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次なる場所へ

これからチビと一緒に旅をすることは決まったが、出発の準備やらカーティスや集落の皆への挨拶やら、その辺りをきっちり済ませていかないとな。

ということでチビと一緒にカーティスを探し回っていると、道具袋に大量の果実や野菜を背負って戻ってきた所に出くわした。

「その様子だと、もう話はしたようだな」

よいしょっと言って道具袋を下ろしたカーティスは、俺とチビが一緒にいるのを見て、早くも察してくれたようだ。

「うん」

「そうか。男なら、一度やると決めたら最後までやり通せ。色んな経験を積んで、心身共に大きくなって帰ってくるのを待ってるからな」

でも、その時はもうチビとは呼べんな、と言ってガハハと豪快に笑うカーティスに頭を下げた。

「短い間だったけど、世話になった。俺は今日、チビと一緒に集落を発つ」

「そうか、元気でやれよ」

たった一言ではあったが、そこには色々な思いがこもっていると感じた。

「そうそう、お前さん達の出立に際し、餞別を用意していたんだ」

そう言ってさっき下ろした道具袋をがさごそと漁っていたが、やがて木製の弓を取り出した。

「これから各地を旅するなら、装備も必要だろう。防具は俺の使っていたものをチビ用に調整すればいいが、武器は各々の体格を考慮して選ばんとな」

「わあ、ありがとう」

手渡された弓を大事そうに抱え、はしゃぎ回るチビを微笑ましく見た後、俺の方へと向き直った。

「その武器と防具は、お前さんにやろう。そのまま使ってくれ。あとお前さんにやるものがもう一つある」なんだろうと思い待っていると、カーティスは突然厳かな口調で語り出した。

「貴殿は、未熟ながらも持ち前の勇気で道を切り開いてきた。私はその勇気を称え、貴殿にブレイブの名を授けることとする」

ブレイブ…確か、勇敢とか勇気とかそんな意味だったはずだ。

突然のことで驚きはしたが、尊敬するカーティスからこの世界における名前をつけてもらえるのなら、何よりの贈り物だ。

俺は、喜びにやや震えながらもはっきりと頷いた。

俺は、これからブレイブだ!




名前がブレイブとなりました!


ネームドモンスターとなりました!




俺が了承するのと同時に、脳内でもはや聞き慣れたアナウンスのようなものが聞こえた。

現世でのゲームの知識を掘り起こしてみても、名のある敵キャラ、敵モンスターというのはどれもこれも強かったはず。

俺みたいな弱いネームドモンスターなんて前代未聞だろうな。

「それと最後に、次どこにいくか決まってないなら北に向かうといい」

「北に?」

カーティスの言葉で我に返った。

確かに、出発すると決めはしたがどこに行けばいいのかまるで考えていなかった。

「ああ、北に半日ほど歩けばセレナ湖と呼ばれる小さな湖がある。湖畔には人間の建てた屋敷が建っているが、普段は庭師以外人はいない。その近辺で食料を調達したあと更に北へと向かえば、イスニアという今は衰退した王国がある」

「分かった、貴重な情報ありがとう」

一先ず北に向かうと決まった以上、後は出立までの時間やることをやらねば。


カーティスに再度頭を下げると、チビと二人で集落の皆に挨拶をして回った。

皆笑顔で「元気でな」「いつでも戻ってきていいんだぞ」と声をかけてくれた。

チビはともかく、数日間居候をしただけの俺にまで優しい言葉をかけてくれるなんて…と、ちょっと感動しながら、挨拶を終え道具の準備も済んで、いよいよ出立の時間となった。

