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#5

家に帰り、いつもの様に剣の訓練をする。ジョージ兄さんは今日は槍を持っている。日替わりで持つ武器が変わっているのはサロネン先生のポリシーなのだろう、剣で基本を作った後は、いろいろな武器を使いこなせるようにするつもりのようだ。

そして、訓練が終わり夕食の団欒の時間、今度の休みについて報告をする。

「父様、今度の休みは友達の家に行こうと思います。」

「おお、そうかそうか、そういえば友達の家に行くというの初めてじゃないか。」

「きちんと礼儀正しくするのよ。ヴェニー」

「それでその友達というのどういう子なんだい。」

「ユリシーズ・ガードナーっていっていつも不機嫌そうにしているけど周りに困っている人がいればそっと助けるようないい人ですよ。」

「ぶっ、ガ、ガードナーってもしかしてガードナー公爵家のことかい。」

いきなり公爵家の名前が出てくればお茶も噴き出したくなるだろう。

「そうだよ。今日魔力がなくていじめられている人がいてその人を助けたついでに剣術の稽古をつけてやるって言って。それで迎えに行くから動きやすい格好で待ってろって言っていました。」

「どうするオリーブ、公爵家の家に行くのに動きやすい格好って・・・」

「向こうがそういっているんだからそういう格好で行かすしかないわね。

ヴェニーさっきも言ったけど礼儀正しくするのよ。」

「はい、母様」

言われなくても礼儀正しくします。なんせ相手は公爵家なんですから。学校で気軽に名前を呼んでるけどいいのかなー。


休日当日

「なぜ、ヴェニーだけでなくシルビアもいるんだ。」

ユリシーズがこそっと聞いてきた。

「なんかユリシーズの家に行くって言ったら、自分も行きたいって言うから。」

「まあ、いいか、家の事言ってあるんだろうな。」

「言ってみたけど、ふうんって感じだった。」

「ならいいか。」

「二人とも何話してるのよ。」

「何でもない。」

「ううん、何でもないよシルビア。」

そうして内緒話が終わる。

「これから剣術の稽古をするんだが見ていても面白いものではないぞ。」

「別にいいわよ、いつもヴェニーたちの訓練見ているから慣れてるわ。それに私も剣術を習いたいし。」

「何を勝手に・・。仕方ない、車に乗れ。」

いつもの様にシルビアをエスコートする。

ユリシーズが少し顔を赤くしていた。

「いつもこんなことをしているのか。」

「うん、そうだよ。」

「そうか・・・」

さすが公爵家の車だ。入学式に乗った馬車よりもソファーがふかふかで揺れも少ない。ただ、残念なことに外の景色はあまり見えないようになっていた。これは防犯の意味も兼ねているようでカーテンで窓はおおわれていた。

魔導機特有のキーンという甲高い音を立て車が発進した。甲高い音も最初だけでその後は、静かなものだった。

この車は素晴らしい。なんと魔力を貯めて動いているそうで、高速走行していなければある程度持つようだ。最悪、運転手の魔力を直接注入することもできるため、前世であったガス欠には基本的にならないのだとか、人としての限界はあるようだが。運転手の人を質問攻めにしてしまった。

