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83 王女流ダンジョン攻略

「俺はまだ反対だ。せめて俺が同行するべきだ。いくら人為的な疑似ダンジョンでも何があるのか分からないんだぞ?せめて経験者たる俺が同行するべきだ」


 お父様は当日になっても反対していた。しかし本音が違うのを私は見抜いている。お父様の言ってる事と表情が違うのだ。何かに期待するような顔をしている。


「本音は?」


「良い所を見せてパパカッコいいと抱き付いてほしい‼」


 どうしようも無いな。何故そんな所で意地を張るのか理解出来ない。一応お父様の凄さは信頼してるし、人間離れした実力は純粋に尊敬してる。お父様に勝てる人間なんてこの世に居ないと断言できるくらいだ。


「父上はそう言って我々の更なる実力アップを阻むのですか?甘やかす事が全てじゃありませんよ」


 流石に過保護過ぎるとお兄様が反論した。お兄様も丁度いい訓練的な感覚なのだろう。実際私が要れば毒とか怪我とかの治療は問題ないし、お兄様の実力と武器なら余程魔改造したゴーレムじゃないと追いつけないだろう。お兄様はアノンちゃんと一緒でスピードタイプのような戦い方をするのだ。


「お前こそ本音を言え‼」


「そうですか。ではさっさと帰って溜めこんだ仕事を処理してください」


 お兄様の本音が零れ、お父様の顔が引きつった。親でも容赦ないね。お兄様が優しくするのは私とお母様だけなんじゃ…。

 まあ駄々をこねるお父様は良い笑顔で鎖を持った騎士達に捕まり飛空船で強制送還されて行った。この場に残るのはメイド4人と私とお兄様。それとアノンちゃんだ。何故か師匠も参加する事になったけど。


「んじゃ、邪魔者も送り返したしさっさと攻略するか」


「師匠も帰るべき」


「お前の筋力じゃアレ持てないだろ。一々魔法使って持つのも合理的じゃねえ。俺が使ってやんよ」


 この日の為に量産した新装備だが、重量が10キロ以上あるので私には肩で構える処か、持ち上げる事も出来なかった。素の状態では5キロも重すぎるのだ。故に師匠が参加すると言うのだが、別に適当に作ったゴーレムに持たせる予定だったんだよね。

 まあ装備・人員的に死者は出ないだろう。それに怪我なら私が何とでもするし、わんこーずを全投入するから危険も少ない。ついでにダンジョンのお宝も根こそぎゲットだぜ‼と言う気分。


「何か凄い人数だよね。ダンジョンってこうやって攻略する物なの?」


「違うよアノンちゃん。私が効率的に攻略したいだけ。大丈夫オストランドの依頼もちゃんと達成するから」


 この探索にあたってオストランド側はある条件を出してきた。まずはダンジョン内の地図の作成。それと魔道書の持ち出し禁止だ。地図も別に全て記入しなくても良いから、最下層までの地図を作成して欲しいらしい。それが無いせいで管理すら出来ないのだとか。それとダンジョン内では多数のゴーレムが徘徊しててトラップも異常なまでに多いらしい。

 後は好きにして良いとの寛大な物だ。中に何が有っても魔道書以外は持って帰って良いとか最高過ぎる条件だ。ゴーレムは解体して素材として使えるし、トラップも面白そう。アリシアさんへの悪戯に参考になるかもしれない。


「姫様?悪戯等を考えてたら本気でマダムを呼びますよ?」


「何で分かったの‼」


「顔を見れば分かります」


「アリス分かり易いしね」


 ぬう、顔は無表情の筈なのに…これでは…まあ良いや。私は師匠と共に己の欲求を満たせれば良い。師匠と私は魔道書以外に古代のゴーレムの作りとか色々見れる物があるからね。


「んじゃ行くか」


「了解。わんこーず出撃~♪」


「「「「「わお~~~~ん」」」」


 禁書棚のある棚を横にスライドすると出現する入口から80匹以上の魔獣が突撃していく。彼等は斥候だ。獣の直感で罠を回避し、ゴーレムを駆逐する。何か見つけたりしたら報告してくれる。

 私達の周りには数匹の魔獣――主に影に入れる魔獣だが、彼等はクート君公認の私の親衛隊的扱いらしい。それと新種の魔獣が10匹居る。私はこの魔獣を功夫クンフーワンコと呼んでいる。体毛がどう見ても道着を着てる模様をしてるのだ。しかも額には赤いラインが入ってて鉢巻をしてるように見える。

 私はこの魔獣と戯れた時に、その向上心に驚いた。クート君曰く「強さしか興味がない」と断言する程、鍛えるのが大好きな犬達だ。面白半分に正拳突きを教えた所、二足歩行をマスターした謎の魔獣である。体の構造的に二足歩行は厳しいのだが、その負担が強くなれてる気がするらしい。今では足をプルプルさせながら高速で近づき、正拳突きをかましてくる魔獣離れした魔獣になってしまった。アーランドの騎士が驚き、混乱する程強い。


「変な魔獣飼ってるな~何で歩いてんの?凄い辛そうだけど」


「功夫ワンコは努力家だから種族の限界を超えたいらしい。あれ自発的にやってるだけだから」


「変なの」


 どうやら通路のような物が主体のダンジョンのようだ。丁寧に積み上げた石のような物で出来た通路が先まで続いている。等間隔に松明のような魔道具らしきものがあるのだが、暗い。なのでランタン型のライトの魔道具を出し、起動させる。これは使用者の周りに浮かんで周囲を照らしてくれる物だ。

