#7
次の日から剣の稽古にシルビアが加わった。まだ、走るだけしかしていないが。それでも楽しそうに走っていた。昨日、剣を持たせてもらったのが相当うれしかったのだろう。こちらをちらちら見ていることから、また剣を持ってみたいのかもしれない。
それはともかく、昨日、ミルトンさんに教えてもらった短剣についてサロネン先生に話してみた。
「うーむ、短剣か。一応、教えられるが。どちらかというとミリアのほうが得意な分野だな。」
「ミリアさんが?」
ミリアさんとは、サロネン先生の奥さんでシルビアのお母さんだ。
「ああ、私はどうにも短剣だと軽すぎる気がして少し苦手なんだ。その点ミリアは冒険者の時ずっと短剣を使用していたからな。使いかは熟知しているんじゃないか。」
「そういえば、サロネン先生ってどんなパーティーを組んでたんですか?」
「パーティーかそうだな、攻撃を担当する私とミリア、あと攻撃魔法が得意な奴が一人いたな。その3人で組むことが多かった。」
攻撃攻撃攻撃とまた偏った編成だな。
「回復とかどうしてたんですか。」
「ん?回復は自分でするもんじゃないのか。光魔法の身体強化で簡単な傷ならすぐに治るからな。」
「そうなんですか。ほかの人が怪我した時とかどうするんです?」
「どうって、薬をかけるくらいしかないんじゃないか。」
「そうなんですか。魔法で回復してあげないんですか?」
「ああ、そういうことか。光魔法は自分にしか効かないんだ。もし他人を回復できるんだったら闇魔法の範疇になるな。これから勉強することだがちょうどいいか。魔法には属性があるってのは知っているな。」
「はい、僕は風と水と地が得だって言われました。」
「ああ、そういった地風火水の4大元素はそのまま、その属性の魔法だ。次に光魔法だ。これは、自分や自分の身に着けているものを強化する魔法だ。もちろん、回復力の強化をすることでけがを治すこともできる。そして、闇魔法だが、闇魔法は自分以外の他人に影響を与える魔法だ。うまく使えば回復や。昨日オーエンズ殿にかけてもらった他人への防御の強化などが出きる。しかし、ほかにも体調を崩させたり。麻痺させたりといった悪い影響も与えることができてしまう。だからか、闇魔法の使い手は、あまり表に出てこない。面倒が多いからな。」
「そうなんですね。でもミルトンさんは、堂々と闇魔法を使っていましたよ。」
「オーエンズ殿は別格だ。彼は、部隊の信頼も篤いからな、むしろ部隊をまとめ上げるのに闇魔法を使っていると言われるくらいだ。」
「そんなにすごい人だったんですね。」
「そうだな、さて、話ばかりしていたな。短剣の型はこうだ。」
サロネン先生はそういって腰を落とし、短剣を突き出す構えをとった。
「短剣は基本的に突きで攻撃する。まあ、切ることもできるがあまりしない。」
そういって、突きを何度か放っていた。
「さて、短剣の練習と行きたいところだが、短剣の手持ちがないな。」
「あっ、短剣なら父様がくれるって言っていました。」
「そうか、ならそれをもらってから稽古を始めよう、それまでは長剣の稽古をするからな。」
「はい」
「いい返事だ。じゃあ、まずは型の確認からするかな。」
そういってサロネン先生は、型の見本を見せてくれた。
「よしやってみろ。」
僕も同じようにやってみたけど。
「剣がぶれてるぞ。もっと重心がどこにあるか意識しろ。」
「はい」
型だけとは言え結構難しい。
その後、何回か指摘を受けその後は素振りを命じられた。
「じゃあ、素振りをするように。ちなみにこれは短剣の稽古が始まっても続けるからな。」
えぇ、と思いながらも元気よく返事をし、素振りを始めた。その間にサロネン先生はジョージ兄さんとリカード兄さんのもとへ行った。
「ジョージ、リカード今日は2人掛かりでいいからかかってこい。」
「よーし、今日こそ1本とってやる。」
「兄さんあの作戦で行こうよ。」
「おう」
そういって兄さんたちは、サロネン先生に挑んでいった。
結果どうなったって。
サロネン先生が大人げなく本気を出して叩きのめしていたよ。
「ひどいよ先生。」
「大人げないぞ先生、俺ばっかり狙いやがって。」
「うるさいぞ、ジョージはもう強化魔法を習っているんだろう。だから遠慮なくいかせてもらったまでだ。あとリカードと連携するのはいいが、動きがぎこちなかったぞ。」
「うーん、まだ練習不足か。」
「仕方ないよ、昨日思いついたばっかりだからね。」
「まあ、そういったことも含めて稽古あるのみだな。せっかくだから今日はその連携の練習をしたらどうだ。たまには息抜きになるだろう。」
「先生そういって俺らの対策を考えるつもりだろ。」
「その対策を乗り越えられるようにするんだよ。なに、私も助言くらいはしてやる。」
そうやって兄さんたちと話している間に走り終えたシルビアが話しかけてきた。
「ねえ、ヴェニー、剣を振るってばっかりいるけどなんで。」
「こうやって普段から素振りをしておくと、実際に剣を振るうときに自然い振るうことができるようになるんだよ。」
「私もできるかな。」
「さあ、とりあえずサロネン先生に聞いてみたらどうかな。」
「わかったわ」
そういうとシルビアは、サロネン先生の所に歩いて行って何か話していた。
そして、不貞腐れて帰ってきた。
「まだ走れって言われたわ。」
「まあ、僕の時も最初は散々走らされたからね。今でも走ってるし。体力は大事だよ。無理はよくないけど。」
「わかったわ、頑張る。」
そういってシルビアは、走り始めた。なんだかんだ言ってもまじめに走るシルビアは、素直な女の子なんだろうな。
そうこうしていると、ジョージ兄さんたちが騒いでた。
「こうやって、おりゃー!!」
「馬鹿者、そんな無駄な動きがあるか。」
「えー、でもかっこいいじゃん。」
「いいか、見栄ってのは大事だ、大事だがそれは無駄のない動きの上で必要なものだ。お前たちにはまだ早い。」
「ちぇー、かっこいいと思ったのに。」
「さすがに無理があるよ、僕の後ろから僕を飛び越えて切りかかるってのは。」
「そうだぞ、不意打ちってのは、もっと静かにやるもんだ、おりゃーとか言ってたらすぐにばれるぞ。さっきみたいにリカードの後ろから現れるんだったら、リカードがフェイントをして、横にそれるとかそういう感じにだといいかもしれないな。」
「よし、それで行こうリカード」
「うん、わかったよ。でもフェイントってどうすればいいの。」
「あー、いいや、とりあえず本気で打ち込んで、合図をしたら横にそれてくれ。」
「うん」
そういって練習を始めた。サロネン先生はそれを確認したのちこちらに来た。
「先生兄さんたちもういいの。」
「たまには、自分たちで戦術を考えるのもいい機会だからな。さて、」
そういうとシルビアを呼び寄せ、型を教えると言い出した。
「本当、お父さん。」
「さあ、剣を持つんだ、はしゃぐんじゃないぞ。」
「はい」
「この剣を持って私の動きを真似てみなさい。」
そういってシルビアに剣を渡して、一通り型を教えた。
「できるか。」
「それなら、昨日、ユリシーズの家で見たからできるわ」
そういって、型を披露し始めた。
「いきなり型を教えるなんて、甘やかしすぎなんだがな・・・」
ブツブツ言いながらサロネン先生はシルビアに指摘をしていく。
でもサロネン先生は、ちょっとうれしそうだった。