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偉大なる一歩、初戦闘は厨二ウサギ!?

森に入ってからしばらくして、ふと今の自分の能力とはどの程度のものなのか確かめておく必要があるな、と感じた。


ひとまず何かいないかと周囲を探ってみるものの、時折風で木々や草花がざわざわとたてる音以外聞こえない。

仕方がないので、そこら辺に生えている草花の中に役に立ちそうなものがないか探してみたが、そもそもどれが役にたつのか分からない。

「とりあえず、食べてみれば分かるか?」

手近にあった赤い草を少しちぎって口に放り込む。

「んぐんぐ…んっ!?」

辛い!?とんでもなく辛い!まるで口の中に火を付けられたような激烈な辛さに、数分地面を転がり回って悶絶した。

「はぁ…はぁ…」

ようやく辛さが抜け、冷静に戻るとHPが1減少していることに気が付いた。

「こりゃとんでもない草だ…ひとまず火炎草と名付けよう」

そう口にしながら、これまで空っぽだった道具袋に火炎草(仮)を仕舞う。これは、料理に使えば香辛料になるのではと考えたからだ。しかし、手当たり次第食べて確かめるのでは、さっきみたいな悶絶地獄をまた味わうことにもなりかねない。

今度は色を見て匂いを嗅ぎ、一番安全そうと判断した薄緑色の草を少しちぎって口に放り込んだ。

「んぐんぐ…これは甘いな」

ほんのり甘いこの感じは、なんだか癖になりそうだ。近くを探してみると、他にも同じ草を発見し、しばらくの間自然の甘味を思う存分楽しんだ。




食の探求者(習熟度1)を習得した




「?また何か習得したな」

しばらくの間ずっとむしゃむしゃしていたからなのか、新しい特技を手に入れた。

これがどのような効果のある特技かはいまいち不明だが、とりあえずはおいておく。

気が付けばHPが回復してい

るがこの草のおかげだろうか。

「よし、こいつは蜂蜜草と名付けよう。非常食かおやつにでもするか」

さっき道具袋にしまった火炎草とは分けて袋にしまう。

あんまりのんびりしている場合ではないと立ち上がりかけた時、何かの気配が目の前の草むらから感じられることに気付いた。

「何だ?」

魔物か?もし魔物だとして、襲いかかってきたらどうする?

とりあえず、草むらの揺れている加減から、相手は小さいようだ。

なら、俺でも勝てるかもしれない。

残念ながら(コボルト)には鋭い鉤爪などないため、殴るか蹴るかしか方法がない。

「覚悟を決めるか…」

ふう、と息をついて全身から無駄な力を抜き、目の前の茂みに集中する。

先手必勝!相手が動く前に、こちらから渾身の蹴りをお見舞いする。

茂みに潜む何かに接近するまで、1秒とかからなかった。爪先に柔らかい何かを蹴りあげる感触が伝わるのとほぼ同時に、白い毛玉が俺の蹴りで思い切り蹴飛ばされ、木の幹に直撃して動かなくなった。

「死んだ…?」






経験値1を獲得した!




「経験値?」

また頭の中に言葉が浮かんでは消えていく。経験値ってますますもってRPGみたいだなぁ。

いや、今はそんなことを考えてる場合じゃない。そもそも、あの白い毛玉は何だ?生き物なのは間違いなさそうだが…そう思いながら近づいて目にしたのは、元の世界のウサギのような動物だった。

ような、と言っているのはほとんど自分のしっているウサギだったが1ヶ所だけ異なる点があったからだ。「目が3つある」

額に、2つの目とは別に第3の目があったのだ。

何だろう、特別な能力でも持ったウサギなのだろうか?厨二ウサギ?

能力を知りたくても、既に開眼ウサギ(俺命名)は死んでいる。

とりあえず、初戦闘初勝利だ。

この調子で経験値を稼ぎ、少しずつ強くなってこの世界で活躍すれば、いずれきっと戻れる。

「よーし、こいやー!」

初勝利に気をよくし、思いの限り叫んでみた。なんだか清々しい気分だ。

「さて、次なる場所へ…って、ん?」

何か、周囲の草むらから気配がする。早速か…これは俺にとって好都合かもしれない。

開眼ウサギを一撃で倒した今の俺に勝てる奴なんて…結構たくさんいるだろうな、なんて冷静になった時、草むらから気配の正体が姿を現した。

開眼ウサギ×3、それに…

「あの一回り大きな開眼ウサギはひょっとして、ウサギ達のリーダーかな?」

開眼ウサギの背後には、周囲のウサギより大きな個体がじっとこちらを睨んでいた。リーダーだろう開眼ウサギには、更に周りの開眼ウサギと違い頭上に一本の角が生えていた。4匹とも、明らかな敵意のこもった視線をこちらに向けてきている。

「いやね。さっきのは言葉のあやで、なにも本当に出てこなくても」

背中を冷や汗が伝う。どう考えても俺が不利。能力の分からない開眼ウサギ×3と、ボスウサギ。

更に加えて、こちらには武器らしい武器は一切ない。逃げるか、戦うか。

「こうなりゃ覚悟を決めて戦うしかないか」

まだ周りに開眼ウサギが潜んでいないとも限らない。となれば、一か八か目の前の奴等を全部倒して前に進むのみ。

とはいえ多勢に無勢であることに変わりはない。

ここは、向こうが仕掛けてくるのに対しカウンターで一匹ずつ倒すしかないな。「となれば…逃げる!」

突然走り出した俺を追いかけて、4匹のウサギも後を追って走ってくる。

しかし個体差があるのだろう、追ってくるスピードはまちまちだ。

そのなかでも一番早く、俺の真後ろにやって来た開眼ウサギに対し、振り向き様に拳を振るう。

どむっ、と柔らかい物の感触を思い切り殴り飛ばし、また逃げる。




経験値1を獲得した!