そんな感じで車の素晴らしさを語っているとイグの家についた。

イグっていうのはイグネイシャスを略した。長いから。

イグの家は鍛冶をしている家でなかなかの大きさを誇っていた。鍛冶屋さんというよりか雑貨屋さんといった感じかもしれない。

イグの家の前に車を止めると中から親父さんが飛び出してきた。

「こ、公爵様、家みたいな鍛冶屋にどのようなご用件でしょうか?」

「その様子だと、イグは何も言っていないのか。今日はイグを家へ招待しに来たのだ。」

「イグを!?少々お待ちください。イグ!イグネイシャス!!どうなってやがる。公爵様の坊ちゃんがお前を迎えに来てるぞ。」

外まで丸聞こえの大声でイグネイシャスを呼んでいた。

「ユリシーズ様、本当に来るとは思わなくてその。」

「別にいい。そしてとってつけたような様付けをやめろ。すぐに準備をしろ。動きやすい格好だぞ。わかったな。」

「はい。」

ユリシーズに立て続けに指示を出されそれに従うことにいっぱいいっぱいなイグを待つ。

ほどなくしてイグは準備ができたようで車に乗り込んだ。

「次回からはちゃんと親に言っておけ。」

「えぇ、次回ってまたあるんですか。」

「当たり前だ、お前は剣術が一回の稽古で身につくと思っているのか。」

「いえ、そんなことは思っていないんですが。ユリシーズ様。」

「様はいらん。なんだ。」

「次回から私が直接公爵家へ伺いますので車で迎えに来るのはやめてください。」

「む、そうか、すまなかった。」

ユリシーズは素直に謝っていた。僕もうっかりしていた。自分の家がまだ伯爵家という貴族だったので公爵家の車が止まるくらいであれば問題なかったのだが、イグの家は平民だ。公爵家の車が来るだけでも大騒ぎになっているだろう。

それについてイグは、苦言を呈したのだ。それをすぐに理解しユリシーズは謝った。

「そんな、もったいない言葉です。公爵様が謝ることはないです。」

その言葉にイグが慌てていたがユリシーズはわれ関せずといった感じでいた。

そして車は、ユリシーズの家ガードナー公爵家へ着いた。門の前で甲冑を来た人が2人いたが微動だにせず、車が来たときはじめて動き出した。その様はまるで銅像が動き出したかのような不思議な違和感を感じさせた。そして一言も発しないまま門を開け車を通す。車が通り過ぎたら門を閉める様はまるで機械を見ているみたいだった。

門を通り過ぎて1分ほど車を走らせ、この首都のど真ん中に車で一分走らないと門から屋敷まで到着しないのだ。

屋敷に到着したとこで車から皆が下りる。もちろんシルビアの手を取り車から降ろす。そこに白髪をびしっとオールバックにした初老の男性がいた。

「おかえりなさいユリシーズ様、そしてようこそガードナー公爵家へご友人方、わたくし執事のモルドと申します。

先ほど見させていただきましたが、小さいながら紳士でいらっしゃいますね。さすがはユリシーズ様のご友人です。」

「モルド、こいつらを庭に案内しておけ、俺は準備をしてすぐに向かう。」

「承知しました。ユリシーズ様

では、ご友人方こちらにどうぞ。」

「失礼します。」

僕は、玄関のわきに立っていた甲冑の人に声を変えたが微動だにしなかった。

「ああ、彼はゴーレムですので返事ができないのですよ。必要な時には人が入っているかのように動くのですがね。」

そういわれて、鎧の隙間を除くと確かに何も入っていなかった。

そしてモルドさんは屋敷の中を突っ切る形で案内してくれた。そして庭のテラスに日傘をさし、シルビアを座らせ、僕たちも好きなところに座るように言ってきた。

「ユリシーズ様が来られるまで少々時間がありますので何か飲み物をお持ちしましょう。」

そういうとモルドさんは屋敷に入っていきすぐにメイドさんを連れてきた。この速さは事前に準備していたんだろう。モルドさんの手際の良さもそうだし、先ほどシルビアを自然に日傘の下に案内するなど熟練の技みたいなものを感じる。

「モルドさんすごい丁寧な人ね。」

シルビアも感心しているようだ、ちょっとモルドさんに嫉妬心が芽生える。

そうしてモルドさんの歓待を受けていると、イグあたりは居心地が悪そうだが、ユリシーズがやってきた。動きやすそうだが上等な服を着ている。こっちは訓練で着古したちょっと破けたりしている服なんだが。

