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#8

ユリシーズがイグを助けてから数か月がたった。そろそろ、秋の気配が漂い始めている。街路樹はまばらに紅葉していた。

あれから、イグはいじめられることがなくなったそうだ。どうやら公爵家の人間と付き合いがあるということが抑止力になっているとのことで、はじめはイグは孤立していたが、元来優しいので周りを助けているうちにまた、友達ができていた。

だた、休みのたびにガードナー公爵家に行っているようだが。


イースディル家では衝撃の発表がなされた。

「ジョージの許嫁が決まった。」

「えっ、許嫁って。」

「ん、許嫁とは、将来結婚する相手の事だよ。ヴェニー」

いや、知っている、知っているが衝撃だっただけだ。

「相手は、ガングラド子爵のイリーナ嬢だ、彼女はガングラド家の長女だな。

今度の休みにうちに招待するから失礼の内容にな。」

「「はい」」

ジョージ兄さんだけ。

「えー、寄りにもよってイリーナかよ」

と言っていたが、その顔は晴れ晴れとしていた。


そして休日、朝にイリーナさんがやってきた。

赤毛、本当に真っ赤な髪、のストレートで目力がすごい。とても気の強そうなお嬢様といった雰囲気を出してた。

「本日はご招待いただいてありがとうございます。よろしくお願いします。」

「ようこそ、こちらこそよろしくお願するよ。ジョージ、イリーナ嬢の話し相手をするんだぞ。」

「わかってるよ。父さん、イリーナこっちが弟のリカードとヴェニーだ。リカードは舞踏会とかで何回かあっているよな。」

「初めまして、ヴェニー・イースディルです。」

「ええ、よろしくね、リカード、ヴェニー」

そういうと、ジョージ兄さんとイリーナさんは僕たちを連れて庭のテラスに連れて行った。

ゆっくりとしながら、いろいろな話をいていた。学校はどうだとか、教会の炊き出しに参加したとか。

イリーナさんは見た目によらず結構フレンドリーに話をしてくれた。僕と話すときは目線を下げてくれたしね。

そんなイリーナさんにジョージ兄さんのどこがいいのか尋ねてみた。

「そうですわね、ジョージさんがいれば私を守ってくれるんじゃないかって思いましたわ。それだけでなく、舞踏会の時小さな子供たちの相手をしていて、子供たちも生き生きしてたのを見て、この人じゃなとってそんな感じですわね。」

いきなり惚気られた。ジョージ兄さんは聞こえないふりをしていたが、顔が真っ赤だった。

「そういえば僕はまだ、舞踏会って出たことがないです。」

「そうですわね、ヴェニーは何歳ですの?」

「6歳です。」

「じゃあ、来年あたり出ることになるかもしれませんわね。舞踏会は、7、8歳から出席するものだから。」

「そうなんですね。ダンスが不安です。」

一応、剣の稽古のない日は、ダンスや礼儀の稽古を受けている。礼儀はいいが、センスを問われるダンスについてはなんとなく苦手意識があった。

「あら、ダンスなら大丈夫ですわよ、みんな最初は不安で仕方ないですもの、私だってそうでしたわ。それに最初のダンスは、年上のお兄様やお姉様が相手をしてくださるので少しくらい失敗してもフォローしてくださるわ。」

そんな話をしていると、リカード兄さんが

「舞踏会面倒くさいな。」

とつぶやいていた。なんでも、舞踏会になるとリカード兄さんの所に同年代の女の子が殺到するんだそうだ。それから逃げ回るのに必死でおいしそうな料理を堪能できたことがないらしい。見た目が良すぎるのも問題なんだな・・・。

「リカードは・・・まぁ、頑張りなさいな。もうちょっと大きくなるともっと大変なことになるとなるでしょうし・・・」

それを聞いてリカード兄さんは大きなため息をついていた。

その後も、舞踏会の話や、家の話をする。

「そういえば、ガングラド子爵様の領地ってどんなとこなんですか?」

ちなみに家は、山の中だ、豊かな土地で麦や果物の栽培がおもだったりする。それなりに風光明媚なのんびりとした雰囲気が漂う土地だ。今は、学校に通っているということで年1回くらいしか帰っていないが、家令のガイルというお爺さんが切り盛りをしている。

