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79 王都散策

 無事?同盟が結ばれ、パーティーが開かれる事になった。しかし‼私は参加等しない。面倒な貴族にロックオンされてる気配がするので華麗に逃げよう。


「私はまだ社交界に出てないのでこういう催しには参加出来ません」


 自国で社交界に出てないのに先に他国の社交界に出るなど反逆の疑いを持たれるし、アーランドの貴族が絶対に騒ぐ。「何故自国の社交界を蔑ろにするのですか‼」と絶対に言って来る上に、「ならば今後は出ていただけるのでしょうね?」と断れなくなる。   

 なのでそれを理由に回避した。社交界デビューしてない上に他国の王族。貴族の人も不満そうだけど何も言えなかった。


「ほっほっほそれは仕方ないの。無理を通す程の事でもあるまいし将来に期待しようとするかの。

 それと今回の滞在は副王殿の要望通り彼女達に一任しておるので好きに過ごすと良い。無論要望があれば最大限応えよう」


「じゃあエイボンの魔導書を見せて欲しいのですが」


「…………稀に聞く話じゃが…我が国にはそんな代物は存在しないのじゃが」


 ここで王様が恍ける。しかしアーランドの諜報網を理解出来てる王様の顔色は悪い。見せて良い代物じゃないからね。

 大魔導士エイボン、彼は一人で大国を亡ぼした犯罪者にして英雄と呼ばれた魔法使いだ。英雄として祀るのは当時の大国に滅ぼされそうになった小国の末裔で犯罪者は帝国が言っている。大国は亡ぼされた後に支援と称して当時中堅国の帝国に吸収されたからね。

 彼は多くの魔法を編み出した。彼は時として一人では無く複数存在した。彼を魔王と呼ばずに誰を魔王と呼ぶのか等、言いたい放題言われてる人でもある。彼の残した物は唯一つエイボンの魔導書だけだ。それ以外は死期を悟った彼が自分自身と共に燃やしてしまったので何も残って無い。ついでにお墓も隠蔽の為に弟子が量産したので大陸中に数百存在してどれが本物か分からない。掘り起こすと全部誰かの遺骨が入ってるほど徹底してる。噂では弟子はその後墓守の一族として、本物の墓を守護してるらしい。テンプレ通りなら墓の中に杖とか他の魔導書でも入ってるのだろう。

 因みに精霊曰く「魔王では無い人間は辞めてたけど」との事。


「…」


 じーっと王様を見る。私の視線は全てを語っている。ある事は把握してるのだ。


「……………儂の負けじゃな…確かに存在する。しかし生半可の者には読めぬのだ。彼の血統にのみ伝わる暗号で書かれておる」


「そこは解読するので大丈夫です。」


 解読すら得意分野ですが何か?まあ大魔導士の魔導書だから性悪のトラップが入ってるのは確実だろうけど、そこは何も言わない。言うと周りに止められるからね。


「ハア、分かった場所は図書館の禁書棚の更に地下。最下層にある祭壇じゃ。そこにあるらしい。儂も本物としか聞いとらんし、ゴーレムばかりでたどり着いた者も今の所は居らん。数代前の国王がエイボンの子孫から託されたらしく、それ以降の資料も何も残っておらん。最悪死ぬ事になるが、全部自己責任で頼む」


「分かりました」


「姫様‼何故そこまで求めるのですか?何時もみたいに作れば良いじゃないですか。危険を犯してまで手に入れる程の物では…」


「彼の魔法に興味がある。特に分身系の魔法…これは私の知識には無い魔法。作るのに時間が掛かり過ぎる。わんこーずを動員してローラー作戦を行う」


 堂々と迷路を攻略する必要は無い。私のペットが道を探す。


「グス…何で…何で何時も……私は何時も王女として相応しくなって貰おうとしてるだけなのに…」


 ストレスが限界そうだ。しかしエイボンの魔導書はどうしても読みたい。分身系の魔法。ある意味魔法の極意だ。未だに誰も使えない使い方の伝わって無い魔法――実に興味深い‼私の中の天使と悪魔が手を取り合って「そこを攻略して英知を手に入れるべし」と声高く叫んでる。

