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75 再会と新しい家族

 私は会議場を出ると、外で待機してたアリシアさんと合流する。そして王都の外に向かう。クート君が帰って来たのだ。飼い主たる私自ら迎えに行って忘れてた事を謝らないといけない。


「魔獣の群れと間違われて討伐隊を送られるって…ぷふ‼」


「それだけ凄いんだよ‼全部私のペットだ」


 私は動物が好きだ。だけど牙を向ける獣に手を差し伸べる程博愛主義者でも無い。それと、私のお母様が動物嫌いだから猫とか鳥とか飼えなかったのだ。しかし私は魔法使い。使い魔が100以上居てもおかしくは無い筈だ。魔獣でもモフモフしてればそれはそれで味があるし、クート君は賢いから好き。何で忘れたのか自己嫌悪するほどにね。


「ごめんねクート君」


 ダッシュでこっちに掛けてきたクート君に抱き付く。凄い、今のアリシアさんに劣らない毛並だ。男子三日会わざれば刮目して見よと言うが、本当だ。体内の魔力も増大してる。これは相当暴れてきたな。背後の魔獣達も前に見た時よりも遥かに歴戦の魔獣と化してる。


「次は我を忘れるなよ。我は主の使い魔だ」


 多くの言葉は無い。何時も繋がってるし、帰って来るまでの話も既に聞いてる。帰ってくるまでに多くの魔物を駆逐して快進撃で帰って来たクート君とその眷属達は兎に角凄い魔獣の群れになったのだ。

 私はクート君の眷属に対して命令権も無いし、魂の繋がりも無い。でも彼等は私の意思を尊重してくれるらしい。人は襲わない。私の許可なく暴れない。それがクート君の群れでの絶対的なルールらしい。


「我の眷属が主に迷惑をかけるなら我に言うと良い。そんな奴は我が群れに必要ない」


 恐ろしい事だが、魔物の群れはトップの意思次第では死兵になる事もある。人間とは考え方が違う。群れのトップが黒と言えばそれが絶対だ。だからこの魔獣達は大丈夫だろう。

 横についてきた騎士に対しても全く動じて無い。普通なら人間を見たら速攻で攻撃してくるからね。クート君はそれだけの支配力を持ってるのだろう。流石私のペットだ。


「我は使い魔だ」


 反論は認めない。クート君は『家族』の一員だ。私はクート君の眷属も家族と認める。

 しかし、これだけの魔獣を王都に入れると…混乱した市民に魔獣が殺されかねない。アーランドの市民は普通じゃない。ゴブリンが出たら逃げるでなく、そこら辺の棒きれや石でも平気で倒す。市民から普通じゃない国だ。


「小さくなれる?」


「無論教え込んだ」


 流石クート君。私はこの2か月忙しかったがクート君との会話でこの変化とも言える現象の意味を知った。これは一種の擬態だ。実力ある魔獣は狩りも一苦労だ。何故なら餌になる魔物や動物はクート君が一定範囲内に入っただけでその威圧感を察知して全力で逃げる。力ある魔獣は実力を隠さなければならない。だから自分を偽る為にこの魔法を覚えるのだろう。

 弱いから擬態するのではない。強すぎるから擬態するのだ。当然クート君の群れの魔獣も一定以上の強さを持ってる。だから出来るのでは?と思ったが本当に成功したらしい。

 ただ、どうしても覚えれない魔獣が数匹居たらしいが、その魔獣の末路は知らない。多分クート君の群れが銜えてる布袋のような物に入れられてる大量の魔玉の一つなのだろう。私の群れじゃないから私がどうこう言える事じゃないね。私がクート君の決定に文句を言えば群れの存続に関わるから、どうしても譲れない時以外は基本的に傍観かな。

 取りあえずクート君以外が子犬フォームにチェンジして私はクート君の上に乗る。うん、やはりここが私の定位置だね。


「クート君しゅっぱーつ」


「がう」


 超ご機嫌で城に戻る。途中ぎょ!とした顔の市民達に出くわしたが、私が魔獣を飼ってる事は別に秘密では無かったので、やっと帰って来たのかと混乱は起きなかった。


「わ、わ、わんこの大行進♪」


 群れの魔獣も国民を威圧しないように気を付けてるし、子供が行き成り抱き付いてきても反撃もしない。ちゃんと理解出来てて嬉しいよ。ただ一部の人達には全部魔獣だってバレてるね。本当にこの国の人は何者なんだろう?まあまた悪戯したな?ってこっち見て笑ってるけどね。

