#2
前世の記憶が覚醒し翌日、メイドさんに起こされ朝の準備をする。するといってもメイドさんがほとんど行うのだが。
ダイニングルームにつくとそこにはびしっとスーツっぽいものを来た父親の姿があった。前世と違うところは、ネクタイではなくスカーフっぽいものを首に巻いているくらいか。とても肉体労働者とは思えない格好だ。
すでに父は朝食をとった後のようで子供たちに朝の挨拶をしていた。
「ジョージ、リカード、ヴェニーもいい子にしているんだよ。じゃあ、仕事に行ってくるよオリーヴ愛してる。」
そういうとそれぞれの頬に軽いキスをし出て行った。
自分たちは、これから朝食だ。軽く焼いたパンにスープといった軽い朝食をとったあと、今後の予定を話し合っている。
ジョージ兄さんとリカード兄さんは学校に行ったあと、剣の稽古と忙しそうだ。自分はまだ就学前ということで特に用はない。いつものように母やメイドさんに物語でも読んでもらおう。
物語は今住んでいるイスラ王国の建国物語などである。やはりそこでも魔獣が登場していた。魔獣は魔法を使う獣の総称のことで危険な存在とのことだ。しかし、すべての魔獣が人に害を与えるというとそういうわけではなく、幼いころから人に慣れさせた魔獣は人の頼もしいパートナーとして存在している。建国の父アリステア・イスラも天馬の部隊を率いて領土の安寧をもたらしたと伝えられている。しかし、野生の魔獣は危険で野犬などが魔犬となると討伐の必要が出てくる。
もちろんそのために騎士団などが存在するが小さな案件だと冒険者と呼ばれる自由業者が対応することが多い。その冒険者をまとめているのが冒険者ギルドというものだ。これについても、いろいろと冒険者の物語があり。男の子たちのあこがれの職業だったりする。
この世界には神域とか禁域とかいう場所がある。こういう場所には、強力な魔獣が存在している。そして、その地の主をドラゴンと呼んでいる。前世でおとぎ話であった所謂、羽の生えたトカゲといったものもいるが別の動物もドラゴンと言われている。
例を挙げれば、狼の森の主、白狼竜がいる。その姿は見上げるほどに大きな白い狼で、空を駆け、風よりも早く動くそうだ。その昔、狼の森を征伐しようとしたとある国の王様がいたそうだが、軍隊は魔獣に阻まれ壊滅し、国王も白狼竜の一撃で城ごと消されてしまったというおとぎ話がある。そうした話で神域や禁域に手を出さないように子供のころから教え込まれるのだ。
昼過ぎ、リカード兄さんが帰ってき、剣の稽古を始めた。剣を教えているのはサロネン・スネイク先生。元冒険者で一通りの武器が使えるため、ジョージ兄さんとリカード兄さんの剣の師匠をしている。たぶん自分の師匠になるのだろう。
リカード兄さんは剣の稽古をしてまだ1年というが、その姿は年齢の割に堂々としているように思える。サロネン先生は一通り型の稽古をした後は走り込みをさせ、その後打ち込みの練習をさせていた。途中休憩をはさんでいるとはいえなかなかにハードである。
打ち込みの練習でサロネン先生は適時、指摘を行っている。
「リカード、もっと踏み込みを早く鋭くすることを意識しろ。そして打ち込んだらすぐにその場を離れるんだ。もし打ち損じていたらすぐに反撃が来るからな。」
「はい、先生」
リカード兄さんは、きつそうだが楽しそうに稽古を進めている。
そうしているとジョージ兄さんが帰ってきた。
「ただいま。あ、サロネン先生ただいま戻りました。すぐ準備をします。」
「ああ、ジョージ、私は逃げないからゆっくり準備しなさい。おっ、今のはいいぞ、リカード」
ジョージ兄さんと話をしながらもリカード兄さんの打ち込みを軽く受けながら指導をするその姿は、かなりの実力があることをうかがわせていた。
ジョージ兄さんが刃をつぶしたロングソードで型の確認と帯剣しての走り込み、腕立て伏せなど一通りのウォーミングアップを済ませるとちょうどリカード兄さんの体力が限界に来たのかサロネン先生とリカード兄さんが休憩していた。
「先生、準備ができました。」
「よし、では打ち込みからだな。こい、ジョージ」
ジョージ兄さんの打ち込みはリカード兄さんよりも深く鋭い一撃をサロネン先生に浴びせる。しかしサロネン先生はそれを軽く受け止めている。
「いいぞ、ジョージ前回よりも一撃が重く鋭くなっている。」
軽く言いながら剣を受け止めている。そして、打ち込みだけの稽古から実践的な打ち合いの稽古に入っていく。
ジョージ兄さんは9歳とは思えない速度で剣を繰り出しそれをサロネン先生が受け流しスキを見つけては反撃をするという、サロネン先生が押されているようだが、そうは見えない、サロネン先生は攻撃を受けながらスキを見逃さず的確に剣をジョージ人さんに当てていた。次第に苦しそうな顔になっていくのはジョージ兄さんだ。
その後、リカード兄さんを交え2対1で稽古を進めていくがサロネン先生は余裕の表情で対応していた。
そんなこんなで6日が立ち休日となった。この世界でも1週間は7日であり、休日は週1日だけのようだ。その分休日の前日は半日仕事なり勉強なりをした後は家でゆっくりとするのが一般的だ。
そして休日になると父とジョージが剣の稽古をするといってた。あれだけ剣の稽古をしていたまだ足りないのだろうかとジョージ兄さんの脳筋ぶりに心配になる。
かたや、リカード兄さんは約束してもらった算数の本をもらい嬉しそうにしていた。