 取りあえず向こう側も色々と手続きがあるので後日と言う事になった。当然アリシアさんから家族に危険性をバラされて大説得を受けたが、お兄様が同行すると言う事で話が付いた。私一人よりはマシだしお兄様は地下を私が破壊しないように護衛兼監視だとか…王太子が護衛って…責任重大。


「私もそれくらいは出来ないと王族を名乗れないからね。それにアリスの名前に隠れ気味なのでここらで大きい事をしてみたくなった」


「お兄様も十分活躍してると思う…主に政治の黒い部分で」


 自業自得だろうけど多くの貴族を泣かせる暴君の卵なお兄様は何を目指してるのだろう。国の為なら家族以外を平気で罠にハメると評判のお兄様だ。因みにこれからパーティーに向かうのだろう。凄い悪い笑顔をしている。一応ここは他国だと言う事を…人の事は言えないか。



 次の日


「お久ーー‼」


「むぎゅう」


 お兄様達がパーティーで警備の関係上昨日は大人しく宿で休んだ。寮は今回は使えないらしい。王都がかなり壊れて貴族の子弟や令嬢も一時的に寮で住んでるので今は貸出出来ないとの事だ。

 そして朝になり復活したヘリオス(執事服)とメイドーズを率いてアノンちゃん達と寮の前で合流すると、行き成りアノンちゃんに抱き付かれた…と言うか持ち上げられた。本当に同年代?私じゃ1ミリも持ち上げれないよ。


「ちょっとアノン‼行き成り抱き付くとか無礼過ぎよ」


「気にしない気にしない。アリスも気にしてないし…って御免御免苦しかったね」


「ケホ…死ぬかと思った。まあ大概の無礼は気にしないよ。私達はそこら辺を気にする仲じゃないし。それより今日はお供が多いけど許してね。どうしても護衛が必要だって…どうせ何時もみたいに何処かに隠れてる人も居るだろうけど」


「吾輩そこの影に隠れてる者共は主の敵かと思ってたが護衛だったか。危うく殺すところじゃった」


 ヘリオスが不気味な事を言うが、どうやら隠れてる護衛を既に察知して警戒してたようだ。クート君?匂いを覚えてるらしく害意が無ければ基本放置…最も何か気になってるのか【眷属召喚】して私の影に魔獣を隠してる。

 【眷属召喚】は高位の魔物…しかも群れを率いるリーダーが使う固有魔法で自分の群れの仲間を距離を無視して召喚する魔法だ。これでアーランド国内に眷属を置いてきても普通に呼び出せるらしい。何気に凄いので私も解析中。将来はクート君を呼び出したりヘリオスも呼び出せるようになるだろう。


「それよりも銀月のあれ持ってきたよ。店長さんが気合い入れて凄いの作ってくれたからオヤツタイムは楽しみにしててね」


 アノンちゃんと約束したケーキは銀月に依頼して作って貰った。ウエディングケーキみたいに凄い大きいのを送られたが、残りはお土産に出来るから問題ないだろう。クート君は雑食だし、基本的に食べれない物は無いので甘い物も好物だ。


「おおおおケーキか‼アリスのお菓子はハズレが無いから楽しみだ」


「良いの?結構高いんじゃ…」


「……甘い物には勝てない」


「大丈夫。だって今回は店長さんからタダで貰ったから。感想が欲しいんだって。出来は最高だって言ってた」


 味見の延長らしく、感想を言ってくれればそれだけでお代は要らないそうだ。

 

 取りあえず無事営業してるお菓子屋さんや、工芸店等をアノンちゃんの案内で回る。ケーナちゃんやシャロンちゃんは何時も馬車で移動するから王都の地理には疎いらしい。しかしアノンちゃんは何故か冒険者(Eランク)としても活動してるらしく、王都内では馬車を使わないらしい。どうやらシュギョーしてるらしい。

 なので地理に明るいアノンちゃんが王都の色々な場所を紹介してくれてると言う訳だ。

 確かにスタンビートの傷跡でボロボロの所も多いが、活気がある。この国はまだ大丈夫なのだろう。住んでる人が生き生きしてるね。そう言う所はアーランドの国民に似てるかも知れない…最も内面は変わり者ばかりだけど。

