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69 忘れ物注意

遅れて申し訳ない;

 何故忘れていたのか。理由は一つだ。アリシアさんの尻尾が悪い。だってクート君を余裕で上回るモフリ具合に進化したから、何時も隣に居るからと意識の外に飛んでいたのだ。



「クート君クート君クート君クート君‼」


「そう言えば逃走した魔物を地平線の果てまで追っていきましたね」


 何事か‼と跳んできたアリシアさんが、あ~っと思い出したように呟いた。アリシアさんも忘れてたらしい。

 私は即座に魂の繋がりからクート君の現在地を探す…凄い遠くまで魔物を追撃してるようだ。繋がりが残ってる時点で無事なのは確かなので安心した。


(主よ何か用か?)


(ごめんなさい忘れてた!)


(……我等は魔物を主の命で追撃してるのだが…)


 どうやら殲滅せよっという命令を守り、ひたすら追撃してたらしい。魔物は四方八方に逃げるだけで、統率者に至っては全て食べられて壊滅状態だそうだ。それでも10万程残ってるので、それの追撃をしてるらしい。

 ここでお兄様や両親も部屋に入って来た。どうやら部屋のドアの外にいる騎士が異常事態だと判断して呼んだらしい。


「…まあ魔物が減るのは良い事だろう?今後忘れないようにすればクートも許してくれるだろう…しかし、アリスティアの使い魔が勝手に動いてるのは問題になりかねんから…」


 クート君は一応私のペット(使い魔)なので他国で軍事行動を起こすのは不味いらしい。対応を取るためにとオストランドの王様が呼ばれた。普通は直ぐには来れないんだけど、私の名前を出したら30分位で来た。


「ふむ、儂としては国の魔物が殲滅されるのは大助かりじゃが、貴族は騒ぎそうじゃの。まあ副王殿は昏睡してて撤収の指示を出せんかっただけじゃし、民間の被害も出てないから儂の方で何とかしとくか。

 現在何処に居るかだけ教えて欲しいの。一見魔獣の群れだからオストランドの貴族や冒険者が攻撃しかねんからの」


「地図を貸して」


「…軍事機密なんじゃが…まあアーランド側に見せても見せなくても変わらんか。どうせ既に持ってるじゃろう?」


 その言葉にお父様が頷いた。他国の地理関係を調べるのもやってたらしい。普通は軍事行動を起こす時に必要だから民間では簡素化した物しか出回らないのだ。

 取りあえず嫌そうな顔をしてる騎士から地図を借りる。


「【遠距離探査】…ここら辺かな?」


「国境じゃな…帝国側に逃げおったか」


(変な旗を掲げた連中が我等の獲物を横取りし始めたのだが…)


 ?クート君からの報告が入った。取りあえず念話で大まかの旗の模様を聞いて、紙に書きだすと、周りが騒ぎだした。


「帝国軍の旗じゃと‼何も報告は来とらんぞ」


「漁夫の利を狙ってたんじゃね?皇国も狙ってたっぽいし」


 行き成り国境沿いに帝国軍が出現した事に騒然とするオストランド側の人達。でもお父様は平然としてる…と言うかクート君の報告だと、魔物の群れと遭遇して壊滅寸前なんだけど。


「無視じゃ無視。何も報告しとらん帝国が悪い。儂等は何も知らん」


「帝国を助ける義理は無いな、放置して自滅してしまえ」


(可哀そうだけど放置して戻って来て。アーランドの王都にそのまま走って来てね)


(了解した。更なる眷属を捕まえながら帰るとするか)


 どうやら眷属を増やしながら帰るらしい。

 私やアーランドの騎士達との戦闘から自力の強化より眷属の強化と連携の必要性を理解したらしく、強い魔獣を説得(戦闘)して眷属化してるらしい。この一ヶ月程では強い魔獣と遭遇しなかったので援軍に来た時の約100匹のまま変わらないそうだ…ただ、魔物を多数食べたので個々での強化は進んでるらしい。何処に向かってるのだろうか…やり過ぎると危険種として討伐されるような…まあクート君の調教に期待しよう。


「兎に角下手な事を考えた帝国軍以外は被害が無いのは良い事だ。俺は国境沿いに伝令を出しとくから、クートが先に出るように言っておくように」


 このままアーランドの国境を通れば魔獣の群れとして処理されるので、先に使い魔の印と首輪付きのクート君がアーランド兵と接触すれば通れるように話を通してくれるらしい。会話は出来ないが、私のペットだと言っておけば、何もしなければ無事に王都まで来れるとか…何かしたら即駆除対象とも言える。

 私は念話で悪さをしないようにとクート君に厳命してこの話は終わった。


「さて、私はアリスちゃんのお説教ね」


「私は忙しい」


 何故か怒ってるお母様から逃げようとしたら捕まった。何故怒られるの?過失だよ、情状酌量の余地はあると思う。


「本棚の中身と、勝手にペットを増やした事ね。1ヶ月も気が付かないと思った?それに獣は嫌いだって何時も言ってるよね?」


「理不尽‼」


 良いじゃん私のペットだもん。それに今後は躾もしっかりするもん。でも魔道書は仕方ない。大人しく罰を受けよう…ペットは今後も増やすけど。

 そのまま私は別室に引きずられていった。これで何度目だろう…まあ精霊魔装の件を追求されないだけ甘いのだろう…そろそろお尻が大変な事になる。


「ぐす…もう帰る…準備終わった」


 それから2時間後に解放されて、部屋に戻るとアリシアさんが準備を進めてくれてたので、隠してた物を回収して寮の庭に投影で魔法陣を出す。初めての大型の遠距離転移になるが、何故か転移魔法の精度が上昇したようで、特に問題にはならない。最近私の記憶に無い物が増えてきたな。テトにでも今度聞くか。

