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#4

学校が始まると同時に剣の稽古も始まった。

稽古といってもすぐに剣を振るえるわけじゃない。まずは体力づくりということで庭の周囲を走らされた。まずは無理じゃない程度に走り。疲れても立ち止まるのではなく歩いて体力が回復するのを待ちまた走るの繰り返しだった。サロネン先生いわく。

「体力はつけれるだけつけとけ。体力は自分を裏切らない基本の力だからな。」

とのことである。確かにその通りなのだが、学校の魔力の授業といい基本的に大事なものは総じて地味なのかもしれない。

しかし、継続は力なりといったところで最初は2週もすれば息が切れて走れなくなっていたが今では10週くらいなら普通に走れるようになった。

そして、1年もたつと魔力の授業に新たな動きがあった。適正の確認が行われるのだ。この適正は魔力を感じることができるくらいにならないとわからないとのことで全員が魔力を感じるようになるまでお預けだった。まず最初に魔力を感じたシルビアから適正の検査が行われる。検査方法は水晶玉のような透明な玉の上に手を置き魔力を感じるのと同じ状態になることで水晶玉が光だす。その光の色で適正を判断するのだ。

シルビアもちょっと緊張気味だが、手を置き深く息を吸い込んだ。しばらくすると水晶玉から真っ赤な光があふれてきた。かなり明るい光が出たことで先生もあっけにとられていた。

「はい、シルビアちゃんもういいわよ。シルビアちゃんの適性は火ね。それも魔力量がとても大きいから将来は、すごいことになりそうね。でも火は扱いを間違えると危ないから気を付けるのよ。」

「はい、ふふ」

シルビアは嬉しそうに笑ってた。褒められたと思ったんだろう。しかし、先ほどの言い方だと危ないから気を付けろという部分が大きいように思えたが。

その後、順調に適性判断は消化されていき、黄、緑、青といろいろな光が部屋を照らしたりまったく光らない子もいた。そして自分とユリシーズの番になった。

「俺から行くがいいよな。」

「いいよ。」

相変わらず命令口調だが、なんとなくわかってきた。聞いてくるだけこちらを気にかけているのだ。ほかの人の場合だと聞くことすらせず行動を起こす。そして相手が何を言おうと聞く耳を持たないのだ。

ユリシーズの光は白色だった。光量は中くらいかな。

「ユリシーズ君は光属性かな、基本なんでもできるけど、身体強化が得意のようね。」

とのことだった。そして、自分の番となった。

光は、コバルトブルーだった。光量はやっぱり中くらい。

「えーっと、この色は・・・風と水と・・・地かなぁ」

ローリー先生は疑問形で調べていた。

「2色の混合とか白とかはよくあるんだけど3色って珍しいわね。あっ、あってた地ね。すごいじゃないヴェニー君、3属性ってなかなかないわよ。」

「でも、ユリシーズは白で全属性使えるのですよね。」

「えーっと、白色は全属性使えるけど得な属性ってわけじゃないのよ、その分身体強化とかが得意なんだけど。ヴェニー君の場合は、風と水と地の属性が得意ってことで火が苦手って感じかな。それでも2属性まではよく見るんだけど3属性って珍しいんのよ。」

ローリー先生が興奮気味に話しかけていた。ユリシーズは自分が出汁に使われたことに憮然としていたが特に何も言いださなかった。

そして、その後の魔法授業に何か変化があるかというとそうではなく、瞑想だった。なんでも、瞑想して魔力の感覚に慣れた後も、魔力の制御をするには、感覚を研ぎ澄まさなければならないのだとか。

どんな魔法の達人でも、特別な場合を除き毎朝の瞑想は必ず行うのだと。

その後、ほかの授業でこの世界のことを少しだけ聞いた。この世界に住んでいるのは人だけではなく、エルフやドワーフ、獣人やゴブリンなども人と同じ権利を有しているのだとか。内容としては、「仲良くしましょう」くらいだったが。

そういえば学校内で耳の長い生徒を何回か見た記憶があるな。そのときは個人差かなと思っていたが、エルフなのかもしれない。

そんなこんなで学校生活を過ごし、1年が過ぎた。まだ、魔法の授業は瞑想がメインだが、少しずつ魔道具の動かし方なんかも習うようになってきた。やっぱり最初は、魔力灯をつける練習だった。

