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68 変態が来たので国に帰る③

「お兄様…もう私の知ってる知的で冷静なお兄様は居ないんだ…」


 私は溜息をつく。あの冷静な…時々変だけど何時も大人しいお兄様はお父様に毒されたのだろう。幻想が崩れていく感じだ。生まれた時は、何この変態?と思ったけど家族思いで冷静で、頭の良いお兄様がドアを蹴破るのは意外とショックだった。アリシアさんも残念な者を見る目で見てる。


「あれ?私かなり好感度が落ちてる‼ってそれどころでは無い‼直ぐに帰国だ、早速転移で帰ろう」


「何で?明日でも良いじゃん。もうすぐ夜だし」


「危険なのだ。この国には変態が生息してる事が判明した。アリスティアのような幼く賢い幼女を手玉に取る変態がな!」


 それってお兄様の事じゃ…帰っても生息してるのは良いのだろうか?私は無言でお兄様を指さすと、お兄様は泣きながら崩れ落ちた。


「違うんだ…私じゃないんだ…嫌私は正常だ。こんな可愛い妹に懸想しない兄は居ない‼」


 どうやら自己完結して立ち直ったようだ。変態の再起動は恐ろしい程に早いのだろう。

 しかし変態への対処法は確立してる。私の変態耐性は既にカンストしてる筈だからメタボなおじさんがハアハアしながら近づいてきてもそのまま憲兵に付き出せる筈だ。つまり私の敵にはなるまい。

 それにそんな人が私に近づけるのか?と言う疑問もある。アリシアさんと獣戦士の精鋭がここを警護してるのに私に近づけたら段ボールを被った人だと言う事だ。アーランドに帰っても侵入されるのがオチだろう。


「疲れたから明日ね~お休み」


 私は狼狽える2人を無視して私はベットに潜るのだった。


「いや~こんな美しい姫君に会えるとは僕は幸運だ」


「はあ」


 次の日。確かに変態が現れた。一国の国王であるお父様に軽く挨拶する程度で、行き成り私に近づいたと思えば行き成り手の甲にキスをしたり、口説いてる?とも思える事を囁きだした少年…辞めて貰えませんかね。私についてる精霊が若干イラついてるんだけど。精霊がイラつくのも初めての現象だから興味深くはあるけどね。


――アイツ殺して良い?私達のアリスに馴れ馴れしい


――落ち着け火の。まずは他の人間に気が付かれないように事故に見せかけるのだ。これで何も問題ない


 火と風が殺害予告を発してるのだが…まあ精霊が犯人な時点で人間の法では裁けないから隠蔽とか要らないのだが…一国の王子は不味いだろう。


「どうでしょう?私と是非婚約して貰えませんか?」


「会ったばかりなので無理です。それにそう言うのはお父様に委任してるので」


 何か露骨過ぎて私が引いてるのに気が付いていないのかな?最初殺気立ってたお兄様とお父様も私に脈が無いのが分かると余裕を取り戻してたし。周りを見れないのは減点1。礼儀も甘いので減点1。女慣れし過ぎも減点1…これはお兄様もか。


「まあまあそう言わずに。これは両国にとっても好ましい話なのですよ?今後の関係強化には両国の王家の婚姻は必要不可欠です。それは貴方様もお判りでしょう?」


「お父様の話ではアーランドの王族に政略結婚は存在しないそうですが」


「確かに無いな。実力の無い者を受け入れる意味が無い。欲しければ実力を示すのが通例だ。地位や権力はそこに付随する」


 本当に脳筋の集いなんだよな…まあ戦争を続けるにはそれだけの資質を問われると言う事だね。獣人は力を信望するし、ドワーフは技術でエルフは神秘…普人は権力…悲しき事だ。


「それにうちの妹を口説こうとしても無駄だぞ?お得意の愛の囁きすら効いてないだろう」


「ぬ・・・」


 それに忙しいのだが…隠してた魔道書をお母様に見つからないように仕舞ったりとか家探しされたら私のお仕置きが追加される。さっさと仕舞わないと。幸いお母様は今は居ない。仕事だそうだ。


「それに政略結婚なら国王様から来るのが通例では?事前連絡を受けたと言う報告は無いのですが…」


「まあ来たら追い返せとは手紙が来てるな。国王と言う者は忙しいからな。ここまでにしておいた方が身の為だぞ?いい加減無礼過ぎだ。知り合いの身内だからと甘やかすのはここまでだと言っておく」


