霊能一家(仮)
私の母には霊感がある。霊やオーラが見えるだとかそういうのではないが、存在を感じ取ることはできるらしい。また人から自分へと霊が乗り移る感覚も分かるという。
4つ下の妹は、「死んだひいおばあちゃんが家の仏壇のところにいる夢を見たことがある」と言っていた。父もどうやら雰囲気的なものは感じ取れるような感じがある。
ここまで来ると、私の家族は霊能一家だと、世間では称されることになるのだろう。そんな家に生まれている私も、世間一般から言えば霊感がある方なのだろう。もっとも、能力的には母が際立っているから相対的にそんなあるようには思えないのだが。
ところで私は、心霊や神やの存在を信じているかと聞かれたら首を傾げるような人間である。確実にいると断言できるほどの自信は無い。何故なら私は霊や神の存在そのものを実際に見たことは無いから。だからと言っていないとも言い切れない。前述の通り家族からしてそうだし、私自身心霊現象的な経験を何度かしてきているためだ。それは私にとっては紛れもない現実であり、現実を否定することは出来ない。まぁ第三者から見て嘘くさいと感じられるようなこともあるかもしれないが。とある漫画にあったあの言葉が、一番しっくりくるだろう。「あり得ないなんてことはあり得ない」のである。
これより先に記すのは、そんな私が実際に体験した「現実」である。
私が小学校高学年か中学生、妹が小学生の頃だったか。その頃は家族4人でよくカラオケに行っていた。行く店は地元のカラオケ屋代表Y。
田舎の店らしく、駐車場はかなり広い。一階建ての平屋造り、受付フロアはガラス張りで、ガラスの自動ドアが入口だ。駐車場からフロアが丸見え、逆もまた然り。当然ながら受付のスタッフさんは、客が店に入る前から人数の把握が可能である。
私、妹、父、母が車から降り、一団となって店に入る。それを見て、受付スタッフが人数を確認する。
「5名様ですね?」
――は?
「あ、4名様ですね?」
次の瞬間には即座に訂正され、親が手続きを済ませていく。その間私は、フロアをざっと見渡し首を傾げた。今現在、ここには私たち家族しかいない。私たちと同時に誰かが入ってきたというわけでもない。見間違いか? いやいや入口のすぐそばに駐車してあるのだ、私たちが下りるところから見えていてもおかしくない。
今一つ腑に落ちないような様子で、スタッフが手続きを終わらせ、マイクなどを渡してきた。ドリンクバーで飲み物を入れ、部屋に向かう。そのまま何事もなかったかのように、私たちはカラオケを楽しんだ。
時間が来て清算し、車で家に帰る途中、不意に母が言った。
「あの店員さん、多分見える人や」
母の話によると、私と妹の間にもう一人、子供がいたのだという。しかしその子供は流産となり、残念ながら生きて世に出ることはなかった。最初に何の躊躇いもなく5人、と言ってきたのは、その子供の霊が見えていたからだろうと。




