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親子の絆

カーティスと二人であれから2時間ほど歩き、元の集落まで無事戻ることが出来た。


「ふぅー、なんとか戻れたぁ」

無事戻ってこれたという安堵から、俺は集落の入り口をくぐった瞬間へなへなと座り込んでしまった。

端から見たら情けないことこの上ないだろうが、そんなもの知ったことか。

あれは、死の化身だった。あれは出会ってはいけないものだ。

戦ってどうこうなる相手ではない。

俺から見たら十分に強いカーティスでも、あのドラゴンを相手にしては絶対に勝てないだろう。

「お前さんに旨い酒を飲ましてやりたいと行った探索だったが、あの様子じゃしばらくあいつは気が立ったままだろう」

どうする、と無言で問いかけてくるカーティスに対し、しばし考え込む。

もはや気楽な探索ではない。

もしアースドラゴンに見つかりでもすれば、今度こそ命はないだろう。

それでも…

「いや、きっかけは何であれ、最後までやり通そう」

例えどんなことでも、始めた以上は最後までやり抜く。

それがきっと、いつか現世へと復活するための一歩となっていくと信じて、今は進むしかない。

「全く、お前ほど気持ちのいい馬鹿は久々に見たな」そう言って、カーティスはしばらく大声で笑い続けた。

馬鹿と言われて多少むっとしたが、言われてみればその通りなので反論は出来ない。一分近く笑い続けていたカーティスは笑い疲れたのか、ようやくこちらを向いて「分かった」と頷いた。

「しかし、同じルートを行くのでは先と同じ過ちを繰り返すことになる。ここは、遠回りになるが竜の巣を大きく北側から迂回していくルートをとろうと思う」

「分かった、それで行こう」

こちらも即座に頷いた。

再度挑戦する、しかしドラゴンとの遭遇は避けたいと考えていたので別ルートがあるなら願ったりだ。

「それなら、明日の日の出と共に出発しよう。それまでは俺の家で寛いでくれ」「ありがとう、ってカーティスはどこへ行くんだ?」こちらに声をかけると、集落の出口へと向かうカーティスの背中に、慌てて声をかける。

「ああ、一応明日のための備えを少々しないといかんからな。チビには一時間程度で戻ると伝えておいてくれ」

何でもないかのようにそれだけ伝えると、そのまま集落を出ていってしまった。付いていきたい気持ちはあるが、今の自分のレベルでは正直足手まといにしかならないだろう。

ここは、カーティスに任せて俺は家で休ませてもらおう。

今日1日で色々なことがありすぎて、確かに疲れているからな。

広場を通ってカーティスの家に向かっていると、たどり着く前にチビがこちらに走りよってきた。

「おかえりお兄ちゃん!あれ、カーティスは?」

どうやら、俺というよりはカーティスを出迎えたかったらしい。

きょろきょろと辺りを見回しているチビの姿に思わず微笑ましい気持ちになりながら、また出掛けていったことを告げた。

「そうなんだ、なら晩御飯出来てるからお兄ちゃんもおいでよ」

「ああ、ありがとう」

チビの後について、一緒にカーティスの家に向かう。家に着くまでの4、5分にも満たない間、今日の探索はどうだった、カーティスは頼りになったでしょう、と色々な話をした。

「チビは本当にカーティスのことが好きなんだな」

無邪気に笑うチビの姿に、思わず思っていたことをそのまま口にしていた。

「うん、僕はカーティスのこと本当のお父さんみたいに思ってるよ」

…ん?ちょっと待て。

「本当のお父さんみたいに…?」

「僕のお父さんとお母さんは、僕が小さい頃人間に殺されたんだ。その時僕を助けてくれたのがカーティスだったんだよ。そのあとは、ずっとカーティスが僕を守ってくれたんだ」

そのことを語るチビはとても誇らしげだ。

チビの話だと、この集落に住んでいるコボルト達は、ほとんどがカーティスによって助けられ、ここまで連れてこられたみたいだ。

……改めて、カーティスの偉大さを理解し直した。

これまでは、強くて頼もしい友人という風に思っていたが、現世でも心から尊敬出来ると思えた人物は記憶がない。

「集落の皆にとって、カーティスはお兄ちゃんでありお父さんなんだよ」

ああ、こんなに温かい集落ならずっといたい気分だと、チビの笑顔を見ながら思った。

「とうちゃーく、そろそろカーティスが戻ってくると思うから、お兄ちゃんはこれを石のテーブルまで持っていって」

と言われ、チビから良い匂いのする鍋を手渡された。

中を覗くと、どうやらスープらしい。

数種の野菜と魚が入っているのが見える。

よいしょ、というかけ声と共に鍋をテーブルに置いている合間に、チビは昨日も出たピュンタラビットの直火焼きが乗った木製の大皿を持ってきた。

「旨そうだなぁ」

匂いを嗅いでいるだけでたまらないものがある。

「遅くなったな、今戻ったぞ!」

まさに絶好のタイミングで、カーティスが戻ってきてくれた。

「おかえり、カーティス。ちょうど晩御飯の準備が出来た所だよ」

「旨そうな匂いだな、早速飯にするか」

さっさとテーブルについて食事を始めたカーティスに、俺とチビは苦笑しながら共に席についた。

明日に備えてしっかり英気を養わねばという思いもあったが、それ以上に今この瞬間を楽しみたいと考え、カーティスに負けじとこちらも食事を開始した。


結局、食べて飲んで思う存分笑って、昨日の宴に負けない位賑やかな食卓は深夜にまで及んだ

しばらくは、RPGでいうところのチュートリアルが続きます。

私の拙い文章を読んで下さっている方々が意外に多いことに驚きながらも嬉しく思います。

もしご意見・ご感想などあれば(改善点でも構いません)今後の参考とさせていただきますのでお寄せ下さると嬉しい限りです


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