「「つけ」」

一斉に目の前の魔力灯に魔力を送り込む感覚で言葉を放つ。明かりがついたりつかなかったりだが、シルビアは1発で決めていた。

しかも明るさが周りより一回り明るいのだ。そして僕とユリシーズは1回目を失敗した。ユリシーズは悔しそうな顔をしていたが、次で成功していた。

「ふふ」

「なんでこっち見るんだよ。」

「いや、なんでも、ふふふ」

嫌な奴だ。しかし3度目の正直という言葉がある少なくても前世ではあった。3回目で成功させた。

明るさはユリシーズと同じくらいだったので、やはり負けた感があるが・・・


その後、家に帰りジョージ兄さんと話していた。

「ついに魔力灯のつけ方を覚えたよ兄さん」

「おっ、じゃあこの部屋の明かりをつけてみてくれヴェニー」

「うん、つけ」

魔力灯は問題なくつき、落ち着いた光を放っていた。

「ねえ兄さん、なんで家の明かりは同じ光を出すの?今日授業でやったときはみんなそれぞれ明るさが違ったのに。」

「ああ、学校の魔力灯は受け取った魔力の量に比例して明るさが変わるようにできているんだよ。家の魔力灯は多めの魔力を受けても明るさが変わらないようになっているんだ。そのうちヴェニーも適量の魔力を飛ばす授業を受けると思うぞ。」

「そうなんだ、教えてくれてありがとう、兄さん」

「おう」

確かに魔力で明るさが変わったら不便でしょうがないな。魔道具としてはそれだけでは不合格で誰が使っても安定した光を出す必要があるのか。

「そうだ、兄さん、魔法が使えない人っているの?」

「ん、いるぞ。でも魔法が使えないからっていじめたりしたらだめだからな。」

「そんなことしないよ、そういう人はどうやって魔力灯とか使うのかなって思って。」

「それは、魔力を伝送する道具があるからそれを使っているんだ。なんか四角やつだな。」

そういってジョージ兄さんは長方形の形を手で作っていた。

「そうなんだ、そんなのがあるなんて。」

「さっきも言ったけどそういうの持っているからっていじめたり仲間外れにしたりしたらいけないぞ。」

「わかってるって。」

そんなことを話しながら、魔力伝送装置のことを考えていた。

そして数日後。学校でその魔力伝送装置を見ることになった。

それは大人しそうな男の子がほかの子たちにいじめられている場面だった。

「やい、無能、お前無能って言われてんだろ。」

そういいながら、いじめっ子たちは少年に泥団子を投げ始めた。

「魔法使って防いでもいいだぞ」

「手に持っているので魔法使ってみろよ。」

これはいけない、止めないと、と思っているとユリシーズが前に出た。

「おい、無能ども群れなければ一人を攻撃することもできないのか。」

「なんだよ、関係ないやつが入ってくるな。」

「なら今から関係者だ、その手に持っているものを投げてくるなら投げてこい。」

そういうとユリシーズはその辺に落ちていた板切れを拾い上げた。

「なっ、もういい、行くぞみんな」

そういうといじめっ子たちはその場を離れていった。そして残った少年は、不審の目でユリシーズを見ていた。

「お前、なぜ堂々としていない。」

「だって、僕魔法が使えないから。」

「それがどうした。魔法が使えなくとも奴らを叩きのめせばいいだけだろう。」

「そんなことできるわけないじゃないか。周りからたたかれて終わりだよ。」

「そうか?奴らなんぞ棒を持って構えただけで逃げていったじゃないか。」

「それは・・・あなたが貴族だから。」

そう、ユリシーズも貴族で公爵家の人間なのだ、が。なぜこの学校にいるかというと。公爵たるもの市井の民の生活を見なければならない。という考えかつ、貴族学校なんぞ言っていたら感性が腐る。という現公爵閣下の意見で決定したのである。

「ならばお前はどうしたいんだ。このまま無能と言われていたいのか。」

「ううん、そんなことは」

「お前、名前は何という。」

「イグネイシャス・シェパード」

「そうか、イグネイシャス、今度の休み俺の家にこい。」

「えぇ、公爵様の家に、そんなの無理だよ。」

「俺がいいと言っている来い。直々に剣術の訓練を受けさせてやる。」

「えぇ」

「では、迎えに行くからな。」

「ちょっとま「じゃあな。」」

有無を言わさずその場を後にするユリシーズ。相変わらずの俺様だが、さっきのはかっこよかった。

「かっこいいね、ユリシーズ。」

「おちょくるな、最初にお前が動こうとしたからな。負けるわけにはいかない。」

そういうとニヤッと笑っていた。なんというか全部善意じゃなかったとは、でも彼を思いやる気持ちは痛いほど伝わってきた。

俺様だけど優しいやつなんだユリシーズは。

「当たり前だがお前も来いよな。そこそこ剣術も使えるんだろう。」

「そんなことないよ、最近やっと剣を持たせてもらったところだから。」

「まあいい、動きやすい格好で待っていろ。お前も迎えに行くから。」

「わかった。稽古用の服を着ておくよ。でもいいの公爵様の家に行くのにそんな恰好で。」

「俺が良いと言っているんだから良いんだよ。」

そういうとさっさと歩きだした。相変わらずの即断即決具合に少し笑いがこみ上げてくるが、ここで笑うと面倒なことになるのでぐっと我慢する。

そうと決まれば家に帰って次の休みに出かけることを家族に言っておかないと。そういえばユリシーズのこと今まで話したことなかったな。どういう反応をするんだろうか。

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