67 変態が来たので国に帰る②
「その者達はお前の新しいメイドだな。全員異世界人だ。今後アーランドで保護する事になった。早速首輪を外してくれ。俺達が外すと死ぬような術式が入ってるらしい。無害化して外すのも時間が掛かるかならな」
異世界人をメイドにするって…まあ確かに強いから兵士にするのは間違ってるから仕方ないか。
私は彼女達に近づくと首輪を解析する。確かに命令違反は死の術式が入ってるね。でも魔力で干渉して壊すのは可能と…そう言えばお父様もお母様も繊細に魔法を使うのは苦手だから破壊するのは面倒なのだろう。
私が壊した方が早いのは確かだ。解析の結果は私なら難なく壊せると言う物だった。つまりこの子達を縛ってる方法では私を拘束出来ない事の証明でもある。
私は即座に術式に干渉して所有者権限を書き換える。そして普通に解除すると首輪は勝手に外れた。簡単だね。システムへのクラッキングに比べたら片手間で出来るレベルだ。
「距離を超え、世界を映せ『遠視』…見っけアリシアさんカモン‼『強制転移』」
「え?」
兎に角傷だらけなので、もう一度体を綺麗に洗って貰おう。結構清潔になってるけど、長年不衛生な生活をしてたのか、髪とかもボロボロだ。アリシアさんなら私に使ってる石鹸とかも持ってるので浴槽へGOさせる。
「それ…私の異能…」
「私の転移?」
女の子2人が何かを呟いたようだが、私には聞こえなかった。
「?アリシアさん、この子達を浴槽に連れてって綺麗にして。私の石鹸とか魔道具とか使って良いから」
「それより何故私がここに居るのですか?さっきまでドアの修繕を指示してたのに…」
アリシアさんは何故ここに居るのか理解出来ないようだが、とりあえず首を傾げながら「姫様なら普通ですね」と言うとそのまま3人を連れて行った。特に私の石鹸とかであの子達を洗う事に嫌悪感が無いようだ…突然の出来事で混乱してるとも言う。
「さて本題と行こうか?代行者と言う名称に覚えは無いか?」
「行き成り本題と言われても分からない。代わりの人って事?私に影武者は居ないと思うけど」
行き成りお父様やお兄様が真剣な顔つきになった。因みにお母様は折檻の効果が無い事を悟った時点で辞めてお父様の隣に居る。
「ふむ、ではアリスティアは自分の別人格とかを作る事は出来るか?」
「出来ない事は無いけど作る理由も無い。何の話?」
理解出来ない。何を言ってるのだ?別人格?厨二要素何て求めて無い。
「…そうか。まあ分からないなら良いか‼いや、ちょっとこっちの問題だ。気にすることは無い」
訳が分からないが、何か意味があった気がする。でも、もう聞くなって雰囲気が言ってるので、これ以上の追及もしまい。どうせはぐらかされるのがオチだし。
さて彼女達の怪我を治したら早速飛空船を治して帰ろう…何か忘れ物をしてるような?ん~思い出せないのならそこまでの物じゃないのだろう。
取りあえず部屋を出て、浴場へ向かう。そう言えば初めて入ったな。何時も部屋の小さいお風呂だし。
そこではモコモコアワアワの状態の3人と同じくアワアワなアリシアさん。私の石鹸とか魔道具は美容に良い物を使ってる。興味は無いけどアリシアさんが絶対にそうしろって言うから作った。石鹸は市販の高級品だけど。
「ちりょ~のお時間です」
濡れるので服を脱いで仁王立ちする。
「姫様は少し恥じらいを持ってください」
「アリシアさんが何時も見てるから気にしない。パパッと綺麗にする」
早速【ヒール】で治療する。傷跡は主に鞭ですかね?まあそこまで酷くは無いけどくっきり跡が付いてる。サクッと治して私も軽く体を洗って貰うと浴槽には入らずに出る。彼女達は未だに衰弱気味なので暫くは保護したままで、動けるようになってから私のメイドとしての教育を施すらしい。本人達が戦いから離れたいのだとか。
