かげ
幼い子供たちが道路で影ふみをして遊んでいる。
電柱で蝉が鳴いているのがことさらに暑苦しい。
僕は窓辺に腰かけ、団扇であおぎながら小動物じみた子供たちを眺めている。
彼らは気づいてないのだろうか。
遊び始めてから一人増えているのに。
それは陽炎のように揺らぎながら跳ねている。
手も足も細く目がやたらと大きくて黒い。がんどうの闇の目だ。
一人の子供がそいつの影を踏んだ。とたんに影がねじれて子供の足をつかみ、そいつの口が裂けた。ワニみたいな歯がのぞいた。
僕は弄んでいた小石の一つを投げた。大きな目玉に一撃を受けたそれはギャッと鳴くと、揺らめきながら走り去った。
子供たちは無邪気に遊び続ける。
高らかに鳴いていた蝉が翅を広げて飛び立つ。
涼しい風が吹き、風鈴がリンと揺れた。