ばーじょんあっぷ?
―――あれから幾日か経過し、俺達がこの都市に来てから、丁度一ヶ月と数日が経った。
俺達は現在、都市の南側の門にいた。そう、俺が約束していた一ヶ月限定の非常勤の教師生活が終わったからだ。
……既に粗方の挨拶は済ませてある。……何だかんだで、こんな俺がいなくなると聞いて泣いてくれたし、どうやらしっかりと教鞭を打てたようで良かったなぁ。
それにゴエモンの親分。いい猫だったなぁ。
というか、元の姿に戻らなかったなぁ。
「ほれ、いつまで感傷に浸っている。行くと決めたのはお前だろうが」
感傷に浸っていたらポンと頭を叩かれた。声にも呆れが混じっている。
「……すまん。……にしても、本当にお前が来るとは思ってもいなかった」
「馬鹿も休み休みにしろ。一度発した言葉を無下に出来るわけが無いだろうが」
「……そうか」
「……それに、聞いたぞ?ライノを頼った挙げ句、面白いことをさせているそうじゃないか」
「……」
「照れるなって!ほ~れほれほれほれ!」
「……ひゃっあ!?………ちょっ、………やめっ…………あぁっ!」
……数分後、何とかエルザに手を引いてもらった。え?何があったって?……大体察してくれ。分かるだろう?
「はぁ、………はぁ、うぅ、お嫁に汚されちゃったよぉ」
「乙女か。何で一々そう、女々しかったりするんだ?本当に男か?お前は」
性別は無いけど、男のつもりです。
「ふぅ、茶番は兎に角として、あっちの準備は出来たようだな」
「……"あれ"で本当にいいのか?どうみても怪しい儀式にしか見えないんだが」
そう言うエルザの視線の先には移動手段となるものを作るための触媒が乃々が頑張って描いたであろう巨大な魔方陣の上に無作為に並んでいた。……どれどれ、鉱石・骨・武具・魔石・綺羅……うん。準備完了してるな。
「いや、何を満足そうにしているんだ!?あの魔方陣の上を言ってみろ!?」
「?……えっと、鉱石・骨・武具・魔石・綺羅、だろ?何かおかしいところでも?」
「あるわ!?なんで、触媒の中に綺羅が入っているんだ!?簀巻きにされた上、猿轡も噛まされてるじゃないか!?見ろ、あの助けを求めている姿を!」
「――――――――――――!!!」
「……いいか、よく聞け。あれは綺羅ではない!綺羅の姿をした触媒だ!」
言い切ってやった。反省も後悔もしてない。今の発言でエルザがドン引きしているし、綺羅と言う名の触媒が絶望した顔に成っているが知ったこっちゃない。
「パパー!準備できたよー!」
「よし!じゃあ、綺羅が逃げる……じゃなくて早い者勝ちって言うし、早速やっちまえー!」
「いや、早い者勝ちってお前「始めるねー!」……確かに早い者勝ちだな」
そして、奥の方で乃々の補助をしていた三人が戻ってきたと同時に儀式は始まった。
乃々が構え、始まる。
「《其の終点へとたどり着いた者達よ・我が声を聞き留めよ》」
魔方陣と触媒が輝きだす。
「《魂と楔は足りうる・我、欲するは器・提供せし楔は"皇帝""正義""力""世界"》」
いつのまにやら四枚のカードが浮かび上がっていた。
「《偉大なる皇帝よりもたらせられし堅牢・正義より掲げ上げられし全てを釣り合わせる秩序・絶対で純粋たる力の権化・全てを包み合わせ完成されたし世界》」
一枚一枚のカードが輝き、動き出していき、四つの円環へと成っていく。
「《今一度宿りて新な形へと成され紡がれよ》」
円環が収束していき、ひとつの形へと成っていく。
「《さぁ誕生してっ!"綺羅Mk.Ⅱ"!》」
詠唱が終わると同時に眩いばかりの光が溢れだした。うわっ、まぶしっ。
『えっ!えっ!ど、どういうことですかぁぁぁぁぁ!!!?』
そこにいたのは堂々たる巨大な白銀の機械仕掛けの竜であった。