 私達の前を隊列を組んで歩いてる功夫ワンコだが、暫く進むと突然風を切る音が響いた。恐らく罠が作動したのだろうと、私が警戒した瞬間功夫ワンコの一匹の姿がブレると、次の瞬間には私の横に居て、何かを弾いた。それに視線を向けるとどうやら弓矢のようだ。

 最も防御結界を私は張ってるので怪我はしないが、恐ろしい程の反射神経だ。何か間違ってる気がするし、何か捨ててはならない物を捨ててる気がするが、頼りになる。


「どうやらこの窪みを踏むと弓矢が発射されるようだな。塞いで置くか?」


「ちょっと待って」


 私は落ちてる矢を拾うと、矢じりを観察する。どうやら毒の類は無いようだが、新品のように錆一つ無い。どうやら起動してない時は【保存】の魔法が掛けられてるのだろう。

 矢じりは鉄製で、私はそれを師匠に渡す。師匠は私の言いたい事を理解し、首を縦に振った。


「開門‼土塊よ人形となり我が手足となれ【ゴーレムクリエイト】」


 地下のドックを建設した時に出た膨大な土や岩はそのまま宝物庫の何処かに収納されている。私はその土を使って3m程の土人形を作る。暫くして、宝物庫から人型のクレイゴーレムが3体ノシノシと歩いてきた。


「何かあるのか?」


「資源回収。クレイ君よろしく~」


 クレイゴーレムが窪みを躊躇いなく踏むと、矢が飛んできた。それはクレイゴーレムの肩に刺さるが、クレイゴーレムは気にせず何度も踏む。

 どうやら発射してるのは複数ある様で、30分で200本程の矢が集まった。そしてトラップは踏まれても作動しなくなった。矢が切れたのだろう。既にトラップとしての機能は無い。私は師匠と一緒に矢じりを回収する。


「資源資源~♪」


「鉱石掘るより楽だな。俺等に取ってここは宝の山だ」


「………まさか罠を資源扱いされるとは製作者も思わなかっただろうな」


「アリス‼私も手伝う」


 皆で矢じりだけ回収して後はポイ。微々たる成果だが、見つけ次第繰り返せば結構な量が手に入るのだ。

 それと今回の利益は私とアノンちゃんとお兄様の3等分だ。こういう資源も多く手に入れれば皆ウハウハだね。

 その後も落とし穴――しかも底に大量の剣山のある奴にクレイゴーレムが落ちたが、元々土塊なので直ぐに復元し、剣山も回収する。これを繰り返したら2時間程でかなりの鉄が手に入った。


「塵も積もれば山となる」


「格言だね」


 いえ~いと私とアノンちゃんはハイタッチを交わす。そう言えばメイド達が静かだな?と背後を見ると何かを諦めたような顔で歩いてた。アリシアさんは既に目だけが死人のようだ。

 さて、結構罠に集中してたので、10分程休憩だ。今の所ゴーレムの襲撃は無い。所々機能停止したゴーレムが倒れてるぐらいだ。どうやらわんこーずはしっかり殲滅してるのだろう。所々金属製のゴーレムが倒れてるので、魔玉と一緒に回収する。これは稀にミスリルゴーレムとかが混じってるので大収穫だろう。


「私ここに住みたいかも」


「こんなお宝の山を無視するとか無いな。狩り尽そうぜ‼」


「目的を忘れてないか?っとようやくお出ましのようだ」


 休憩も終わり、動き出そうとした所で、ゴーレムが走る音が響いてきた。元々無機物だから狩り残しが有ったのだろう。気配が無いので接触しないとわんこーずも気が付かないからね。しかし私は皆に指示を出して下がらせる。そして結界を張る。


「俺の出番だな。食らいやがれ‼」


 師匠がそう言うと背負ってた筒状の物を取り出して、ゴーレムに向ける。それは異世界人なら殆どの人が知ってる物だ。そうRPG‐7である。ボシュっと言う音と共に発射されると、師匠はすかさず結界内まで下がる。そして丁度師匠が結界に入ると同時に爆音が響き、辺り一帯が砂塵で何も見えなくなった。埃が凄いのと、物凄い爆音で耳が痛い。思わず皆で耳を塞いだ。


「木端微塵。新装備ロケットランチャー。これがあればもうゴーレム何て怖く無い」


「やり過ぎだ‼見なさい、粉々じゃないか」


「仕方ない。元々重装甲の物を破壊する武器だし。師匠調子はどう?」


 煙とか埃とかを風魔法で吹き飛ばすと、そこには無残にも破壊され、バラバラのゴーレムが数対倒れていた。


「最高だぜ‼これは良い代物だ。早速量産も検討しようぜ」


「弾頭が高いんだよね…魔玉使い捨てだし」


 このロケットランチャーは火薬の代わりに爆裂魔法を仕込んだ弾頭を使ってる為に値段が高い。まあそれ以外は何も問題無さそうだ。どうせ誘導弾とか作れないから命中精度何て本物とさして変わらないし。

 私は師匠と細かい改修点や使い方の模索などを話しながら進む。最も私とアノンちゃんはクート君に乗ってるので基本的に散歩気分である。アノンちゃんは活躍出来ないと不貞腐れているが、元々付いて来るのが仕事なので問題ない。それに地下に行くほどゴーレムが増えると言う話だから活躍の場も十分あるだろう。お兄様も罠を警戒しながら歩いてるだけだ。

 さて粉砕されたゴーレムの残骸を回収して突き進む。するとわんこーずが合流しだした。どうやら一階はこれで終わりのようだ。私達は更に下層へ進む階段の前で地図を作成する。互いの意見を言い合い、出来るだけ精巧な地図を作ると地下2階へ降りて行くのだった。

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