表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/17

いざ、盗賊の根城へ

これまで森の集落で食べてきたのとは違う、上品な食事を味わうことなく片付けた俺は、キースに促されてチビと一緒に屋敷の外へと向かった。

「一体どこに行くんだ?」

「街の案内を兼ねての買い物だ」

やはりと言うか、キースの態度は固いままだ。

それは、恐らく仕方がないことなのだろう。

カーティスの人間に対する剥き出しの敵意を見たこともある俺からすれば、容易に信用されないのも理解出来るような気がした。

「この、中央広場から四方に伸びているのが大通りだ。大抵の買い物はここで済ませられる」

中央に設けられている噴水と銅像を中心に作られた広場から、真っ直ぐに伸びる通りを見た。

そこには様々な店が並び、多種多様な人々が買い物や会話を楽しんでいる。

「ねえお兄ちゃん、人間とは違う外見の人もいるよ」

「そうだな。あれって―」

「何だ、ドワーフやエルフが珍しいのか?」

「…もしかして、キースも蛮族語が分かるのか?」

チビとの会話に割り込むようにして入ってきたキースの言葉にやや驚いたものの、人間で蛮族語が話せる人に会ったのはアデリーナに続いて二人目だ。

二人目ともなれば、以前ほどの驚きはなかった。

「ああ。とは言っても、勉学のために蛮族語を習得したリーナと、蛮族の根拠地潜入等を行う際の必要性から習得した俺とでは、習得した意味がだいぶ違うがな」

やっぱり棘があると感じた俺は、話題を変えることにした。

「なあ、屋敷での会話でも気になってたんだが、キースとアデリーナって昔からの知り合いなのか?」

「そうだ。剣以外の才能がなく、傭兵として暴れまわっていた当時の俺に“その剣の才を以て世の中を変えてみないか”とリーナからスカウトされ、今に至る」

「へぇ、そうなのか」

確かに、ただの主従関係よりも親密な印象を受けていたが、なるほどという感じだった。

ふと、キースの強さが気になって見てみることにした。




種族,人間

名前,キース

状態,健康

HP,162/162

MP,40/40

筋力65

敏捷53

器用度40

賢さ46

耐久力56

攻撃力:95

守備力:79




………。

つ、つええぇぇぇ!

多分、カーティスより強いな、こりゃ。

そりゃアデリーナから直々にスカウトされるわけだ。「?急に立ち止まってどうした」

「あ、い、いや」

予想の斜め上をいくキースの強さに、思わず呆然としてしまっていた。

「ていうか、それだけ強ければ一人で盗賊退治出来るんじゃ?」

「何だ、リーナから詳しい説明を受けてないのか?」

素直に頷くと、はぁ、とため息をつきながらも説明をしてくれた。

「別に、今回の任務は盗賊達を殺したり拠点を殲滅するようなもんじゃない。これは言わば、政治的なポーズなんだよ」

?いまいちよくわからないな。

「つまり、俺達は何をするんだ?」

「俺達は無法を取り締まる者であることをアピールすると共に、巷で人気のある“義賊”グルノバを首領とする盗賊ギルド、夜叉猫との接触を主目的としている。戦闘は二の次だ」

???益々分からなくなってきた。

「難しい話を無理に教えたのが悪かった。お前たちは盗賊達と戦え、だが極力殺すな。これがお前たちの任務だ」

俺が理解に苦しんでいるのはキースにも伝わったのだろう。

改めて簡潔に説明してくれたが、何か馬鹿にされたようでちょっと納得がいかない。

「どのみち、お前たちの力量では盗賊達を殺すなど無理だ。むしろ殺されかねん、そう考えれば全力で戦ってちょうどいいくらいか」いちいち突っかかってくる奴だな。

まあ、カーティスも人間に対し敵意を持っていたから、人間と蛮族双方の溝は相当深いのだろう。

「話は終わりか?なら俺は買い物を済ませてくる。通称北通りと呼ばれるこの通りが一番商店が多い。お前達も買い物をしたいならこれが金だ、俺かリーナの名前を出せば店主も売買に応じるはずだ」

