77 対中央同盟①
寝坊しましたすみません
飛空船が建造されて3か月が経った。現在アーランドは新たに建造された中型日飛空船を4隻・大型飛空船を2隻保有している。そしてこれから2隻がオストランドに輸出される。最初は国内開発に回したいけど、予算不足で一定の資金を欲したのだ。
オストランド側は復興で予算を結構使ってるけど、長年財政が安定してるので、王都が少し壊れて、国内が少し荒れた程度なら何とでもなるくらいは国庫も一杯らしい。だから復興を早く終わらせる為に飛空船を買う事を決めたらしい。当然正式に引き渡すし、同盟も結ばれる。
同盟内容は国境を明確に決める。元々国境争い何か無いオストランドだけど、将来は分からないので問題になる前に明確にしておくそうだ。
それと相互防衛条約。互いが互いの国を防衛する協力関係の構築である。これは今後の戦乱にオストランドが自国防衛不能と認めた事になるが、これもアーランドにも利益はある。
アーランドやオストランドが援軍を派遣した場合は土地を要求せず、お金で解決すると言う条約でもある。
それと種族差別禁止条約。これは認めないと絶対にアーランドは条約を結ばないと確固とした態度で宣言してる。この条約の元、違法に捕まった奴隷は解放する義務が発生し、違反した場合は重罰に処すと決められた。犯罪奴隷は例外に入ってるけどね。
さて今日は大泣きする空軍を宥めて出港する日だ。大泣きの理由は飛空船が欲しかったのに売られるからである。ちゃんと今後も建造されるからと宥めたらあっさり泣き止んだけど、長年の不憫な生活は彼等の心を砕いてたらしい。基本的に暗い軍隊になってた。
取りあえず空軍の顔役になるんだから笑顔で居る事を厳命している。彼等は引き渡す飛空船の操縦を行い、引き渡し会場まで安全に飛空船を持っていくのが今回の仕事だ。これも初めての大きい仕事だと大泣きしてた。私を迎えに来た時は空軍は全然だったし、飛空船墜落してたからね。
「父上何故アリスが一緒じゃないのですか‼私もあれに乗りたいです」
「アリスティアとアリシアの2人乗りなんだから仕方ないだろう。俺も乗りたい‼」
新型飛空船2隻もお披露目件自慢で持っていく事になってるのだが、お父様とお兄様は新型に乗る。私?完成した飛行機の試験飛行だからそっちを操縦していくよ。7000mくらいの高度で800キロは出せる化け物戦闘機が完成した。武装は両翼に30ミリ機関銃を片翼2丁の計4丁積んでる。大抵の物は倒せるね。今回は刺激するといけないから下ろしたけど。
一応…と言うかこの戦闘機2機あるんだよね。単座と複座の2機存在する。元々私一人で乗る予定が何故かアリシアさんが乗ると言って聞かないので後ろを無理に開けた物だ。当然後ろには通信機しかない。携帯をセットすると機内通信や他の携帯に連絡出来る物を積んでる。操縦や銃座は無い。唯の荷物である。
「私は先に行く。エンジン起動。浮遊起動」
ふわりと浮かぶ戦闘機(以降マーク1と名称)。これは飛空船と同じく浮遊する事で滑走路無しで離陸出来る。ちょっと時代を先取りし過ぎたが、整地した滑走路等この世界には存在しないので仕方ない。無駄な魔力消費だと思うが、大型の魔玉と魔力保管用の大型魔晶石を積んでるから問題ないだろう。最悪の場合はパイロットの魔力を使って飛べる。私の魔力量なら魔玉無しでもオストランドまでは平気で飛べるのだ。
数分後
「きゃああああああああああああああ」
アリシアさんの叫び声が機内に響いていた。ちょっと五月蠅いから空中宙返りとか無理やり木の葉落とししただけじゃん。