「そうね、ガングラド家の領地は海に面した土地よ。領都のガングレイドは貿易とかをしている港街なの。商売が盛んな土地で、ガングラド家も最初はそこで商人をしていたと言われているわ。」

「特産品とかはどんなものがあるんですか。」

「家も海に面した土地というわけで海産物がおもな特産品かしら。あとは、珍しく銃工房があるからそれも特産品の一つかもしれないわね。」

そういうとイリーナさんは、カバンから銃を取り出した。前世で見たことがあるリボルバーの形をしていた。

よほど、銃を見つめてしまっていたんだろう。イリーナさんが銃を使うところを見せてくれるとのことだ。

「ヴェニー、銃は誰でも使えるから危ないのですわ。だから、使うのならもう少し大きくなってからにしないね。」

そういうとイリーナさんはジョージ兄さんにどこか銃で撃ってもいいものを探すように言った。

「こんなもんでいいかな。」

そう言ってジョージ兄さんは厚めの木の板を持ってきて壁に立てかけた。

いやいや、兄さんいくらなんでも銃で撃つのにその木の板は薄すぎませんか。

そんなことを考えているとイリーナさんが銃を構え打った。パンっという乾いた音とともにメキっという音が木の板からした。

そして木の板を見ると穴が開いていた。開いていたがギリギリ貫通した感じで、弾の先が板の向こう側から少し出ているくらいだった。前世でいうところの改造エアガンくらいの威力だろうか。

「まあ、こんな感じで、魔力に関係なく攻撃をすることができるのですわ。威力もそれなりですし、誰でも使えるということで護身用に持っている婦人の方たちが多いみたいですわ。研究者たちはもっと威力が出ないか研究を重ねているそうですけど。」

そういいながらイリーナさんは弾を木の板から取り出しリボルバーにセットし直した。

「その弾、そのまま使えるのですか。」

「そうですわ、銃は魔法の爆発で弾を飛ばしているだけですから、弾はできるだけ回収するんですわ。」

意外と節約家だった。しかし、爆発の魔法で飛ばしているということは・・

「銃って、魔法が使えない人には使えないのですか。

「そんなことありませんわ。銃の中には畜魔石と火の魔石と爆発の魔法陣が組み込まれているので誰でも使えますわ。ただ、小さい子でも使えてしまうから怪我をしないように持たせないようにはしていますけどね。」

魔法陣はなんとなく想像がついたが、魔石とは何ぞや。

「魔石っていうのは魔力を変換するものだよ。そして、畜魔石っていうのは、魔力をためる性質のある石だ、車の動力源とかにも使われている奴だよ。」

ジョージ兄さんが教えてくれた。車の動力源に使用されているらしい。そういえば蓄えた魔力で動いているって言っていたな。

「ちなみに魔方陣もこの銃口の大きさにしないといけないので、それなりの威力しか出ないのですわ。」

そういうとイリーナさんは銃を見せてくれた。前世で見た銃と同じくらいの口径しかない。

「それでも、この大きさであの威力の爆発魔法を放てるんならすごいもんだよね。」

リカード兄さんも銃をのぞき込みながらそんなことを言っていた。

この世界には、火薬がないのかもしれない。そして小さな魔法陣の爆発の威力だけで弾を飛ばしているため、微妙な威力になっているようだ。しかし、自分も火薬の知識何ぞこれっぽっちもないしなぁ。どうするか。ひとまず置いておこう、今すぐにどうこうする問題じゃないし。