「ヴェニーも一緒に読むかい。」
さわやかに言ってきたので読みたいと返すと。少し驚いた様子だがすぐに嬉しそうに笑いかけてきた。実に好青年だ。自分もこうなるんだろうかと少し希望が出てきた。
その後、リカードの部屋で算数の本を読み聞かせてもらっていた。内容としは、普通の算数だが、図や絵がふんだんに使用されとても分かりやすい。といってもさすがに6歳児が読むような内容なので知っていることばかりだが。この年でマイナスまで習うというのが少し意外だったくらいか。
そして、自分が退屈そうにしているのを見たリカード兄さんはさもありなんといった感じで苦笑した。
「ジョージ兄さんの所に行こうか、ヴェニー。」
そういうとジョージ兄さんと父様の所に連れて行ってくれた。
そこでは、ちょうどサロネン先生と父様の試合が始まるところだった。
「では胸を借ります。ガストン先輩」
「うむ、こいサロネン」
掛け合いが終わった直後、信じられない速度で剣を振るうサロネン先生。いくら何でも本気すぎるだろ。そんなんいくら刃がつぶしてあっても父様が撲殺されるのでは?という疑問を感じるほどだったが、父はこれまたありえない反応速度で真正面から剣で受けた。
ガキンと剣が折れそうな勢いで打ち付けられ、その後、目にもとまらぬ剣の応酬が繰り返された。
「これはどうです。はっ!」
「甘い!」
そして最後には気合とともに剣を振り切った父の一撃がサロネン先生の胸を打ち付け吹き飛ばした。そう、吹き飛ばしたのだ距離は少なく見ても庭の端までだから5,6メートルはあるがそれを人が簡単に飛んで行ったのだ。
やってしまった。いくら刃をつぶした剣とはいえあの威力ではサロネン先生は・・・。
父親が殺人を犯すなんて・・・
そう思っているとサロネン先生がむくりと起き上がった。
「やっぱりかなわないな。なんで財務官僚なんてしてるんです先輩。先輩なら騎士団でもなんでも武力で一旗あげれますよ。」
「いや、私は数字を弄るほうが性に合っているんだよ。たまに騎士団とは勝負に行くがな。」
「どんな財務官僚なんですか一体・・・」
そんな会話をしている。父が肉体労働者でなく、財務官僚というのに驚いたがそれ以上にサロネン先生の丈夫さに衝撃を受けた。
「サロネン先生大丈夫なの?」
心配して声をかけてみると。
「ああ、ヴェニーは私を心配してくれているのか。大丈夫さ身体強化、特に防御の強化は得意なんだ。」
軽く言ってきた。やはり魔法はあるのか、それもかなり自然な感じに使用されていて普通だと気付かないほどだ。もしかしたら、ジョージ兄さんの剣の鋭さや先ほど父様とサロネン先生の打ち合いの驚異的な剣の応酬も魔法の成果化も知れない。
「僕にも魔法は使えますか?」
「はは、もちろんだヴェニー、だがまだまだ体も心も出来上がっていないものに魔力は危険なんだ。あと2年したら剣の稽古とともに魔法の稽古もつけてやろう。」
サロネン先生にメイドさんと同じことを言われた。やはりあと2年待つ必要があるのか。それに剣の稽古もしないといけないのか。結構辛そうだったんだが。
「はい、2年頑張って待ちます。」
「ああ、待っているぞ。しかし、あと2年もするとジョージとリカードの二人あいてにもう一人となると負けそうだな。」
「いまさらだが、うちの子たちはどんな感じだい、サロネン」
「ジョージは体格もいいのでどんな武器でも使えるようになるでしょう。リカードについては剣特にレイピアなどの細剣の才能がありますね。」
「はは、自慢の子たちだな。」
「まったくうらやましいですよ。」
父様とサロネン先生が話していると、母様が夕食の準備ができたといってきた。
「さあ、サロネン先生も一緒にどうぞ。せっかく休日なのに稽古にきてもらっったんですから。おもてなししないといけないですからね。」
母様の有無を言わせぬ雰囲気にサロネン先生は頭を掻きうなずいた。
「では、せっかっくなのでいただきます。ありがとうございます。」
「いいんですよ。うちの人のストレス発散に付き合ってくれる数少ない人なんですから。」
笑いながら母様は奥に引っ込んでいった。
「すみません気を使っていただいて。」
「気にするな食事は大勢のほうが楽しいからな。」
そして、夕食時、自分は母様の補助で食事をしている。今日は休日なのでメイドさんも休みなのだ。館の管理に最低限必要な人を残してあとは家族団欒をする日となる。
そして、軽く祈りをささげた後、食事を始めた。話題は、ジョージ兄さんの剣術についてや、リカード兄さんが新しい算数の知識が楽しいという話をきく。
そして父様とサロネン先生は学校の先輩後輩だということを聞いた。なんでもそつなくこなすサロネン先生は、先輩でも自分より強いものはいないだろうと思っていたところ、父様と出会い天狗になっていた鼻を折られたのだとか。
その後、父様につきいろいろと訓練を積んだが父様に勝つことができなかったのだとか。その後、冒険者になり、結婚をして腰を落ち着ける場所を探していたところ父様と再会し、子供たちの家庭教師という仕事に就いたんだとか。ちなみにお子さんは女の子が1人いるらしい。名前はシルビア。自分と同じで3歳だという。
2年後自分はどういう感じで成長するのだろうか。魔法とはどういったものなんだろうか。生前したRPGのような魔法もあるのかもしれない。