 ああ知り合いの息子さんだから大人しかったのか。これで私が揺れてたら話は別だけど欠片も興味を持たなかったから穏便に済まそうと方針を転換したと。

 結局何をしに来たのかよく分からなかったが、顔を若干赤らめながら王子は帰って行った。


「しかし顔は良いんだがな。権力が欲しいのがバレバレだな。よく引っかからなかったな」


 お父様は私の頭を撫でる。髪が乱れるから辞めて欲しいのだが…。


「だって顔も…お兄様の方がイケメンだし、権力欲しいですってまる分かりだし」


「聞きましたか父上‼分かる妹は全て分かってるのです。これは心配する必要はありません。私が必ずぐふ‼」


 お父様の華麗なアッパーでお兄様は天井に突き刺さった。天井から人が吊るさってる状態だけど…私の部屋なのに…。

 アリシアさんも露骨に修繕が面倒だって顔をしてる。指示を出すだけだけど、信頼できる業者を呼ばないといけないので面倒なのだ。

 取りあえず悪は討ったと言う顔のお父様と自重で落ちてきたお兄様を部屋から追い出す。アリシアさんに修繕を頼んで…少し友達と電話しよ~と。もう収納は後でいいや。


「っこれだ!」


「五月蠅い」


 アノンちゃんに電話を掛けると行き成り大声が聞こえた。思わず電話から耳を離してしまった。


「にゃはは。ごめんごめん。まだ使い方になれなくてね」


「今大丈夫?」


「私達は当分暇だからね。こんな時にパーティーとか出来ないし。それでどうかした?」


 元気だね。凄いハイテンションだ。まあ慣れるのは時間が掛かるだろう。今までにない物だし。少しさっきの人の事を聞いてみよう。何かまた来るみたいな事も言ってたし…アーランドまで来るのは辞めて欲しい。休校中は本気で忙しくなる予定だから。


「さっき第5王子って人が口説きに来たんだけど、どんな人なの?何か馴れ馴れしかった」


「あ~来ちゃったんだ。適当に放置で良いと思うよ。あの人後が無いから名声で溢れてるアリスを手に入れたいんでしょ。って言うかよく部屋に入れたね」


 何か行き成りめんどくさそうに話し出した。アノンちゃんも苦手らしい。しかし後が無いとは…何か仕出かした人なのだろうか?


「まあ正直言って手が早すぎるから娘持ちの貴族に嫌われてるね。手を出すけど責任は持たない人だから。あの人のパーティーって熱中してる令嬢しか来ないらしいし…一応同じ学園だよ。私達も面倒だから話題に出さないけど」


 同じ学園だったんだ。特進クラスには居なかったし、交友関係が狭い私は噂関係にも疎い。話題に出ないと誰が誰だか分からないよ。

 それにしてもパーティーって参加する人の地位とかで格が変わるのだが…まあアーランドは祭りは好きだけど堅苦しいのは大嫌いだから余り多くは無い。繋がりは欲しいけどお金を散財したくないって貴族も多いからね。それでも王族はかなり呼ばれるのだが…。


「まあ女たらしな人って事?それでも学園で全く話を聞かなかったのは…私が友達少なくても近くで話してる時とかは普通に聞こえるから全く知らなかったのには驚いた」


「そりゃアリスのお兄ちゃんが有名過ぎて話題にも出ないからね。学園に居る令嬢は基本的にアリスのお兄ちゃんにお熱な人ばっかだし。

 まあそこは王太子と第5王子の差とも言えるんじゃない?お兄ちゃん良い噂しか聞かないからね。紳士だし、ケーナも若干お熱気味かな」


「お兄様……」


 学園で何をして来たのだろう…口説きに来たのかな?まあ好き勝手に手を出しまくってる訳じゃ無いようなので、素でモテモテなのだろう。ある意味アーランドの未来は明るい気がする。


「まあ、そこは娘ラブな家族に任せれば良いと思うよ。良識ある親なら絶対に受け入れないから…うちも断ったらしいな~何で騎士の家に?って聞いたら実質伯爵家並に権力持ってるらしくてさ~なら伯爵家になれよ‼って怒っちゃったぜ。それくらいならアリスの横に居ても何も言われないしね。はぁ…休校が終わったら面倒だな…アリスと話せるのは楽しいけど周りの反応が・・・ね?最近見合い話で馬鹿親父がウザがってるよ。あの人も基本的に親馬鹿だから」


「ごめんなさい」


 どうやら私のせいで3人にも迷惑が掛かってるらしい。最悪の場合は距離を取らないといけないのかもしれない。


「ああ気にしなくても良いと思うよ?私は元々変わり者扱いだし、シャロンに関しては欠片も気にしてない。ケーナくらいじゃない?ある意味逆ハーレムのように婚約の申し込みが来てるから…まあアイツもそこまで迷惑には思ってないだろう。結婚出来ない令嬢とかも居るから、出来ないよりはマシって割り切ってるし」


まあ、稀に結婚出来ずに生涯実家で暮らす令嬢も居るからパートナーを選べるのは幸せな事だとか。


「暫くは携帯での連絡しか出来ないね」


「まあアリスは忙しくなるんだろ?普通は手紙だからこれはマジで便利だよ。普通は公爵クラスの当主が持ってるだけだから…まあ私達も持ってる事は内緒にしてるね。持ち主登録?してるから私達以外に使えないけど」


 所有者以外が使うと一定時間で使えなくなるからね。便利な反面狙われそうだから安全装置は付いてるし、今の所私以外には解除出来ないから問題ないだろう。


「じゃあまた今度連絡するね…メール送るから」


「返信は当分遅れるよ。あれ難しいから。後あの人しつこいって事も有名だし、意外と黒い噂も聞くから本当に気を付けてね。アーランドと戦争とか洒落にならないから」


 ふむ、気を付けよう。結構小者臭漂う人だったが、そう言う人も意外と大胆な手を打つ事があるからね。

 さてそろそろ帰国だから忘れ物チェック……何か足りない。

 何だろう?と部屋を見回すと大事な者が居なかった。何時も部屋の隅の毛布の上で寝てるクート君の姿が無い‼そう言えば起きてから一度も見て無い。

 元々狼型の魔獣だから一人で出かけてる事も多かったけど一度も見てないのはおかしい。それに新しいモフモフ…もとい眷属の話も聞いてない。


「何処行ったの~‼」

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