ピュアヒューリーズ21
「……ということがありまして」
「ふーん。そっか……。ヒロさんの気持ちは何となく察してはいたよ」
京極さんはあまり驚かなかった。
まるで天気予報で雨が降ると言われて雨が本当に降ったときのような感想だ。
察していた? 知っていたとということなのだろうか?
「関係者しか知らないけど、『アフロディーテ』の内部では割と有名な話なんだよ。ほら、ヒロさんって亨一さんの元カノじゃん? で、亨一さんもヒロさんも独身だからさ。月子さんがよく亨一さんを冷やかしてたんだー」
「そうだったんですね……。それで佐藤さんは何て?」
「うーん……。亨一さんはいつも笑って誤魔化してたかな? たまにヒロさんとばったり会うと話してはいたけど……。私から見てお互いに気まずそうに見えたよ。ま、当然てば当然だけどさ」
京極さんはため息を吐いた。
酸素が薄そうなため息。ニコチンは多めだろうけれど。
「そうですか……。僕としては2人のことに口だしするつもりはないんですが、舞洲さんにはすっきりしてもらいたいんですよね……」
「のんちゃん的にはどんなのが理想?」
理想……。それを口にするのは簡単だった。結論ははっきりしている。
「僕としての理想は『レイズ』に佐藤さんが加入するのが理想だと思います。それ以上もそれ以下もないですね……。ただ……」
「ただ……。そうね……」
京極さんは復唱したあと、僕の言いたいことを理解したようだ。
「『レイズ』的にはどうなんだろうね? 私が見た感じ、逢子さんも羽島さんも今のままが良いんだと思うけど。のんちゃんの言う理想ってあくまでヒロさんの理想じゃん? それはおそらく『レイズ』の理想ではないと思うよ。私の意見としてはね」
そうなのだ。これはあくまで舞洲ヒロの理想であって、『レイズ』の理想ではない。
逆に『レイズ』としては佐藤亨一を受け入れる理由なんて何ひとつないだろう。
下手したら塩を撒かれてしまうかもしれない。
「ですよね……。それは分かってはいるんですけどね。すいません、余計な話しました」
「んーん。いいよ。ま、確かに亨一さん今はフリーランスだし余裕はあるだろうねー。月子さん居なくなってやることが半分以下だろうしさ……。ひさしぶりに亨一さんに連絡してみようかなー。いい加減ほとぼりも冷めたしね」
京極さんは懐かしそうな声で笑った。
彼女としても佐藤亨一には会いたいらしい……。
僕が旧『アフロディーテ』のメンバーと会ったのはそれから数日後のことだ。