 それとアノンちゃん達はメイドーズの3人とも意外と仲良くなった。私相手に地位とか関係ない関係なので身分は平民でも平気らしい。日々辛い生活をしてた彼女達に甘味を…餌付けしてる。彼女達も相当甘味に飢えてたので食べれるなら何時でもカモン状態なのでひな鳥のように貰ってた。


「すげーこれ私だって食べきれないよ」


「ちょっとあげすぎよ。後でケーキ食べれなくなるでしょう」


 ほいほいお菓子を上げるアノンちゃんをケーナちゃんが窘める。


「大丈夫。今日は朝ごはん抜いてきた。お菓子は至高」


「アーランドに保護されて良かった。元の世界とかもうどうでも良い」


「戻ても誰も待ってないしね」


 ここで私のメイドーズ3人を紹介しよう。彼女達は地球の日本人。私の知識や知ってる年代などを話し合った結果私の前世と同じ時代の日本から来たそうだ。

 ただし、珍しい事に同じ場所、つまりは児童養護施設で暮らした所を行き成り召喚されたららしい。しかもその養護施設は裏で悪い組織と繋がってて売られる寸前だったとか。ある意味運がいいのか悪いのか判断に困る。3人だ。


 全員黒髪だが、ボサボサと言うよりトゲトゲ?ふさーって肩くらいで膨らんでるのが佐々良涼子ささら りょうこちゃん11歳。能力は【探査】らしい。運動は3人の中で一番苦手だとか。

 2人目が黒髪を肩まで伸ばした所謂おかっぱ?の髪型の四宮美羽しのみや みうで、ちょっと髪の長さが違い、切れ目気味の四宮紫苑しのみや しおんこの子達は2卵性の双子らしい。姉の美羽ちゃんが【転移】で妹の紫苑ちゃんが【魔法殺し】各自異能を持った異世界人だ。

 しかし彼女達が今では軍籍には入って無い。本人達が戦うのが苦手だと言うのでメイドとしてこの世界で生きていくそうだ。何気に給金が良いらしい。まだ見習いだから安いと思うんだけど、衣食住は全て国が負担してるから給金全部がお小遣いなのだとか。

 普通なら実家に仕送りをするものだけど、元の世界でもこの世界でも天涯孤独なのでお菓子散策と称してアーランドの王都を散策したりしてるらしい。この世界での経験から各自武器は持ち歩いてるけどね。皆ショートソードを使うらしい。


「しっかし異世界人がメイドってのも珍しいよね」


「保護しただけ。本人達が争い事を好まないならアーランドは強要しない。無理に戦わせても信用出来ない」


 戦いたくない人は技能があろうと戦場には出さないのがアーランド流ですが何か?力には意志が無ければ唯の暴力だ。故にその責任を持てぬ者は戦場に出る資格なし3代目国王記より。

 まあそんな感じで彼女達は一応非戦闘民だ。最も自衛手段を教え込んでるらしいけど。

 そんな感じでお店を梯子し続ける。私達は後のケーキタイムがあるので小さいのを頼んでるが、彼女達はどんどん食べる身体能力の向上で食欲も向上したらしい。まんまる福狸になっても知らないよ?



「王女だな?」


 それは最後のお店を出て直ぐの事だった。私達はまだ見ぬケーキに胸を膨らませながら宿で至福の時間を楽しもうとしてたのに…行き成り黒服達に囲まれた。最もそれと同時に何処からかアーランド兵が出てきて私達を護る為に前後を固める。


「またなの…また…いい加減にして欲しい…貴方達みたいに暇人じゃないんだから放っておいてほしい」


「黙って我等と共に来い‼」


 私の機嫌は最高に悪くなった。ついでに横に居るアノンちゃんの殺気が凄い。


「私のケーキの為に錆となれ」


 どうやらまだ見ぬケーキは彼女を暗黒面に堕としてしまったらしい。取りあえず残りの皆に結界を掛けようとした瞬間彼等の横にいつの間にか居た男がフードを取った…そしてその瞳が妖しく光っていた。

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