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ヘカターラバーズ3

「私の独断と偏見でプラン考えるよ」

 ヘカテーさんは得意げに言うとニッと笑った。

「なんか面白そうですね」

「でしょー! 今ちょうどのんちゃん別件で忙しそうだからちょうど良いじゃん? 今のうちにプロポーズ大作戦練っちゃおう!」

 スパイにでもなったようだ。ヘカテーさんはわくわくしている。私もだけれど。

「そういえばのんちゃん……。『レイズ』の舞洲さんのことで忙しそうです」

「そう! あの子ニヒルっぽいけど、実はお節介なんだよね」

「そうそう! めっちゃ世話焼きなんですよ。本人は面倒くさいって言ってるけどアレは嘘です。まったく……。人のことほっておけないんだから……」

 希望は昔からそういうところがあった。本人は覚えていないだろうけれど、私も何回かそれで救われた。

「ねー。ま……。実際、彼のそういうとこに私も救われてたりすんだけどね……。大志のことだって、仕事のことだってさ。ほんと。後輩だけど頭下がる」

「ハハハ、あんまり褒めない方がいいですよ? あれでなかなか褒められると図に乗るタイプですから」

 今頃、希望はくしゃみしているかもしれない。それくらい私たちは彼の噂話をした。陰口ではないと思う。どちらかと言うと陽口。

 ヘカテーさんと話していると希望の気持ちも分かる気がした。本当に不思議な人だ。情熱的で冷静で……。我が強くて優しい。そんな感じ。

「……。ヒロさんもねー。ずっと1人の男に恋い焦がれてたんだから尊敬しちゃうよ。まぁ確かに……。亨一さんならアリかもしんないけどさ」

「すごいですよね! 私もそんな純愛憧れますー。ヘカテーさんの言うとおりのんちゃんと上手くいったらきっと幸せなんだろうなー」

 私は自然と本音をこぼしてしまった。横を見るとヘカテーさんはニヤけている。

「いやいや。『うまくいったら』じゃなくて『うまくいくようにする』んだよ。たぶん2人はタイミングとチャンスがなかなかないだけだと思うよ? すっげーお似合いだしさ」

「そう言っていただけると嬉しいですけど……。でもどうしたらいいんですかね?」

「そうね……。てかあいちゃんはどんなシチュエーションがいいの? ベタベタならホテルの高層階でディナーしてるときとかだけど。ま、これはほんとベタだよね」

 私はホテルの高層階にいる私たちを想像した。希望はスーツ。私はちょっとだけフォーマルなパーティドレス。……。いやこれじゃない感がすごい。

「ホテルのディナーとかはないですね」

「だよね」

「あの参考までにヘカテーさんは?」

「へ? 私?」

 ヘカテーさんは意表を突かれたのか口ごもる。

「そうだね……。私もホテルのディナーとかはないかな。……うん。私なら2人にとって一番思い出の場所でしてほしいかな。私だったらライブハウスとか練習スタジオが良いと思う」

 ヘカテーさんらしい。本当に彼女らしい回答だと思う。

「なんか……。いいですね。私もそんな感じかなー。もしのんちゃんにプロポーズしてもらうなら……」

 そこまで話して私は自分の中に答えがあることに気が付いた。本当は最初から決まっていたのだ。私と彼にとって特別な場所がどこであるか。

 西口公園の噴水を眺めながら私は8年前のことを思い出した。

 希望と話したあの日のことを。

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