ヘカテーラバーズ5
4月下旬。私はヘカテーさんと会った。場所は彼女の家の近所のタリーズコーヒー。
ヘカテーさんは私を気遣って、禁煙席で待っていてくれた。
どうやら舞洲さんの恋は進展したようだ。ヘカテーさんはそう話してくれた。
「ほんっとにのんちゃんの行動力には感服するよ」
「ほんとに! 私もあの人にあっちこっち連れて行かれたけど、まさか本当にこんなことになるなんて思ってなかったです!」
今回、希望はかなり走り回ったと思う。私の知る限り、佐藤さん、鴨川さん、川村さん、三坂さんには掛け合っていた。(鴨川さんだけは門前払いだったけど)
「そうえいば、月子さん……。とこも行ったんだったね」
「ええ、会えませんでしたけどね。でも、代わりに川村さんに会えたから良かったです」
「川村さん? ああ、あの作家先生ね。たしか月子さんの同級生だったね」
どうやらヘカテーさんも川村さんのことは知っているようだ。
それにしても希望は本当にお節介だと思う。まさか、今回もこんな形で他人を仲裁するとは思ってもみなかった。ある意味、尊敬にあたいする。
「そうなんですよ。何か縁って不思議ですね。川村さんも三坂さんとは知り合いだったみたいだし」
「本当にね。ま、月子さんと逢子さんは犬猿の仲だってのは業界でも有名な話なんだけどね。昔、『ニンヒア』のオーディションであの2人めっちゃ揉めたらしいし……。とりあえずはこれで一件落着じゃないかな?」
雨降って地固まる。というやつだろう。ずいぶんと長いこと降っていた雨のようだけれど。
「純愛ですね……。あーあ、私もそろそろそんな恋したいです」
「ハハハ、あいちゃんはずっと前から純愛モードじゃんよ。で? どうする? プロポーズ大作戦やっちゃう?」
プロポーズ大作戦……。なんとなく昭和な響きがする。
「そう……。ですね」
「そうだよ! 善は急げ! 大丈夫だって! のんちゃんぜってーにあいちゃん以外好きじゃないから。まぁ……。あの子奥手だから、自主的にプロポーズなんてするわけないけどね」
それから私たちはプロポーズ大作戦作戦会議をした。会議と言ってもやることは単純だ。いかに希望からプロポーズの言葉を引き出すか。だけ。
「……じゃあさ。いっそのことあいちゃんから『プロポーズして』って言ってみたら? 案外すんなりOKかもよ? ほら、のんちゃんって押されると弱いからさ」
「それは……。そうですけど。それってプロポーズの意味あるんですかね?」
「あるって! だって嫌なら断りゃいいだけだしさ」
恥ずかしい話だけど、私は恋愛経験がまったくなかった。肉体関係はもちろん、手を繋いだ相手だって希望以外誰もいない。
「そんなもんなんですか?」
「そうだよ! ほら! 私ってメンヘラクソビッチじゃん? だから恋愛に関してだけ言えばあいちゃんよりずっとずぅーと先輩なんだよ。その私が言うんだから間違いないよ」
自虐的。でも悪い気はしない。ヘカテーさんなりに私を励ましてくれているのだろう。
「わかりました……。じゃあ一つだけお願いしてもいいですか?」
こうして私のプロポーズ大作戦は始まった。果たして本当に上手くいくのだろうか?