 しかしクート君も便利な魔獣とか珍しい魔獣とか集めてきたね。今私の周で普通に歩いてるのが84匹。全部で106匹居るのだが、残りの魔獣は私の影の中で待機してたり、特殊能力を持ってる魔獣が結構いる。例えば一時的に自分の体を電気に変換する虎っぽい新種の魔獣とか居るし、影の中に入れる魔獣も居る。私でも見え難い幻術を纏って空を歩いてるのも居るよ。本当に全部Bランクなのかな?クート君以外は私にも実力を隠してるから絶対にBランクの魔獣では無いだろう。全体平均がBなだけな気がしてきたが、後で撫でさせて貰う事で見逃そう。強いのなら別に悪い事じゃない。


「姫様‼何処に行ってたのですか。勝手に出歩かれては困ります」


 城の門の前に着くと、半泣きの騎士達が現れた。何故に?護衛はアリシアさん居るし、今の魔獣に囲まれた私を誘拐するなんて異世界人でも苦戦するよ。そして苦戦してる間に私はクート君に乗って逃げれる。防衛戦力は過剰気味だけど。


「直ぐに王妃様の御部屋へ向かってください。王妃様がご懐妊です。姫様に御兄弟が出来たのですよ」


「何ですと‼クート君GO。魔獣は練兵場で待機ね。アリシアさん皆のご飯の手配をお願い」


「分かりました…そら駄犬共尻尾を振りながら這うように私に着いてきなさい」


「「「「「がるううううう」」」」


 一斉に牙を剥く魔獣達だが、クート君が一声吠えると尻尾を垂れて這うようにアリシアさんに付いて行った。

 シュールだな。


「あれは我が眷属モドキだと教えるのを忘れていた」


「アリシアさんは私の騎士。いわばクート君の同僚だよ」


「獣の因子の薄いあ奴と同格など耐えられん」


 仲悪いな~傷ついちゃうな~とペシペシと頭を叩くが、譲れないらしい。そのまま城の中を歩いて行く。若干のフォルムチェンジをしたクート君だけど、城の皆は知ってるから特に問題ない。と言うか私が乗ってるから何も問題ない。

 本当ならお父様の如くダッシュで向かいたいが、お母様は妊婦だから驚かせる訳にはいかない。もし何かあったら絶望レベルだよ。逸る気持ちを抑えて私が歩く程度のスピードでクート君が進んでいく。え?私が歩かないのかって?そりゃ私が自分で歩いたらお父様の如く突撃するからね。クート君の上で素数を数えてる。現在2の5788万5161乗-1まで行ったね。このまま思考を続けようとしたが、部屋に着いた。部屋の前には騎士が重装備で警備してる。これは最重要レベルの警備だね。武器も防具も魔武具だし。

 私は部屋の前でクート君から下りるとノックをする。クート君は警備だ。もし危険な人が武器を持ってきたら食べて良いと命令した所で中から入って良いと返答が来た。私はメイドが中からドアを開ける前に自分で開ける。


「お行儀が悪いわよ。まあドラコみたいにドアを蹴破ってこなかっただけマシかしら?」


「流石に今回はしない。破片がお母様に当たったら危ないし」


 中にはネグリジュでベット寝てる?いや毛布は掛けてるけど座ってるお母様が居た。

 私だって少しは自制心を持ってる。取りあえずお父様はまだっぽいのでドアに30枚の障壁を張っておく。これで一撃で壊されまい。それとお母様の周りにも結界を張る。これはお父様がドアを結界毎破壊した時の対策だ。念の為に防音――と言っても大きい音を普通程度に抑えるくらい。も付与しておく。これで多分大丈夫だろう。


「そう。それは良かったわ。もしこのままドラコに似るようだったらマダムの元に2年くらい修業に出そうかと思ってたのよ」


「………」


 危なかった。私の少ない理性が人生最大の危機を回避してくれたようだ。今後は大人しく…手遅れだね。お母様を怒らせないようにしよう。所詮私のような小娘はお母様に反逆等出来ないのだ。


「そ、それより大丈夫なの?お母様だってもう3あだだだだだ!」

 

 年齢の事を言おうとしたら頭を鷲掴みにされた。形が変わる‼

 しかし、お母様もそろそろ40に近くなる。高齢出産だ。医療が魔法頼りのこの世界では母子共に危険なのだ。無論お母様は産む気満々だから止める気は無い。私は私で必要な物を作っておかないと。最悪帝王切開も考えてる。一応それの知識もあるから出来なくはないが、出来ればやりたくない。経験が無いのだ。なので治療魔法の方ももっと練習しよう。丁度教会の手伝いとか出来るから治療院にでも行って練習だ。今でも十分だけど精度を上げるには繰り返しが必要だからね。


