感覚を共有するって結構キツイ
「あー、うん。クレハ、お前の気持ちはよーく分かった。あのときは俺が悪かった。だからさ…………お願いです!解放して下さい!このちびっこイナバくんでも、一応、感覚は残っているから!お願いします!」
俺がちびっこイナバくんで登場してから今、この状態に至るまで、俺は本来の様子をすっぽかしてクレハに謝っていた。……簀巻きにされた上に逆さまに吊るされて。
それにクラスメイトの視線も痛い。
はぁ、やっぱちびっこイナバくん(道具名:憑依操作型魔導人形)で来るんじゃなかった。
あ、そだ。いっそのこと、これを爆発して逃げれば良いんじゃね。……けど、これを創るのに結構掛かったしなぁ。
「何を現実逃避しているんですかクソ師匠。取り敢えず本体の場所をさっさと吐いてください。あと、わざわざ此処にその道具を使ってまで来た理由も」
「え、なに、俺の本体の場所を聞いてどうすんの!?しかも普通、聞くなら前者と後者の台詞を入れ換えるべきじゃないかな!?ま、今の所、手元に丁度、綺羅と千草がいるからクレハに捕まる様な事は絶対に無いけどね……って、目が!目が回るから回さないで!普通に辛いから!」
いや、本当にマジで辛いから。
全ての感覚を共有できる性でただでさえ頭に血が上っている状態から回すのは止めて!
……本体の方は大丈夫だよな。
「っち。綺羅と千草が手元にいるって事は確かに本体を見つける事はかなり高難易度だな。あと、綺羅と千草が手元にいるということは他の皆さんもそこにいるんですか?」
「い、いやーそのね。居ないんだわ手元に。この世界の何処かにあと七人いる筈だけど今現在詳しい位置が分かっているのはよりにもよって乃々の奴だけだし」
てへっ ☆⌒(*^∇゜)v
がしっ Σ(゜Д゜)
「ぎゃあああぁぁぁ!!!」
え?何が起こったかって?そんなもん!前の地の文読んで察しろぉおおお!
▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽
「ふうっ。しかしよりにもよってあの乃々しか居場所が分かっていないとは。……これだからクソ師匠は」
「ね、ねぇねぇ稲葉。その、生きてる?」
「そうだなぁ。生きてると思うけど、なんだろうか。脳をミキサーでかき混ぜられた後に水に溶かされた様な気分だわ……」
鈴町が恐る恐ると言った感じに俺に話しかけて来たのでありのままの気分を説明してやった。
「う、うん。何て言うか凄かったんだね。自業自得だとは思うけど」
「……ぐはっ」
痛い。痛いよぉそのド正論が心をばっさばっさと容赦なく切り刻んでいくよぉ。
予想以上に心にダメージを受けた俺がしくしくと泣いていると、またクレハが近づいてきた。
「え、何ですかクレハ。もう俺の心のライフは0なんだけど」
「いや。真面目な話でクソ師匠は結局何の用で此処に来たんだ?」
用?……あー、あー、あー、あった、あった。そういやそのためにこれを使ってまで此処に来たんだった。
「いや、そのね。ある意味ではクレハにしか頼めない用なんだけど、用事って言うよりも依頼だね」
「依頼ですか?」
「そうそう。その道理。依頼料は言い値で良いから―――「受けます」―――内容まだ言って無いよ?」
「そりゃあクソ師匠からの依頼はあれですけど。依頼料が言い値と言われたら。クソ師匠の力を知っている殆どの人だったら即効で受けますよ。あ、勿論前払いでお願いします」
そう、軽々しくクレハは言うもののその目は、マジだった。……あれは狩る者の目だ。
「だ、だけど流石にやばすぎる物は止めてよ。下手しないでも世界滅ぼすから」
「流石にそこまで物騒な物は要求しませんよ。第一、まともに扱えないと思いますし」
「そりゃあ良かった。でどっちの話からする?依頼か報酬」
「では依頼から」
ま、そりゃあそうだね。まだ内容を話してもないし。
「ん。で、依頼なんだけど、俺の作品の中でも特に良いものに刻印される一枚の花弁が刻印された小太刀をもし見つけたら、手段を問わずに回収してくれないかな?あ、見つからなくても良いから」
「はぁ。何故そんなものがこの世に出回っているかは知りませんがわかりました。その依頼を受けましょう」
よしっ。これで"無銘の小太刀"ないしは俺の"家族"の捜索が楽になった。
まあ、もう全員が小太刀から解放されているかも知れないけど。
「で、報酬はどうするの?武器?防具?それとも魔道具?」
「報酬はですね―――」
すると、クレハは周りの皆には聞こえ無いように耳元で確かにこう言った。
―――クソ師匠……いえイナバの正体を教えて下さい。




