011 有りませんでした。
色々な状況やその対処をどうするか考えている間に、ニッキーが勢いよく扉を押し開け2人で入る。
「お、ちょうど空いてるね、よかったよかった」
「空いていない事もあるんですか?」
「あるよ〜 朝と夕方は特にいっぱいだね〜」
そう言いながら正面に見えるカウンターの1つに駆け寄るニッキー。
それを見てカウンターの向こうに居る女性が声をかけてくる。
「ニッキーさん。 おかえりなさい」
「ただいま、ディアナ。 報告とこの人の登録に来たよ」
挨拶を交わしたニッキーは体をずらして紹介してくれた。
「この人は依頼の途中でデイビットさんが拾った旅人? のイサムさん。 で、こっちはギルド職員のディアナだよ」
「拾ったって・・・ その通りなんだけどさ。 あ、イサムです、よろしくお願いします」
「ディアナです、よろしくお願いしますね」
ディアナはニッキーの対応に慣れているのか、苦笑いしながらも普通に挨拶をしてくれた。
「それでは先にニッキーの報告から確認しますね。 ニッキーさんカードを提出して下さい」
「ん? はーい」
そう言ってカードを受け取ったディアナは門の所で見た確認板の様な物にカードをセットした。 すると板から出た靄、恐らく魔力がカードを覆いまた板に戻った。
「はい、サインの確認と依頼料の入金が完了しました」
そう言ってカードを返してくるディアナにニッキーは。
「ねえ、ディアナ。 なんでそんな真面目な職員みたいな話し方してるの?」
と、言っている。 雰囲気から察するに、いつもはもっとフランクなのだろう。
「私はいつも真面目です! そ、それではイサム様、登録をしますのでこちらに手を当ててください」
そう言ってディアナがカウンターに置いたのは門の詰め所で衛兵が使っていた物とそっくりだったが、鑑定してみて違いに気づいた。
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名称:確認板
機能:簡易鑑定
強化:所属ギルド
詳細:魔力を流す事で対象の情報を取得、表示する。
動力に魔倉石を用いる事で
魔力を扱えない者でも使用出来る。
鑑定内容を限定する事で必要事項の鑑定が強化されている。
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なるほど、さっきはわからなかったけどこうして部分的に強化して、必要な情報を見られる様にしてたんだな。
「はい、分かりました」
そうして手形に手を合わせて乗せると靄が出て吸い込まれる。
表示された内容は
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名前:イサム
年齢:33
職業:−−
性別:男
所属ギルド:−−
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となった。
まあ、俺の【情報操作】ならなんとか出来そうな気もするけどとりあえずいいかな。
「はい、ありがとうございました。 ギルドへの登録が初めての様ですので、登録料は3000Gになります。 よろしいですか?」
「大丈夫です。 そうだ、門の所でこの仮入門証が使えるって聞いたんですが・・・」
「はい、内容を更新する事で正規のギルドカードとなります、また仮入門証発行時の保証金を返金または登録料から引くことができますどうなさいますか?」
「じゃあ、引いて下さい」
「それでは手続きを致しますので仮入門証と、登録料が変わりまして2000G、お願いします」
トレイの上にカードと1000G銅貨を2枚乗せる。
「お預かりします、少々お待ち下さい」
と、ディアナがトレイを持って奥に行くと横に居たニッキーが笑いを堪えていた。
「ニッキーさん? どうかしたんですか?」
「だってディアナが、フフッ、頑張ってるんだもん、あんな丁寧なの見たことないよ、絶対無理してる。 イサムさんもいいよ敬語にしなくて、無理してるでしょ? 普通でいいよ?」
「あー、助かる、あまり得意じゃないんだ」
「うん、時々ぎこちなかったもんね、フフッ」
「なんだ、バレてたのか」
話してるうちにディアナが戻って来た。
「お待たせ致しました。 こちらがイサム様のギルドカードとなります。 紛失されますと再発行には金貨が必要ですのでご注意下さい」
「き、金貨?!」
金貨って確か100000Gだったよな? 仮入門証の保証金は銀貨だから1000G、なんでこんなに高くなるんだ?
