いざ、魔法習得(前編)
私生活が多忙であったことと、一時期病気療養をしていた関係からだいぶ間隔が空いての投稿となってしまい、申し訳なく思っております。
これからまた連載を行っていきますのでどうぞよろしくお願いいたします。
現在多忙なため連載間隔がバラバラになるかと思いますがご了承ください
「ブレイブ、とりあえずあなたにはこれの買い出しをお願いね。その後はキースの元で戦闘訓練だから」
「…は?」
起床後のよく回らない頭で聞いたからか、アデリーナの言葉がよく理解出来なかった。
「は、じゃない!買い出しと訓練よろしくって言ったのよ」
ああ、どうやら聞き間違えた訳ではないらしい。
つまり、散々パシらせた挙げ句キースにこづき回されろ、ということか。
「断る!」
「ふーん、そう。なら仕方ないわね」
「え、あれ…?」
きっぱりと命令を拒絶すると、意外にもアデリーナはあっさりと自分の意見を引っ込めた。
これまでの印象から、アデリーナは決して自分の考えを曲げないものと思っていたのだが…
「仕方ないから、素直になってもらいましょうか」
「え…何をいびびびビビび!!」
突然にっこりと笑った彼女の意図が分からず、問い質そうとしたところで、全身を稲妻が走った。
別に何かを閃いた訳でも、衝撃的な何かがあった訳でもない。
文字通り電気が身体中を駆け抜けていったのだ。
立っていられず膝をついたところで、再度笑顔を浮かべた彼女と目があった。
「それで、素直になれそうかしら?」
アデリーナの浮かべる極上の笑みは、全身痺れてろくに身動きがとれないなんて状況でなければ、きっと見とれていただろう。
だが、まずは突如全身を電気が走った謎を解明するのが先だ。
目の前で変わらず極上の笑みを浮かべる悪魔…もといアデリーナが何かを仕掛けたのは分かっている。
「今のは、一体何だったんだ!」
だんだんと痺れが抜けてくると、すぐさま立ち上がりアデリーナを問い詰めた。
「ああ、今の?今のは恥じらうあまり本音を口に出来ないシャイなあいつに、本音を言わせるための後押しをさせる魔法ってところかしら」
「えぇー…」
いや、絶対にそんな可愛らしいものではない。
かなり凶悪なものだったと思うのだが…。
「いや、そもそも魔法ってどういうことだ」
「あら、話してなかったかしら?あなたとチビが付けている忠誠の首輪は、首輪の持ち主が魔力を流すと、言い付けを守れない従者に刺激を加えるという代物よ」
「そんなの聞いてねぇ…」
一気に脱力してしまった俺を見ながら、アデリーナはなおも笑っていた。
こいつ、人を虐めて楽しむなんてどSだな。
「見たところ、あと4回私があなたを後押しすればブレイブも楽になると思うわ」
それはつまり死ぬ、或いは気絶するってことですか。どうやら俺に選択の余地はないらしい。
「分かった、分かりました。行かせていただきます」
思いっきり不満はあったが、拒否権がない以上仕方がない。
不満げな表情のまま、俺は頷いた。
「そ。素直になってくれて嬉しいわ。ならこれが買い出し表ね」
「………」
手渡された買い物リストの数に思わず反発しそうになるも、また電流を流されるのはごめんだ。
黙って受けとると「それじゃいってらっしゃーい」と彼女に見送られながら街へと向かった。
渋々ながら買い物に向かったブレイブの背中を見送った後、アデリーナはチビが待っている隣の部屋へと入っていった。
「待たせたわね。とりあえず、これでしばらくあいつは戻ってこないわ」
「ありがとう、お姉ちゃん。でも…」
一瞬笑顔を浮かべたものの、チビは少し躊躇するような表情を見せた。
「あなたが気にすることはないわ。どのみち、ブレイブとチビにはもっと強くなってもらわないといけないって考えてたから」
「分かったよ、それじゃよろしくお願いします」
「よろしい。それじゃ私に付いてきなさい」
「はいっ!」
チビがぺこりと頭を下げると、アデリーナは満足げに頷いたあと、チビに付いてこいとジェスチャーしてから部屋を出て屋敷の外に向かった。
「ねえ、どこに行くの?」
その背中を追いかけながら質問をしてみた。
「街の西にある図書館よ。そこには数々の魔導書や魔法の心得について書かれた本もあるし、あなたの適正がある魔法を調べないといけないでしょ」
チビに対し受け答えをしながらも、歩みを止めることなくどんどん進んでいくアデリーナに付いていくために、ほとんど小走りになりながらもチビは必死に付いていった。
大通りを歩き続けること10分、目の前に大きな建物が見えてきたところでようやくアデリーナは足を止めた。
「さっ、着いたわ。それじゃ中に入るわよ」
「はあ、はあ……ち、ちょっと待って…ちょっと休憩………」
どうにか離されずに来たものの、チビは完全に息が上がってしまっており建物の壁に背を預けてへたりこんだ。
「あら?気付かなくてごめんなさい。それじゃここは人目もあるし、一先ず中に入ってから休みましょ」
「う、うん、分かったよ」
チビはどうにか立ち上がると、フラフラとアデリーナに続いて建物の中へと入った。
「うわぁ…」
途端、チビは疲れを忘れた。
無論、これまで森の中の蛮族の集落で暮らしてきたチビにとって、図書館に足を踏み入れることも、それ以前に本を目にしたのも初めてだ。
秩序正しく数えきれない程の紙の束が棚に並べられている光景を見て、チビは自身の疲労よりも好奇心のほうが勝った。
「ねえねえ、ここが図書館なの?棚に並べられているのが人間が本って呼んでる紙の束なの?ここにはどれだけの本があるの?」
「ふふっ。そう、ここが図書館で書棚に並べられているのが本。大体ここには6万冊の本が保管されているわ」
目を輝かせているチビの姿を見て微笑ましい気分になりながらも、アデリーナは丁寧にチビの説明に応えていく。
「確か魔導書関連は地下一階だったかしら…チビ、ちょっとそこで待っていて」 「うん、僕ここで待ってる」
ずっと周囲を見渡しながら、チビは頷いた。
アデリーナはというと、長テーブルの奥に座っている女性と話しているようだ。高いところにまでぎっしりと本が並べられているのをなんとか見ようと、背伸びをしたり立つ位置をかえてみたりしながら動いているうちに、気が付けば最初の位置からだいぶ移動してしまったようだ。
夢中になって歩き回っていたためどこをどう歩いてきたのかも分からない上、背の高い書棚が視界を遮りどう進めばいいかも分からない。
チビの背中を冷たい汗がつーと垂れていく。
とにかくアデリーナの元に戻らないと、と思ったチビは書棚の森をずんずん進み、赤い垂れ幕がかかった部屋に足を踏み入れた。




