"力"に最も近く遠い存在
あっれぇおかしいなぁ。
第三章が終わらない。(゜ロ゜;)
「さて、では、いきましょうか」
出てきて早々、千草はそう言い放った。
「いやいやいや!千草と戦うなんて聞いてないぞクソ師匠!」
そりゃあそうだろ。今言ったし。
「クレハ。相変わらず言動がおしとやかではありませんね。まあ、良いでしょう。今回は三百年ぶりのご主人様からの命令。期待以上の結果を出すための礎となって下さい」
「え、ちょっと、千草!?一体クレハをどうするの!?」
「安心してくださいご主人様。殺しはしませんから」
「ならいっか」
(((((良いんかい!?)))))
「はいっ!という訳で試合開始五秒前ー!」
クレハがなんか言ってくるが無視してさっさとカウントを始める。……ぶっちゃけそろそろ帰りたいし。
あと、綺羅と白姫と黒姫と俺の本体(抜け殻状態)を置いてきたまんまだし。
「ごー!」
まだなんか言ってきているが無視して数える。
「よーん!」
漸くクレハが観念したのか武器を構えた。
「さーん!」
お互いがお互いを見据える。
「にー!」
辺りに緊迫した空気が流れ始めた。
「いーち!」
そして、緊張が最大限まで引き上げられる。
「開始!」
その瞬間、対峙していた二人が消えた。
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岩下side
―――開始早々にして、二人が消えた。
比喩等ではなく、そのままの意味でだ。
視認することが全く出来ない。
時折、何かを打ち合わせる音が聞こえてくるが、それもほんの一瞬だけだ。
―――次元が圧倒的に違う。
真っ先にそう、感じた。
正直、俺は心のどこかでは調子に乗っていたのかもしれない。
「……俺もまだまだなんだな」
気が付くとそう、呟いていた。
「そうだねぇ。それに人生は思ったよりも長いんだし頑張れば追い付くんじゃ無いか?ま、今回は只端にあの二人が強すぎたってだけだけどな」
「そうか。……って、なんでお前がここにいるんだよ稲葉!」
いつの間にやら肩に稲葉の姿をした人形が乗っていた。
「いつの間にって思ったでしょ?そして―――俺の事が怖くでもなったか?」
体に電撃が走った様な気がした。
「沈黙は肯定と受け取っておくよ。と言っても岩下を責めるわけじゃないし、寧ろそれが正しい反応なんだけどね」
そう言って肩の上でカラカラと笑っていた。
「……なぁ、どうしたら強くなれるんだ」
「んー?強くなるかぁ。そうだなぁ。自分の好きなように生きれば良いんじゃないかな」
「自分の好きなように生きる?」
「そうそう。そもそも、俺自身、そこまで強さを追い求めていないし、気が付いたら強くなっていたそれだけだよ。ま、要するに自分が満足すりゃあそれで良いってこと」
なるほど。俺はその言葉に納得すると、同時に今までそんな事で悩んでいた自分が馬鹿らしくなってきた。
「ははっ。そうだ。お前はそんな奴だったな稲葉。そうだった。お前に相談した俺が馬鹿だったわ」
「そりゃあ残念だ」
稲葉は、ただ軽くそう言った。
そうだ。こいつは元の世界の時もこうだった。
やりたい事には全力を注いで、やりたくない事には利益が無い限り、一切興味を示さない。そんな奴だった。
そしてこいつは"力"に最も近く遠い存在なんだろう。
「お、そろそろ終わるぞ」
一頻り物思いに更けているとそう、稲葉から声を掛けられた。
二人が戦っている所を見ると、先程までの張り詰めていた空気が霧散し、そこには佇んでいる千草さんと倒れ付しているクレハさんがいた。
「勝者!千草!」
稲葉の声が響き渡った。