刺激が強すぎたのだろう暫く機内通信に叫び声が響いた。クート君はコックピットに子犬モードで乗ってるけど大はしゃぎだよ?少しは見習おうね。
『主よ空が…空があんなに早く…おおこれが空の世界なのか‼』
凄い尻尾を振って外を見てる。最初に絶対に触っちゃいけない所は説明してるし、無理な動きとかする時は膝の上にくっついてるから邪魔にはならない。
空に憧れる狼型の魔獣は今日も楽しそうだ。
「アリシアさん五月蠅い。脱出装置起動して空にパージするよ?」
「すみません止めてください。と言うかそんなの積んでるんですか‼もしかして私を亡き者にする為に…」
「脱出用だよ‼ちゃんとパラシュートついてるよ。だからベルトだけは外さないでね?それともお兄様と変わる?新型になら一応着艦出来るし」
「お・・・・お願いします」
「じゃあ30分位全力で飛ばすから舌噛まないでね?クート君は凄いGが来るから膝に掴まっててね」
一気にメーターを振り切るまで加速させる。エンジンが轟音を上げてるけど、不調は無いみたい。少しほっとした。最初のエンジンは爆散したからね。
一気に来るGに耐えながら…魔法でどうにでもなるけどね。魔法最高。物理法則さようなら。私はイヤホンをオフにして叫び声をカットすると空の旅を楽しんだ。
一回程着艦に失敗しかけたけど無事着艦成功。飛空船の甲板は何も無いけど、風除けの魔法で空気抵抗をほぼ0にしてるから落ちる事は無い。そこに垂直着陸して降りると…アリシアさんは気絶していた。
全くだらしないな~と次乗ってみると出迎えに来たメイド3人衆に聞いてみると全員首を横に振った。何だ飛行機とか懐かしい物なのに乗りたくないんだ。カッコいいのに。
「アリシアが気絶してるのを見るのは久しぶりだな」
飛行帽を取ってクート君と同じようにブルブルと顔を振ってたらお父様とお兄様が来た。若干顔色が悪いけどどうかしたのかな?
「どうだったアリス。私が乗っても大丈夫か?いやアリシアが気絶してるのなら是非乗せてくれ」
アリシアさんは担架で運ばれたが、お兄様が乗りたいと言い出したので乗せたんだけど30分程で気絶して医務室に送られた。お父様は何とか無事だったけど、若干ふら付いてる。
「ふんふん、やっぱり200時間程が限界かな?せめてオーバーホールは500時間まで伸ばさないと実用化は無しだね。少しづつ治金技術を上げて精度と強度を上げるしかないね。今度は別の金属でエンジンを作って実験しよう」
残り2時間程で王都に着くので私は甲板上でエンジンのカバーを開けて整備をしてる。
「やっぱり耐熱が甘いんだろ。となると新しい合金を作るしかねえな」
「何で乗ってるの師匠?」
「どうせ面倒事を起こすだろうから潜入してきたぜ」
また密出国か…機嫌を損ねると面倒だからって処罰出来ないと噂で聞いた事がある。有能だからある程度(限度はある)は見逃されてるらしい。
しかし私がトラブルメーカーだって?そんな事は無い。きっとアリシアさんだろう。私は巻き込まれてるだけなんだよ?私が原因…認める事は断じて出来ない‼
「向こうにスパイダー置いてきたのに、あっちで遊ぶんじゃなかったの?」
「それはそれで良いんだが、やっぱり嬢ちゃんとこういうのを弄ってる方がしょうに合ってるんだよな。何気に最先端を行ってるしな」
「スパイダー置いてきたら本当に何かあった時にどうすんの‼まあ今度ばかりは何も無いと思うけど…あってもお父様居るし」
「だな。実際に何かあっても坊主がどうにかするだろ。俺は嬢ちゃんの手伝い兼休暇だ」
置いてきたのは師匠の改造癖に火を付ける為だったのに…まあ最初とは別物に進化してるからあれ以上改造されると魔力が足りなくなるんだけどね。魔導炉は高いし、製造に時間が掛かる上、他に搭載予定なのでそっちには回せない。現在基礎研究中だし。