その後、銃がどうとかほかの武器がどうとかという話をしていると、イリーナさんの迎えが来た。

「じゃあ、またなイリーナ。その、なんだ、必ず迎えに行くからな。」

ジョージ兄さんが顔を真っ赤にしながらかっこいいことを言っていた。

「ええ、ジョージ待っていますわ。」

イリーナさんは、とてもうれしそうに車に乗っていった。

「ねえ、リカード兄さん、ジョージ兄さんかっこいいね。」

「そうだね、ヴェニー自慢の兄さんだね。」

「そこ、うるさいぞ。」

こそこそとリカード兄さんと話していたら、ジョージ兄さんが怒ったような困ったような表情で叫んできた。

その後の夕食で、来年の春から僕も舞踏会に出るという話をした。そして銃について話すと、父様は意外と銃の容認派だった。

「銃は誰でも使える護身具っていうのがいいね。それにそうそう相手の命を奪わないのもいい。」

どうやら、この世界の銃は単に護身用具としての位置づけでしかないようだ。それも、町の外に持っていくようなものではなく、町の中でとっさに身を守るのに適した取り回しらしい。確かに、木の板に埋まるくらいの威力だったしな。


それから半年ほどて、春を迎え、7歳になった。

ついに舞踏会に出席をすることになる。ちなみにユリシーズも出席するそうだ。最初の舞踏会は王家が主催するものと決まっているらしい。

シルビアは、うらやましそうにしていたが、現在は貴族ではないので出席できないためお留守番だ。

そして、メイドさんたちの着せ替え人形にされて、舞踏会に向かった。やっぱりこういう式典の時は車ではなく、馬車だった。

そして、舞踏会場につき父親と話していると。ユリシーズを見かけたので挨拶に行く。

「公爵閣下、ユリシーズ様ご無沙汰しています。」

「ああ、イースディル伯爵そう畏まるな、息子の友達の父親なのだから。」

公爵閣下は、口ひげを蓄えたナイスミドルという風体で、柔らかな笑顔をこちらに向けていた。

「公爵様、ユリシーズ様こんばんは」

「俺の名前に様はいらない。いつも通り呼べ。」

ユリシーズはいつも通りだが、公爵様がたしなめていた。

「ユリシーズよ、彼らにも立場がある、私的な場ではないのだから無理強いするな。」

「わかりました。」

ユリシーズは納得がいっていないような顔をしていたが、しぶしぶ頷いた。

話をしていると、王様が現れた。

「ベルナルド・イスラ陛下の御成り」

声がかかるとその場にいた全員が跪きいた。ゆっくりと奥から王様と王妃様、王太子様が現れた。

「皆の者、面を上げい。今宵はよくぞ集まってくれた・・・」

王の挨拶も終わり舞踏会が始まった。

まずは、食事と思い会場の端にある立食形式の料理に向かってジョージ兄さんと歩いて行った。ちなみにリカード兄さんはすでに囲まれていた。

会場の端で食事をしていたら。呼ばれた。本日初めて舞踏会に出席した子供たちを集めて王に挨拶に行くそうだ。

全員で王の前に行き跪く。

「うむ、みな面を上げよ。お前たちは本日より貴族として遇される。誇りを持ち己に恥じぬ行動をすることを心掛けよ。」

「「はい」」

みんな緊張しているのだろうこわばった顔で返事をしている。ユリシーズもどこか緊張気味だ。

「では、この舞踏会を楽しめよ」

そいって王様は僕たちの前から離れた。また、貴族たちと歓談をするのだろう。

そして僕たち子供は、少し上のお兄さんやお姉さんに預けられた。

これからダンスをするのだそうだ。練習をしていたが緊張するなぁ、と考えていると声をかけられた。

「あら、あなたが私の相手なのね。よろしくね。」

「はい、よろしくお願いします。」

なるべき緊張してない風を装って返事をする。

ちらりとユリシーズを見るとあちらは、平然とした表情で相手の手を取っていた。

その後ダンスを踊る。途中つまずいたところもあったが、お姉さんさんがきちんとフォローをしてくた。

その後も、何回かダンスをし、シルビアも来れればよかったのにと思っていた。

リカード兄さん?さすがに剣の稽古で体力づくりしているだけあってずっと踊りっぱなしだったよ。料理食べれたのかな。

その後、帰宅すると僕とジョージ兄さんは早々に眠りについた。リカード兄さんは夜食をとってから寝るとのことだった。今回もうまく逃げれなかったようだ。これでお気に入りの女の子でも決まればいいのだろうけど、リカード兄さんは全員に優しくしているため、女の子が寄ってくるのだ。特にお気に入りの子がいるというわけではないらしい。

そうして、初めての舞踏会の夜が終わった。

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