俺の器は特別製
……いつまでたっても話が進まない様な気がしてきた。
そろそろ本格的に話を進めて行こう。うん。
ふむ、と俺は思案する。
目の前にいる金髪くんはどうやら獣人の姿の俺を見て、気付いていないと言うことなのだろう。……なるほど。
「…………………だったら少しだけからかってやろうかな♪」
一つの結論が導き出されると共に口角が三日月の様につり上がっていた。
「……イシュタルの野郎終わったな」
その姿を見たライノの顔も俺がにやけると同時にひきつっていた。
まあ、安心しろライノ。死ぬ様な事はないと思うから………精神はともかく。
さあぁ~って始まりだ!
…………………
……………
………
「で、イナバ様は何処に居るのですか。そこの獣人。と、いうよりこの剣を持ってきた貴方は何者なんだ」
やはり、この金髪くんは目の前にいる獣人が俺だとは気付いていない様だ。……そこまで似ていないかなぁ。
けど、こいつ以外の冒険者の奴等はどうやら俺に気づいている様だしなぁ。
それにぶっちゃけ、人間の俺に黒い狐耳と尻尾がくっついただけで、髭とかといった獣人の細かい特徴はない筈なんだが。んー……………ま、いっか。
いつまでもぼーっとしている訳にもいけないので、さっさとからかう事に俺は転ずる事にする。
「あー、私の名前はイナb……じゃなくてイナリですイナリ。えーとまぁ、イナバさんの同業者みたいなものです。はい」
「なるほど、そのような者であったか。私の名は、イシュタル。SSランクの冒険者だ。しかし貴方は何処かで会いませんでしたか?何故か貴方とは一度面識が有るような気がするのだが……」
そりゃあ絡んできた貴方をこっちが物理的にねじ伏せましたからね。
しかしそこで真実を言ってもつまらないので取り敢えず軽くジャブを入れてみる。
「いえ、私と君には面識は有りませんよ。それよりもそんな事を覚えていないとは記憶障害かなにかですか?あ!もしかして認知症だったりするんですか?いや~若いのにもう認知症とは、SSランクの癖にとぉ~っても貧相な頭でもしているんですかね?で?で?どうなんですか?」
「っ貴様!なんのつもりだ。貴様は普段、会って早々の人間にこのような事をする不埒者なのか!」
「あ、はいそうですね。けどそれの何がいけないのですか?あ、もしかして図星だったんですか?だからいきなり起こりだすと、いや~君は人としての器がひねくれてますねぇ」
そう言った途端に「お前の人としての器の方がひねくれているだろ」というような目で、金髪以外の皆が俺を睨んでいた。
全く。なに、言っているんだ。俺の人としての器はひねくれてなど断じていない。ちょっと素材が反骨精神で出来ているだけだ。うん。
それはそうとして、金髪くんは何も言わずに顔を真っ赤にしながらプルプル震えていた。よし!一気にスパートをかけてやろう。
「で、結局の所どうなんですか?や・は・り正解だったりするんですかぁ~。ねぇ?ねぇ?どうなんですか?ねーねー教えて~」
「五月蝿い五月蝿い五月蝿い!なんなんだお前は、散々人を馬鹿にしやがって。何が楽しいんだ!」
よし、あと一歩!
「え、そりゃあ退屈しのぎになるからですね。 やはり、暇な時は暇なのでねぇ~。で、君はこんな回答をされたけどどうするの?またわめき散らすの?逃げるの?耳を塞いで目を瞑って自分の中に引きこもるの?どうなの?」
「ぐぅ、そ、それは」
ラストスパ――――ト!
「あ、また図星だったんだぁ~。で、君は一体どんだけ図星だったら気が済むんだろうね。ねぇ?ねぇ?今どんな気持ち?どんな気持ち?私はねー。最っ高に楽しい気持ちなんだなー」
「や、やめろぉぉぉおおおおおお!!!」
ついに金髪くんは耳と目を塞いでしゃがみこんでしまった。俺はその姿の金髪くんの肩に手を置いて最後に一言言ってやる。
「ざまぁ」
……周りの視線がとてつもなく痛かった。ま、反省も後悔もしてないけどね。……あれ?なんでこんな事を始めたんだっけ?