そう言って金の入った袋を投げて寄越すと、30分後に中央広場に集合だと伝えてキースは一人で歩いて行ってしまった。

袋を開けてみると銀貨が20枚入っていた。

とはいえ、武具はカーティスからもらったもので一応事足りているし、何よりあからさまな敵意を向けてくる相手から受け取った金を使いたくはない。

「チビは何か買いたいものはあるか?」

「うーん、ないよ。ただ、面白いからこの辺りのお店を覗いてみたい」

「分かった、じゃあ行くか」

チビの無邪気な笑顔に癒されながら、俺達はのんびりと市内見学を始めた。


「まったく、何にでも興味を示すのは良いが、よりにもよって蛮族を拾ってくるなんて。リーナは一体何を考えている!」

強引にブレイブ達と別れ単独行動を始めた途端、キースは先ほどまで押さえていた不満を爆発させていた。アデリーナの気まぐれや無茶な要求のため、キースが常に怒ったり心配したりしていることを知っている街の人々は、キースが怒っている姿も見慣れている。

しかし、いつも以上に怒っているキースの様子に不安を覚えたのか、道具屋の主人が心配そうに声をかけてきた。

「どうしたキース、いつにも増して荒れてるじゃないか。またアデリーナ様から無茶な要求でもされたのか」

「いや…どういうわけか、今度は二匹のコボルトを拾ってきたんだ」

「へぇ、コボルトかい。何にでも興味を持つアデリーナ様のことだ、特におかしなことではないだろ。実際、俺の店でも…ほら」

そう言って店主が指差した先には、商品の陳列を行う褐色のコボルトの姿があった。

実際、街中では数こそ少ないものの、コボルト達の姿は見かけることができた。それほど危険度も高くなく、従順な性格のため他の蛮族に比べて人間社会に混じって生活しているものも多かった。

「しかし、リーナの父上であるゼノン様は先の蛮族討伐戦で深手を負い、いまだ床に伏しているというのに」

「まあお前さんの気持ちは分かるが、アデリーナ様は遠くの先を見てなさるお方だ。俺達も、そしてお前さんも、今は信じて付いていくしかないんじゃないか」

道具屋の主人に諌められ、キースはいくらか冷静さを取り戻した。

確かに、ゼノンが倒れてから今日まで、アデリーナは当主代行として市民だけでなく軍からも支持されている。

この際、個人的な感情は捨てて任務に集中すること。それが第一だろう。

それに、今回の共同作戦でアデリーナが連れてきたコボルト達が信用に足るかどうか、判断してからでも遅くはない。

「…そうだな、すまない。それじゃポーションとヒートダガーをくれ」

「あいよ、毎度あり」

キースは冷静な戦士としての顔に戻ると、残りの買い物を済ませ集合場所である中央広場へと向かった。


俺達とキースが中央広場に来たのはほぼ同時だった。「なんだ、買い物はしなかったのか」

「俺達は装備に関してはこれで十分だからな。市内観光をさせてもらってたよ」

「そうか、ではこれから目的地まで向かう。お前達は俺の後に付いてこい」

キースの言葉に無言で頷くと、チビにもキースの言葉を伝えて後に従った。

大通りから入り組んだ路地へと入っていき、更に進むこと約10分、行き止まりにある小さな建物の前でキースは足を止めた。


「いいか、よく聞いてくれ。俺は正面から盗賊達の拠点に踏み込む。この真裏にもうひとつの出入口がある、お前達は俺が踏み込んだのを確認したら裏手から入れ。盗賊の出口をなくすんだ」

「分かった」

キース一人で大丈夫かと一瞬考えたが、さっき見たステータスを思いだし不安を打ち消した。

キース一人で十分すぎるほどの戦力だ、むしろ俺達が一緒にいる方が足手まといになりかねない。

俺達は俺達の出来ることをやろう、とチビと一緒に裏に回った。

今か今かと緊張しながらその時を待つ。

横を見るとチビも緊張しているらしく、小声で「怖くない、怖くない」と呟いている。

しばらくしてバタン、と力任せに扉が開く音がした。恐らく今が突入の合図だろう。

チビに目配せをすると、俺が前衛となる形で盗賊達の拠点へと踏み込んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