そのまま私達は復活したアリシアさんに捕まるまで改造兼整備を続けるのだった。
「ですから何でこれに乗って行くんですか‼」
「カッコいいから‼」
良いじゃん。どうせ機密指定されてないし(家族と事情を知らない空軍以外に存在を知らない為)これを持って行ってアノンちゃん達と空の散歩にしゃれ込むんだ。
大丈夫。アリシアさんの時みたいな無理な機動をさせる気は無いから。あれは性能チェックとアリシアさんの反応を楽しんでただけだし。
取りあえずインパクトが欲しいのだ。どうやらオストランド側にも帝国と通じてる連中が居るらしいからね。アーランドと敵対する意志をへし折る為に見た事も無い物を普通に作れると言う事を見せつけるのも良いだろう。あわよくば良からぬ事を考えてる連中への牽制になれば良い。私は友達と遊ぶ為に持ってきただけだけど。
「主よ我もそれを操縦したいぞ。いや我の眷属もそれを望む筈だ。是非我等の為に量産を…」
「その肉球でどうやって動かすの?」
「そこは主のおーばーてくのろじーとやらで何とかして欲しい。我等は空を自由に飛びたいのだ‼」
このワンコ…これがどれだけ作るのがめんどくさいか知ってるのかな?碌な設備も技術も無いこの世界で作れる国何てドワーフを大量に有するアーランドだけだし、作れるのはドワーフでも一部の人達なんだよ?私とグランツさんなら作れるけどね。
まあ隣の師匠は何故か困難に挑むと言う本心だから超乗り気だし…設計するの私なんだけど……。
「良いじゃねえか。技術は積み重ねだ。こういう無駄と言える事でも積み重ねは別の所で役にたつってもんだ。早速設計しろ」
「無茶言わないで。魔獣を乗せる飛行機の設計図何て私の頭の中には無い。普通は人が操縦する物として作られてるんだから‼それに操縦席を私仕様にするのも結構手間取ったんだから」
向こうの世界に存在するなら兎も角、ワンコが操縦する飛行機何て聞いた事も無いよ。
「ほほう。俺の弟子がそんな甘い事を言い出すとはないい度胸だ」
「わわわわわわ分かった作るから‼作るから」
拳をポキポキさせながら近づいてくる師匠の威圧に負けてクート君専用機を作る事を確約された。師事する人間違ったかな?
「俺の出来る所なら手伝ってやる。エンジンも俺一人で作れるしな。嬢ちゃんは設計とそれ用の魔道具でも作れば良いぜ」
「絶対に手伝わないからね‼グス…いいもん凄いの作っちゃうもん…」
師匠が困るくらい凄いの作ってやる…泣きながら私に手伝ってくださいと懇願するくらいの化け物作ってやる。
取りえず操作系統から変えないと…わんこーずは舵持てないからな…どうしよう…と言うか何で私のペットがパイロットに…めんどくさいな~早く図書館で人手不足を打開出来る魔法を覚えないと。
私の調べ…と言うかアーランドの諜報部からの報告では禁書棚に私の望む魔道書がある可能性があると言う。最も門外不出で、存在する事も認めて無い。
それに過去の大魔導士本人が書いた魔道書だから、ただで見せてくれる保証も無いけど。
兎に角人手不足、それも私と同程度か向こうの技術者並の技術を持った人が足りない。全部私がやると皆怒るし。
だから目ぼしい魔法を歴史書で探してたら丁度いい魔法を使う大魔導士が居たらしい。一人で一国を亡ぼし、異世界人には魔王とも思える魔法を保有してた大魔導士がね。彼の魔導書にはそれが乗ってる筈だ。
アリスの開発速度は知ってる技術の再現が多いので異常に早いです。
技術的に作れない物は気軽に魔法技術で代用するので作れない物の方が意外と少ないもはや魔法科学の領域に入ってます