どうやらさっき殴ったやつはあれで倒せたらしい。更に走りながら、近くに落ちていた太めの木の棒を手にした。




コボルトは木の棒を装備した!攻撃力が6になった




こんなのでもないよりましだ。木の棒を持ち、突進してきた開眼ウサギ目掛けフルスイングした。

骨が砕ける嫌な感触と共に、向かってきた開眼ウサギはすっ飛んでいった。

「ぐっ」

しかし、反対方向から突進してきていたもう一匹のウサギの体当たりをもろに受けてしまい、思わずよろめく。

「このやろう!」

しかし、なんとか踏みとどまって体当たりしてきたウサギも同様に、木の棒でフルスイングしてかっ飛ばした。




経験値2を獲得した!

技能:カウンター(習熟度1)を獲得した!




よし、これで雑魚はいなくなった。あとはリーダーのデカブツだけだ。

一角ウサギ(俺命名)は先の戦闘での俺の動きを見て警戒しているのか、中々仕掛けてこない。

俺も、一角ウサギの隙を突こうと木の棒を構えたまま向かい合うが、時間だけが過ぎていく。

「っ!」

焦れたのか、先に動いたのは一角ウサギだった。開眼ウサギを上回るスピードで接近すると、予想外のジャンプで俺の頭上の木の枝を蹴り、真っ直ぐ俺目掛けて落ちてくる。

「のわっと」

反射的に体をのけ反らせるようにして攻撃をかわしたが、地面に着地した一角ウサギは止まることなく突進してくる。

体勢を崩している状態ではかわせるはずもない。何とか直撃は避けたものの、左腕を一角ウサギの角が切り裂き、血が滴った。

駄目だ、スピードは向こうが上だ。こうなったら一か八か、カウンターであいつを倒すしかない。

だが、これまでの戦闘で俺のHPは5まで低下している。

恐らく、一撃でも受ければ死ぬ。この一撃は絶対に外せない。

一角ウサギは木の幹から幹へと強靭な脚力を活かして動き回りながら、こちらを狙っている。

「……今だ!」

一角ウサギが再度頭上から奇襲を仕掛けてきたこの瞬間に全神経を集中させる。「せいっ!」

渾身の一撃は見事一角ウサギの角に命中し、その角をへし折った。同時に木の棒も粉砕されたが、角を折られ一角ウサギは気絶したようだ。




経験値30を獲得した!

コボルトはレベルが2に上がった


種族,コボルト

名前,????

レベル2

状態,健康

HP,14/14

MP,0/0

筋力5

敏捷4

器用度8

賢さ3

耐久力4


技能、【言語理解(習熟度1)対象言語:人語、初級蛮族語】【食の探求者(習熟度1)】【カウンター(習熟度1)】


種族特徴、 長毛(耐久+1)

所持品、火炎草×2、蜂蜜草×5、一角ウサギの角

所持金、なし




「おおっ」

せっかくレベルアップしたのだからと、自身の状態を確かめてみて、思わず声を漏らしてしまった。

なんだか、一気に冒険者っぽくなったように思えて拳を握る。

とりあえず、一休みしたら森の集落に向かうとするか。

袋を開け蜂蜜草を取り出そうとした所で、先と同じように何かが近づいてくる音が聞こえてきた。

しかも、さっきのウサギの群れが近づいてきたときの音より大きい。

武器はないし、どうする?隠れるか?

こちらが悩んでいる隙に、気配の主が先に姿を現した。

「お、なんだ同族か。見ない顔だな、せっかくだから俺と来いよ」

姿を現したのは、俺と同じコボルトだった。

やけに親しげに話しかけてくるなとは思ったが、これはこれで助かる。森の集落に関する情報を教えてもらえるかもしれない。

「ありがとう。ちなみに、この近くに集落があるって聞いたんだが、知らないか?」

「ああ、集落ならこの先さ。ちょうど戻る所だし、なおさら付いてきたほうがいいぜ」

ん?ちょっと待て、何かおかしいぞ。

「今戻る所だって言ってたが、それって」

「この先に、俺達蛮族の集落があるのさ。ほら、飯もまだだろ?おっ、ピュンタラビットとグンタラビットじゃないか。こりゃご馳走だ」

「え、蛮族の集落…?」

赤毛のコボルトは何やら嬉しそうに何か口にしているが、フリーズ状態の俺には言葉の意味など理解する余裕はなかった。

「ほら、なにしてんだよ。せっかくの肉が傷んじまう前に集落に行かないと」

フリーズ状態の俺を、赤毛のコボルトが背中からぐいぐい押して強制的に進ませていく。

集落へと強制的に進ませられながら、俺は改めて自分がコボルト(蛮族)であることを再認識したのだった…。

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