いつものハスキーボイスじゃない。

透き通る湖を思わせる声だ。

澄みきって穢れのない、どんなに荒んだ心でさえも一瞬で癒してしまう……美しいピアノのハイキーボイス。

これはマジョリカさんの声だ。

そして瞳の色も違う。

マジョリカさんは左が金で右が青のヘテロクロミア。

今、弥生さんの猫の仔みたいな大きな瞳は黒じゃない、二色のそれになっている(そう視えるのは霊力ちからがある人だけみたいだけど)。



「まーま! まーま!」←おめめキラキラ弥春みはるちゃん

「だーっこ! だぁっこ!」←おかおニコニコ茉春まはるちゃん


マジョリカさんが出てきた途端、双子はアッサリ僕から離れ ”ままー!” とヨチヨチ走り出す。

マジョリカママは床に膝つき両手を広げて双子抱っこのスタンバイ。


弥春みはる茉春まはるも早い早い!』


や、遅いです(それが可愛いんだけど)。


ヨチヨチヨチヨチヨチヨチ…………ドン! ドス!


『到着ー! よく頑張ったねぇ! えらい!』


「ミハルがんばたー!」

「マハルはやかたー!」


ぎゅぅぅ!


マジョリカママは両手で双子を抱きしめて、愛おしそうに2人の匂いを嗅いでいた。


ああ……僕も年かな。

抱き合う親子を目の前に、なんだかすごく泣きそうだ。


マジョリカさんには命が無くて幽霊だから、本当なら生者の身体にさわれない。

でも、こうして双子を抱えてさ、2人の頭に鼻をくっつけ匂いを嗅いでる。

夢みたいな話だよ。

これもみんな弥生さんが頑張ったから……なんだよなぁ。


ヒントは社長のソールアーマーだった。

社長の中には(・・・)昔捕らえた悪霊達が閉じ込められてる。

社長自身の身体の中で、悪霊達の魂が自分のモノと混ざらないよう間仕切りを作ってさ、そこに隔離をしてるんだ。

必要な時に必要な分だけ、魂を薄く切って自身にまとい、一時的に霊体との物理干渉を可能にしてる。


弥生さんはこれをヒントにマジョリカさんを自分の中に取り込めないかと言い出したんだ。

言い出した当時、同席していたまわりから……


____印も結べないのに!?


と、総ツッコミが入った。

それは当然だ。

取り込む術は難易度高で、社内規則でも ”霊媒師歴5年以上のキャリアが必要” とまでされている。

弥生さんは霊力ちからはあるけど細かい作業に向かない性格。

印がとにかく大嫌いで、覚える気も使う気もサラサラなかったのだ。

もしこの術を本気で使うと言うのなら、長くて複雑な印を覚えなくてはならない。

僕も含め満場一致で ”それは無理では……” な空気に包まれた、が。

そこに救世主が現れた。



____大倉さんが本気で印を覚えたいなら私が指導しますけど、



そう、講師を買って出てくれたのは水渦みうずさん。

おくりびイチのガチ名手で、彼女に結べない印など存在しない。

水渦みうずさんの指導なら鬼に金棒なんだけど……なんせ昔、コレが原因で仲たがいをしてるから、いくら今は仲直りをしたと言ってもコレはコレで危険では……と思ったのだが、



____マジか! 頼むわ! 今度こそ不貞腐れないで頑張るから!



と、弥生さんが水渦みうずさんに頭を下げたのだ!


そこから地獄の特訓が始まり……弥生さんは宣言通り、なにを言われても不貞腐れる事なく全工程を覚えきり、マジョリカさんを自分の中に取り込む術を成功させたんだよね。


いやぁ、ほんとに頑張ったよ。

それと、弥生さんはこの術とは相性が良いのかもしれない。

元々、弥生さんの中にはヤヨちゃんがいるからさ。

万が一に弥生さんがしくじっても、中にいるヤヨちゃんがなんとかしてくれるもんね。


マジョリカさんに内緒で頑張った取り込みの術。

社長と違って、取り込んだ魂を薄切りにする必要はない。

あとは、生身の身体をどちらが主体で動かすのか、その切り替えさえ出来れば良い。

弥生さんは練習を何度も何度も積み重ね(練習台は先代)、これなら完璧! となった時にマジョリカさんにすべてを話し、


____取り込みなんて怖いかもしれないけど、アタシを信じてくれ!


そう言って、自分の中に取り込んだんだ。


マジョリカさんは泣いてしまったそうだ。

数十年振りの生身の身体、現世の物に難なく干渉が出来、そして、数年振りにジャッキーさんに触れる事が出来た。

それ以来、なにをするにも家族は一緒。

おめでたが分かった時は、マジョリカさんもしばらく仕事を休む事を決めた。

弥生さんと交代で家事も育児も共に頑張り続けてるんだ。


……

…………


「まま! とまとたべたい!」←弥春みはるちゃんはトマト好き

「まま! たまごやきたべる!」←茉春まはるちゃんは卵好き


い、いきなりだな!

双子は小腹が減ったのか、健康的なオヤツをご所望。


マジョリカママは ”はいはい” とニコニコしながらジャッキーパパに振り向いた。


『ジャッキ、カバンの中からタッパを出してくれる?』


ジャッキーパパは秒の速さでタッパとお手拭き、ちっさなフォークも取り出した。

さすがはレベル99だ。

言われなくてもイチ(・・)を頼まれサン(・・)を出したよ。



『じゃあ、最初におててを拭こうかぁ』


ササッ!


マジョリカさんの優しい声に双子は競って手を出した。

あ、あれ?

やけに素直だな、”イヤイヤ期” じゃなかったの?

首を傾げてハテナマークをバンバン飛ばす、そんな僕にジャッキーさんが笑いながら言ったんだ。


弥春みはる茉春まはるも、自分と弥生には ”イヤ!” って言うのに……ははは、マジョにはぜんぜん言わないの。なんでだろうねぇ? それにね、弥生とマジョの見分けも完璧なんだ。見た目は一緒なのに、中身が変わるとすぐに分かるんだから大したもんだよ」


「もしかして、母ちゃんとママも双子だと思ってたりして」


「え! そうなのかな? その発想はなかったよ。ああ、でもそうか。だから分かるのかもしれないねぇ」


ジャッキーさんは、これ以上ないってくらいに幸せそうに目を細め、妻と子供を眺めてる。

ああ……いいなぁ……なんだか僕まで幸せだ。







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