「またせたな。」

「いや、モルドさんの動きを観察してたから大丈夫だよ。」

「お前は一体、何になりたいんだ・・・」

「い、いやー」

いえない、どうすればかっこよくエスコートできるのか観察してたなんて。

そしてユリシーズは後ろの人に僕たちを紹介しだした。

茶髪の坊主頭でマッチョだったためすごく威圧感があった。年齢は30になったかどうか位か。

「こいつらが先日言っていた奴らだ、女には剣術の稽古は不要だからな。」

「私も剣術習いたい。」

「はは、承知しました。ユリシーズ様。お嬢さん剣術も体力が必要だからまずは体力作りから始めるけどいいかな。」

「はい、そのために動きやすい格好してきました。」

「わかった、じゃあ後でメニューを考えよう、さて挨拶がまだだったね。私はミルトン・オーエンズ。ミルトンって呼んでくれ。」

「はい、ミルトンさん、僕はヴェニー・イースディルです。」

「イグネイシャス・シェパードです。」

「シルビア・スネイクです。」

以外に軽い挨拶にそれぞれ名乗りを上げるとミルトンさんが僕の名前に反応した。

「イースディルだって!?イースディル君のお父さんのお仕事って連邦政府の財務官僚じゃないかい?」

「そうですけど父が何か?」

「いやー、イースディルさんは財務官僚なんだけどひたすら腕っぷしが強くて騎士団とよく試合をしていたんだよ。

私も騎士団に所属していて、たまに試合挑んでるんだけど今のところ半々くらいの勝負なんだよね。l

何をやってるんです父様、漏れ聞こえていましたけど現役騎士団に試合を挑んでるなんて・・・

「挨拶は済んだか、一応言っておくがミルトンは現役の騎士だからな。それも突撃部隊の隊長だ。しかしその隊長と互角以上に渡り合う財務官僚とはな。」

「すみません。父がご迷惑をおかけして。」

「いやいや、迷惑なんかじゃないよ、こちらも騎士団だというだけで強くなった気でいる新人たちを叩きのめしてくれるから助かっているんだよ。本当に。」

そういいながらミルトンさんはなぜかたたずまいをただした。

「さてと、じゃあ訓練を始めるかな。ヴェニー君は見るからに鍛えてそうだけど基本は基本だからね。ユリシーズ様とヴェニー君はこの庭を10周したら訓練を始めようかな。シルビアちゃんとイグ君でいいかな、はとりあえず5週を目標に走ってみて。無理はしない範囲できつくなったら歩いてもいいからとりあえず5週行ってみようか。」

「「はい」」

そして僕とユリシーズは競争と言わんばかりに走り出し、シルビアとイグも走り出した。しかし、さすが公爵家庭が広い。サッカーコードの3分の2くらいはあるんじゃないか。とりあえず今は、ユリシーズに負けないように走るか。

そして、ユリシーズと僕は同着で10周をした。双方体力の限界で息を切らしてた。

「準備運動でなんでそんなに本気なんですか?」

「ユ、リシーズに、負けたくないから、です。」

「こい、つに、負けるわけには、いかん、からな。」

両社ともゼイゼイと息を切らせて答える。たまたま答えがユニゾンしたら、ミルトンさんのツボに入ったらしくしばらく悶えていた。

「ははは、いいですね。ライバルとはこうあるべきですね。いや、まだ小さいのに立派な男ですね。」

それからしばらく体力が回復するまで待っていた。そすぐ後にイグが、そしてもう少し遅れてシルビアが到着した。

「これはこれは、イグ君もなかなかに体力ありますね。シルビアちゃんも一回も立ち止まることなく走り切りましたし。」

それを聞いてイグ君が言葉を発した。

「ぜいぜい、それでは僕にも剣術を教えてくれるのですか。」

「ええ、いいですよ。ただし最初は型からです。とてもつまらないですが頑張ってください。」

「わかりました。」

「シルビアちゃんもそれでいいかな。」

「はい、それでいいです。」

双方息を切らせながらなんとか回答していた。

そして体力が回復するのを待って訓練が再開された。

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