 どうせ神様として祀るぞ‼と念じてれば慌てて接触してくるだろう。


「全く娘の人生は嵐のようだ。普通なら休校する事など無いのにな」


「不運とも言えるわね」


「私としては思ってた以上に接点が少なくて不満だったのです。これで最低2年は一緒に居れます」


 残ってた騎士と…いつの間にかフォルムチェンジしてたスパイダーは宝物庫に入れて、目元が隈で凄い事になって真っ白に燃え尽きてるグランツさんを回収すると、帰宅準備完了。総勢200名程の集団転移何て使えなかったんだけどな…。



 転移は問題無く成功。王城の庭にあらかじめ書かれた魔法陣へと転移して戻った。両親とお兄様は今後アーランドで政治的な方針転換を行うそうで、それの会議に向かった。私は好きにしてていいらしい。取りあえず燃え尽きてるグランツ師匠が逃げないように捕獲する。


「んあ?何か用か?って帰って来たのか。俺は寝る」


「今から造船所の建造と飛空船の建造に入るからまともに寝れるのは2か月後」


 師匠は更に燃え尽きた。灰になるんじゃないかってくらい落ち込んでる。しかし師匠の手を借りないと間に合わないから逃がす気は無い。治療魔法で回復させて、渋る師匠を背中から押すけど…1ミリも動かないので【浮遊】で持ち上げてそのまま私の工房に向かう。現状あそこからしか研究所予定地に入れないし、造船区画もこちらからしか行けない。


「予定として、ここの上が練兵場だから、練兵場の地面が動くように改造…お母様に見つからないように細心の注意が必要だからそっちは夜に作業。取りあえず3隻分の建造スペースを作るから」


「知らねえ間に自分達の下にこんなもんが出来てるなんて誰も思わねえだろうな。ったく、やりゃ良いんだろ‼」


 グランツさんは船の建造にも造詣が深いので必要な知識は持ってる。私は周りの地面を掘って、地盤沈下しないように魔法で強化して、配線を通して明かりを設置する。今日は明かりと船を作る堀のようなスペースが出来るだけで終わった。明日からは工兵を導入して一気に作り出すから…換気関係やトイレやお風呂などを設置しないとね。

 それと工兵は基本的にドワーフだからお酒も大量に用意しないと。これはオストランドで酒製造の魔法を覚えたので問題ない。市販品より質が落ちるが、腕の良い魔法使いの酒は美味しいらしく、ドワーフの人達の助言を受けて改良すれば良いお酒が出来るだろう。私は飲めないからね。



 次の日。


「何でこんな所に大空洞が‼」


「流石姫様だぜ。こんな事は誰も思いつかねえ‼」


 クート君が居らず寂しい夜だったが、特例でアリシアさんと一緒に寝て良いと両親が配慮してくれたので大丈夫だった。それにクート君とは念話で結構話してるから『まだ』大丈夫。余り離れすぎると寂しさで泣きかねないが今は大丈夫。


「おはよぅ。じゃあ作業開始ね。1班は魔動クレーンの設置で2班は造船エリアの建築…3班は換気系の整備…しっかり偽装してね?お母様に見つかると私が怒られるから」


「「「「無許可かよ!」」」」


「お父様からは許可貰ったよ。お母様は怖くて無許可だけど」


 取りあえず現時刻は9時だ。作業は工兵が6時までで、私は8時まで。私は大分活躍したから勉強系は暫く免除して休ませようと言う事になってるので時間に余裕があるから大丈夫。


「それとアリシアさんはお昼の手配ね?ここの食堂に行けば作ってくれるから」


 私はアリシアさんに王都の庶民的な食事処の名前と地図の書いた紙を渡す。店主には困った時に頼ってくれと言われてるから頼ろう。ちゃんとお金も払うから忙しい以外には問題ないだろう。


「分かりました。それとここから出る時は必ず私か他の騎士を付けてくださいね?最近凄い物騒なので」


「分かった」


 何やらきな臭い状況なので、私の警備は厳重化すると言う方針に決まったようだ。学園も休校が終われば護衛を連れて行かないと通えないらしい。

 さて、私はグランツさんと統括の仕事だ。主に人手の足らない所を手伝ったり飛空船の建造に必要な工具の制作や、必要な重機を作る。それとスパイダーを改造したいと言うグランツさんの意思を尊重して兵器工房も近くに建設する事になった。後は入口の増設かな。研究区画は警備を厳重にするためにカードキーが無いと誰も入れない仕様になる為に建造区画と分けないといけないので、何処にするかと言う問題もある。因みに魔導炉を置いてるのは最下層部分だ。


「さて、まずはどれを作るつもりだ?」


「まずは『旧型』の大型飛空船を2隻。それと『新型』の大型飛空船を一隻…これは旅客タイプを作る。魔道戦艦や浮遊空母はオイオイになるかな。あっちは流石に時間が掛かるから先にそっちを作って予算獲得を狙う」


「思うんだが旧型はもう要らねえと思うんだが」


 確かに旧型は不要だと言う意見も出るだろう。しかしこれの使い道は考えてある。王国が許可するか分からないけど、旧型は旧型で建造が早いので使い道はどうにでもなる。それに新型は整備がドワーフじゃ無ければ出来ないレベルだから今の段階で多数用意すると混乱が起きるだろう。

 当然性能面では殆ど新型の方が上だし、貨物型には魔動クレーンを付けたりと必要工程が多いのだ。因みに旧型は一見普通の帆船だけど新型は羽根にプロペラが付いてる。当然エンジン付きだ。

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