1話
ライブ会場であるビーサアリーナにて、とあるアイドルフェスが行われていた。大規模なアイドルフェスであり、会場は多くの人でにぎわっている。人気アイドルはもちろん、フレッシュな新人アイドルなど幅広いアイドルが出演するこのフェスに、とある絶賛駆け出しアイドルが出演者として控え室にいた。
「よーし、みんな。準備はできたか?」
広くも狭くもない控え室に四人。キラキラとしていて、それぞれの個性あふれる衣装に身を包む。さらに髪型もセットして百点満点の状態である。
現に今日は記念すべきデビュー曲「Like×Love」をファンの前で披露する。いわゆる初ステージだ。彼らが所属している芸能プロダムション「Star's Light」、通称スタラプロ。数々のアイドルが集結するアイドルフェスにてお披露目だ。このアイドルフェスは初ステージは豪華すぎるのではないかと疑問を四人は抱いていたが、出番を目前とした今はやりきるしかない。
「完璧に決まってんだろ、リーダー。」
リーダーである明来 直真の問いかけに真っ先に反応したのは楠木 輝だ。他の二名、来辺 奏楽は古賀 るくの衣装である胸元のリボンの微調整をしている。
「これで大丈夫です。」
「ありがとう、奏楽くん。」
「……よし、これでバッチリだな。」
直真はリーダーらしくメンバーを見渡した。
準備を完璧に整え、後は本番を待つのみ。長いようで短い時間。控え室は静かな空間に包まれて、時計のチクタクという音のみ聞こえる。
ふとした瞬間、コンコンと控え室のドアがノックされる。
「Crossさん、スタンバイお願いします。」
はい、と全員が返事をして控え室を後にする。一歩を踏み出してステージに近づくのと比例するように、Crossの出番も近づいてくる。
ステージの袖に移動して待機していると、観客の様子が目に入った。
「思ったより観客の方……多いですね。」
「だな。」
「でも楽しむ、だろ?」
「うんうん、思いっきりね。笑顔笑顔っ!」
ステージの袖から観客席を見つめながら奏楽と輝は呟いた。リハーサルなど本番以外でもステージに立ったが、その時と比べ物にならないくらい会場が大きくて広く感じる。しかし、彼らは本番を迎える前に約束したことがある。それは「ステージを楽しむ」と決めたことだ。直真が奏楽、るくが輝に向かってポンッと背中を押す。
「ですね。」
「俺らが楽しまないと、ファンのみんなも楽しめないもんな。」
前のグループのステージが終わり、ついに彼らの出番だ。もうここまできたらやることはただ一つ。顔を合わせて合図を送り、一斉に前だけを向いてステージまで一直線に走り出す。キラキラと揺れながら光るペンライとに目を奪われながら、ステージに立った。
ステージの上に立つと会場に圧巻された。リハーサルの時と全然違う。観客に人が入ることで、会場がキラキラとして広くて大きいと感じる。
「俺たち、Crossです!」
その中、メンバーを代表してグループ名を声に出したのはリーダーの直真だ。観客の人々は声を上げて盛り上がってくれる。デビューしたばかりの彼らにとって、このアイドルフェスに出演することはビックチャンスだ。なぜなら、自分たちを知ってもらう絶好の機会だからだ。
「実は、僕たちCDデビューをさせて頂いたんです。」
「それで、今日はそのデビュー曲をここでやらせてもらおうかなって。」
直真に続いてトークを始めたのは奏楽、さらにそれに続いてるくも話し出す。
「みんな、聴いてくれるかな?」
輝が観客に向けて問いかけをする。すると、観客の人々は大きな歓声とともに「聴きたい」と言ってくれた。輝の問いかけに会場の盛り上がり度合は上昇している。
「よし、じゃあ歌っちゃいますか。」
リーダーの声が合図となり、デビュー曲のイントロが流れる。
アップテンポでギターの心地よいサウンドが印象的なイントロ。踊るたびに衣装の裾がリズムに合わせてひらひらにと揺れている。それに合わせて観客の人もペンライトを振ってくれる。
曲の歌いだしは直真&奏楽の年上組。そのあと二人のソロが入り、るく&輝の年下組のパートだ。四人の歌声が重なるのはサビ前が一番最初。サビ前からサビが終わるまでのパートは四人が一番練習したパートといっても過言ではない。四人だけが奏でられるハーモニーは一人一人の歌声がしっかりしてないと成り立たないからだ。
彼らの歌、ダンスを含めたパフォーマンスが全て終わった後、観客から大きな拍手と歓声に包まれた。達成感と喜びと……たくさんの感情が溢れ出してきた。「ありがとうございます」と感謝の言葉を精一杯伝えた。
出番を終えてステージ袖に移動しても全員の心臓の鼓動は早くなったままだ。
汗を流して、一生懸命練習をして本番を迎える。こんなにも輝かしいものだとは思わなかった。想像してたよりももっと輝いていた。
「もっとしたいな、ライブ。」
「またライブやりたいです。」
「また四人でできたらいいな。」
「次のライブ、決まらないかな。」
四人はそれぞれ独り言のように一人で呟いたつもりだった。しかし、その言葉は一語一句同じではないけれど、意味はぴったりと一致して重なった。四人はお互いに顔を見合って笑い合っている。




