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プロローグ
雲ひとつない満月の夜。
月明かりが差し込む部屋には、2つの影があった。
「この男なの?」
部屋の1番奥にある年季の入った机の上のパソコンの画面を見ながら、女は少し疑うような様子で尋ねる。
「間違いない。」
男は、小声だが力強く答える。
「そんな感じには見えないけど、期待していいのね?」
「会えば分かるさ。それに、もしだめだったら、また代わりを見つけるだけさ。」
「そうね。」
「とにかく明日だ。」
遠くから、足音が聞こえる。
おそらく見回り来た守衛のものだろう。
男がパソコンの画面を閉じると、2つの影は闇に消えた。