「はい、これにはカードを拾得した方への報奨金も含まれております。 ダンジョンや森などで亡くなられた方のカードを回収していただくと支払われます」
「盗賊などに奪われた場合はどうなりますか?」
「そう仰られた場合は専用の確認板で真偽を確認の上、仮の身分証を発行いたします。 ただし、虚偽の盗難報告や他人にカードを渡し拾得物として持込ませ報奨金を得ようとする行為は、犯罪ですので行わないで下さいね」
「なるほど、じゃあ盗んで報奨金を、なんて事も起こりようが無いんですね」
「そうですね、盗んだ時点で犯罪歴が残りますしカードは本人にしか使えませんのでそこまでする意味が有りませんね」
「確かに、そうですね」
「続いて、ギルドランクについてお話し致します」
「ランクはAからGの7段階となります」
そう言ってディアナは小さな冊子を開いた。
あー、異世界物の謎がひとつ解けた。
なんでランクをアルファベットにしちゃうのかといつも思って読んでたけど、これ翻訳能力のせいだったんだな、見せられてる冊子の文字は明らかにアルファベットじゃないのにそう読めるし。
恐らくこちらの文字の頭から順に当てはめてるんだ、なるほどな〜
素直に日本語に翻訳されて、あ・い・う、なんてランクになってたらちょっと気分も乗らないし、その辺の融通が効いててよかったかな。 Sが使われるのはスペシャルとか特殊とかって意味の言葉が翻訳されてるのかもな。
「Aの上のクラスは無いの?」
「公式には存在しません」
と言うディアナにニッキーが疑問を発した。
「あれ? Xランクは?」
「あれはただの噂。 見たこともないし、そもそもランク毎の対応を習った時に説明されてないんだから、あるわけ無いのよ」
気になったのでニッキーとディアナの会話に割り込む。
「へ~ どんな噂なの?」
「えっと、通常に公表する事が出来ない依頼をさせる為にランクの部分をXで消して区別したランクがある。 って噂」
「それって何かやらかして抹消されただけじゃないの?」
「それはそれで普通に登録内容に載るだけだって」
「なんでニッキーがそんな事までしってるの?」
「ディアナに聞いた」
と言ったのでディアナを見たら、頷かれた。
「そんな事、教えていいの?」
「犯罪者の情報を集めて注意喚起したり、捕縛、討伐の依頼を出すのもギルドの役目ですので」
「なるほどね、でも印がひとつ付いたくらいでそんな噂になるもんなの?」
「んー、その印が付けられた人には犯罪じゃないんだけど別の噂があってね」
そう言ってニッキー教えてくれたのは。
曰く、水害が絶えない街の為、大河の流れを一晩で変えた
曰く、街道が塞がった街の為、山脈を動かして道を通した
曰く、津波が迫り来る街の為、大地を丸ごと空に浮かべた
と言った伝説かおとぎ話の様な内容だった。
「どれも想像するのも大変な話しだね」
「でしょ! だからXランクはあるの!」
「もう、ランクの事もその人の事も全部噂じゃない。 その話はまた今度暇な時にね」
「今はイサムさんの、いえイサム様への説明が先ですから」
「あ〜いいですよ敬語じゃなくて。 その方が聞きやすいし」
「そう言う訳にはいきませんが、ありがとうございます」
「さて、改めましてAからGのランクですが、まずGランク、こちらは見習いですね、初回登録時は基本このランクからスタートとなります」
そう聞いて自分のカードを確認する。
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名前:イサム
年齢:33
職業:冒険者(F)
性別:男
所属ギルド:冒険者ギルド
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「ん? 俺のカードFってなってるよ?」
「イサム様の場合、紹介者がいますので見習い期間は免除で次のFランクからのスタートです」
「なるほどね」
「続いてランクアップの条件ですが、同ランク依頼を一定数完遂する事が条件となります。 内容は魔物の討伐や、品物の納品、依頼者の護衛など様々です」
「基本って事は他にもあるんだ?」
「はい、2ランク毎に職員による面接があります。 また依頼者からの評判も考慮されます」
「評判は分かるけど、面接? 冒険者なのに?」
「面接と言っても試験官によって内容は異なります。 文字通り対面での質疑応答から訓練場での模擬試合、他にも・・・」
ディアナがそう言ってニッキーを見ると
「私の時はフォレストウルフの討伐だったよ」
と言ったので、以前に俺が倒した事を知って驚いていた事を思い出した。
「なんだ、ニッキーもフォレストウルフ倒せるんじゃん」
「私の時は、他の魔物は教官が倒してくれて、相手もはぐれの1匹でいるやつだったからできたの!」
「とまあ、面接の内容は試験官次第です。 以上で終わりになりますが質問はございますか?」
「特に無い、いや、素材買い取りもここでできる?」
「はい、可能です」
「自分のランク以上の物のでも大丈夫?」
「問題有りませんよ」
「じゃあ、お願いします」
と言って出したものの、数が多く品質も高そうなので正確に査定する為、数日欲しいと言われ了承した。
ニッキーと話しこの後2階に有ると言う酒場で飲む事になった、無事に登録も済んだし、デイビットさんのおかげで懐も暖かい、この世界の食事がどんな物か楽しみだな。