「貴女嫌味を言ってるの?お母さんもいい加減怒るわよ?」


「私の知識によると35歳以上の出産は危険が付き物なの。だから心配になるの。でも私にお任せあれだよ、性別も調べられるし、異常が無いかも見れるから問題ないよ。お母様は暫く大人しくしてて」


「うう、娘に叱られるとは…大きくなったわね?」


「何で疑問形?」


 取りあえずお母様の杖は没収。ベット脇に掛けておく。それに栄養のある物を作って貰わないと…作るか…料理人の説得から始める事になるからレシピを教えておこう。私が作るより美味しい物になるだろう。

 私がお母様の周りでグルグル動いてると、結界が破砕される音が響いた。しかし、それは驚くほどでは無い音だ。普段の爆音じゃない。しかも壊された結界は26枚。一撃は耐えたか…お父様は人間に戻って欲しいよ。


「ぐううう何故壊せぬ‼」


「ちちち父上!?母上にもしもの事があったらどうするのですか。これはアリスの結界ですよ。単に先読みされただけです」


ゴロゴロと転がる音がする。どうやら結界の硬さに足を痛めたらしい。


「普通に入らないなら絶対に入れない」


 壊された結界を再度展開して、更に強度も上げる。ドアを粉砕するのなら絶対にここには入れないと宣言するように。


「ハイ普通に入るので結界消してください」


 少し落ち着いたようなので結界を解除。2人が入ると再度展開する。これでここは安全だ。今後はお母様に結界の魔道具を山ほど持たせよう。


「だだだ大丈夫なのか‼」


「3度目よ、もう慣れたわ」


 お父様は部屋に入るとお母様に抱き付いた。一応手加減をして、お母様の負担にならない程度の力で抱きしめてる。もし手加減が無ければ窓から外に捨てるけど。


「…アリス、私は思うのだが…」


 お兄様がお母様を見ながら呟く。どうやら私と同じ結論に至ったようだ。


「うん。やっぱり10年も待てないね」


「そうだな。出来ればあの子が生まれるまでに全てを終わらせたいのだが…妹だと良いな」


「弟‼私は弟が良い。おねえちゃんっこに育てるの」


 っは‼っとした顔でこちらを見るお兄様。どうやら私達は相容れない敵のようだ。


「待つんだ。妹の方が良いだろう。一緒に買い物にも行けるんだぞ?可愛いぞ?柔らかいんだぞ」


「私はあの子の自慢の姉になりたい。何かあの子の為に偉業を成したい」


 弟だと良いな。無論妹でも可愛がる。しかしお兄様は妹の方が良いと何度も呟いてる。まあお兄様も弟ならそれはそれで可愛がるから結局どっちでも変わらない。

 さて問題だが、新しい家族の為に何か凄い事をしたくなった。何を作れば誇れる姉だと将来言ってくれるだろうか?


「そうだ‼あの子の為に空飛ぶ宮殿と建造しよう‼」


「おいヤメロ‼落ち着けアリス。何故そんな結論になったんだ」


「大丈夫‼ちゃんと盗られないように防衛システムとか積むから」


 私の全技術を投入して数千年は飛び続けるラピ○タを作ってみせる。うん誕生祝には丁度良いだろう。素晴らしいだろう。きっと将来お姉さま素敵って褒めてくれる。私のやる気は限界突破したのだ。おー!っと両手を上げる私。既に疲れは吹き飛んだ。


「父上、母上。何故かアリスが暴走しだしました。新しい家族の為に空に宮殿を作ると言っています止めてください‼」


「素晴らしいぞアリスティア。そうだ、それくらいしなぐおおおおおおお」


「落ち着きなさいドラコ。アリスちゃんちょっとお話しましょうか?やっぱり教育が足りなかったのね」


「NO―――‼」


 2時間後私は皆にごめんなさいをしていた。何があったって?お母様は妊娠しててもアグレッシブだったとしか語らない。


「……ぐす…私だってお祝い作りたいのに…うわーん‼」


「お祝いで作る物じゃ無いでしょう?もっと軽めの物で良いのよ」


「分かったペンダントにする」


 ペンダント位なら良いと許可された。よし全ての魔法を使える万能ペンダントにしよう。それと各種隠し機能を搭載して、巨大ゴーレムとか召喚できるようにしてみよう。

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