出口を前に立つ俺とチビの後ろには、集落に住むコボルト達が全員集まってきていた。

「ありがとう、それじゃまたいつか」

「行ってきまーす、きっと成長して戻ってくるからね」

お互いに別れの挨拶を口にして出口をくぐった。

集落の皆は、俺達の姿が見えなくなるまでずっと手を振っていた。


さて、これからは北を目指していくことになるが、その前にやることがあるな。まずは―

「ヤッホー、元気そうで何よりだよ♪」

「………」

この無駄に能天気な声は…「あれ、久しぶりすぎて忘れちゃったかな。神様だよー」

ああ、やっぱりか。

一瞬で雰囲気を台無しにしてしまうこの感じ、やっぱり(自称)神様か。

「あ、今僕のことを自称神様(笑)とか思ったでしょ、失礼だなぁ」

いや、ほぼ当たってるけどなんか増えてるし。

ていうか人の心を勝手に読むな。

「フッフッフ、神様に隠し事など出来ないのだよ。まあ冗談はさておいて、異世界にきた当初と比べて一ミクロンほど逞しくなったみたいで、僕は嬉しいよ」

一ミクロンって、褒めてないよな。むしろ貶してるよな。

「しかも、ちっちゃくてキュートな仲間まで見つけたブレイブに特別プレゼントだ」




技能:戦力把握の習熟度が3に上がりました!




やたら明るい声が聞こえた直後、戦力把握の習熟度がアップした。

「仲間も増えたし、仲間の実力を把握しつつ戦うことも今後は必要だろ?」

素直に頷くのは癪だが、確かに北へと向かう前に、チビの戦力が把握出来ればと考えていたのでこれは嬉しい。

「いやぁ、最初にうっかりして人間の町じゃなくコボルト達の集落を案内しちゃったからね」

てへっ♪とか言っていたが、じゃあ俺はうっかりでカーティス達の集落に行ったんかい。

「これでうっかりの分は帳消しだね。これ以上の手助けは君のためにならないから、また暇なときに…じゃない、君が活躍し始めた頃に来るよ」

言いたいことだけ言って、神様はまた帰っていったらしい。

なんか、北へと向かう前なのに早くもやや疲れてしまった。

「ボーッとしてたけど、大丈夫?」

「ん?ああ、大丈夫だ」

そっか、チビには神様の声は聞こえてないんだな。

とりあえず、さっきやろうとしていたことを実行に移さねば…。




種族,コボルト

名前,チビ

レベル1

状態,健康

HP,9/9

MP,0/0

筋力4

敏捷6

器用度9

賢さ6

耐久力3

攻撃力:8

守備力:7


技能、【薬草学(習熟度2)】、【釣りの心得(習熟度1)】


種族特徴、 長毛(耐久+1)



なるほど、これが今のチビのステータスなわけか。

ん?これまでモンスターと対峙しても分からなかった技能と種族特徴が分かるようになっている。

これは確かにありがたい。しかし、チビの技能は薬草学に釣りの心得か…。

チビらしいというか、平和な技能だ。

しかし、この薬草学というのは響きからして使えそうだな。

釣りの心得も食料調達に役立ちそうだし。

そういえば、俺の今のステータスはどうなってるんだ…




種族,コボルト

名前,ブレイブ

レベル6

状態,健康

HP,32/32

MP,10/10

筋力15

敏捷13

器用度20

賢さ11

耐久力13

攻撃力:20

守備力:19



技能、【言語理解(習熟度1)対象言語:人語、初級蛮族語】【食の探求者(習熟度1)】【カウンター(習熟度1)】【渾身撃(習熟度1)】【戦力把握(習熟度3)】【気配探知(習熟度1)】


種族特徴、 長毛(耐久+1)

所持品、薬草×3、毒消し草×2、蜂蜜草×3、火炎草×2、グンタラビットの角×8

所持金、なし

装備品

一角剣(攻撃力+6)

皮の鎧(守備力+5)

木の盾(守備力+2)




ん?以前確認した時よりもステータスが上がっている。

レベルが上がったわけではないのに…あ、もしかして俺がネームドモンスターになったからか。

これはありがたい。MPもついに二桁になったし、今ならトレントとやりあっても勝てるかもしれない。「よし、行くぞ!まずはセレナ湖だ」

「出発!」

チビと二匹で拳を突き上げた後、意気揚々と森を北へと進んだ。


…20分後。

「ぎゃああぁ!!チビ、急げ急げ!」

「お兄ちゃん待ってー!」

3体のトレントから必死に逃げながら、結論として1体ならともかく複数のトレントが相手では逃げるしかないということが分かった。



これから、本格的にブレイブと愉快な仲間たちの珍道中が始まっていきます

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