過去の出来事
……金髪くんを煽ってから早数十分。
俺はまだ、彼を慰めていた。……いや、その、ね?正直こんなんになるとは思わなかったってのが、せめてもの言い訳です。はい。
「なあ、金髪くん。いい加減元の調子を戻したらどうなんだ?えっと、ほら、さっきみたいな話術で此方を翻弄させようとする魔物との戦いにある程度の耐性が出来たと思ってさ、な?」
(((そんな魔物がいて堪るか!!)))
……と、瞬がイシュタルを慰めると、瞬以外の人達の心からのツッコミもとい正論をそれぞれの心に響かせるという混沌が冒険者ギルドを支配していた。―――余談だが、後日からこの冒険者ギルドの冒険者達の結束力が心なしか向上していたそうだ。
「――――なあ、ライノ」
「どうした。イナバ」
「これって俺がいない方が立ち直りが早いのかなって思うんだけど……」
「……奇遇だな。俺もだ。……それにしたってよくお前はイシュタルにいつものノリで煽って精神崩壊させたな」
「いやーぶっちゃけあれだけでこうなるとは予想外だった。……今考えるとお前とかには長い付き合いのお陰で耐性が出来てたんだろうなぁ」
俺は、遠い目でライノに呟いた。
そうだよ。ライノとかには昔、何回も煽っていたら初めの内は結構良い反応をしていたんだけど回を重ねて行くと、徐々に過剰な反応をしなくなってきたんだよなぁ。
ふと、隣に居るライノを横目で見てみると俺と同じような遠い目で虚空を見つめていた。……うん、わかるよその気持ち。
昔は色々とあった。
糞みたいな出来事が七割九分九里、楽しい出来事が二割…………そして、たった一回だけ起こったとても悲しい出来事が一里あった。
……あれ?心なしか糞みたいな出来事ぐらいしか思い浮かばない。酒に酔ったライノをあいつの嫁さんと橋から川に突き落として衛兵に怒られたり、仲間の竜人族が竜化した時に『鱗を剥がして、も元に戻って回復させたら竜の鱗だけでなくあらゆる竜の素材が手に入るんじゃね?』と酒の席で思いついてなぜかノリノリだった竜人とかと一緒に検証して、素材を採った後に元に戻ったそいつを見て皆共通のトラウマになった出来事しか思い浮かばない。
「……あれは、グロかったなぁ」
「……何を考えていたんだお前は」
「いや、竜素材無限増殖計画の末路が惨すぎたことを思い出していてな。いやーあれは惨すぎたしグロすぎた」
「……あれ以来、竜人族の中では、竜化してから戻る際には回復薬をぶっかけるか回復魔法を掛けるって決まりが出来たらしいぞ」
「……いやな事件だったな」
ホント、あの時ばかりは反省したし後悔もした。
「さて、そろそろお邪魔虫は行くとするよ。ライノ。例の依頼はよろしくな」
そう宣言し、俺は立ち上がる。
「わかってる。……次ほいつ会える」
「そうだなぁ。多分そう遠くない内に会えると思うよ。綺羅、千草、白姫、黒姫、出発だー……じゃあなライノ。またな」
「そっちこそ、またな」
そうしていよいよ俺は動き出したのだった。
ついでに言えば、竜の鱗は人間でいう皮膚です。……これで言いたい事はわかりましたよね?