次に私はお父様とお母様と合流して飛空船の墜落地点へ飛ぶ。忙しいが、お父様も暇じゃないのだ。さっさと治すに限る。
「魔玉交換して…術式刻んで即終了‼破損個所は帰ってから工兵に治して貰ってね」
飛空船は魔玉が割れてる3隻だけは各10分程で終了。もう一隻は…
「かいもーん‼鎖よ即座に収容‼」
宝物庫を呼び出して、大型の物を入れる鎖を起動させると引きずるように収納して終わり。門の大きさは自由自在なのだ。大型の魔道具も保管してるから搬入用の魔道具は置いてある。こちらは大きいので1時間程掛かった。少し馬力を上げるか。
「……あっさり終わったな」
「驚く暇もありませんね」
「さぎょーしゅーりょー。暇潰しにも成らない。私は帰国準備するから寮に戻るね。友達と一時の別れと…素敵なプレゼントを贈るから」
「国家機密を送るなよ?飛空船の建造技術とか…」
「流石にそれは無いでしょう」
「時代遅れの飛空船の設計図何て誰も要らないでしょ?もう新型の設計図が出来てるし」
依頼を受けた時点で作ってる。エンジン搭載型の新型飛空船をお父様に見せてみよう。制作もドワーフ工兵を借りれば2か月で間に合うだろうし。
「時代遅れか…ハハ、世界中が研究してる船が時代遅れだぜ?ギル、どう思う」
「世界中の学者がキレますね。その時代遅れを未だに建造出来ないのですから…」
何故作れないのか私的には理解出来ないが、まあ仕方ない。取りあえず建造予定のドックは考案してある。大きい竪穴に横穴を付けて各階に6隻の飛空船のドックを作る方針だ。手狭になれば、さらに地下に掘って横穴を作れば簡単に増設出来る。現在6隻のドックの建設予定で、魔導クレーンの設置とか動力源の魔導炉等忙しい日々になりそうだが、私は研究万歳、引き籠り万歳な人間なので問題ない。
そして復活した飛空船は残ってたアーランド兵を乗せてアーランドに帰って行った。一部何故か私達と帰ると反対活動を起こしてたがお兄様が耳元で何かを囁くと大人しく帰って行った。何を囁いたのだろう…その時のお兄様は悪魔のような笑顔だった。
さて私だが、後3日は帰れない。荷物を宝物庫に入れるのと、何やら明日にはアノンちゃん達が来るそうだ。後一日は予備日だ。お父様達もそれに合わせて帰国するらしい。仕事良いのかな…ボルケンさんが大量の書類持って待ってそう。
次の日
「友達が来たよー」
「お願いだからノックしてよ~‼」
「…久しぶり?」
一日で直ったドアを破壊する勢いで開けたアノンちゃんと涙目のケーナちゃん。シャロンちゃんは…何時も通りだ。私は荷造りで忙しいから来たら通して良いと騎士達に伝えてあるが、案内してきた騎士も口を開けてる。流石にマナー違反です。私は構わないと騎士に合図を出すと、騎士は仕方ないとばかりに礼をして去って行った。あの人も娘さん居るから分かるのだろう。
「久しぶり?まあ私的には数日ぶりなんだけど」
「寝てたって聞いたけど、もう大丈夫そうね。もう王女なら王女って教えてよ‼私どう接すれば良いの?」
「そのままで良いけど…」
「気楽に行こうぜ。王様みたいに禿げるぞ」
「今まで通り…」
……アノンちゃんそれは不敬罪に当たる…ここだけの話にしよう。多分王様も気にはするけど苦笑いで許してくれるだろう。
しかしケーナちゃん若干ヤツレテル…シャロンちゃんは意外と変わって無い。アノンちゃんは…筋肉質になってる?何か野生児化してる気がする。鍛錬でも厳しくしたのかな?皆元気で頑張ったかいがあるよ。
「それでさ~馬鹿親父があの程度の魔物に後れを取ったのか‼ってブチ切れてさ~じゃあお前この剣で私と同じ筋力で倒せるのか‼って返り討ちにしてやったらさらに怒った」
「教えるお父さんの方が弱いんだ…それは別の意味で怒るね」
説教出来ないじゃん…っは‼つまり私がお父様とお母様を超えれば説教も無くなると言う事か‼私も鍛錬が必要な時期が来たのだろう。暇を作って騎士団の訓練に混ざろう。
「アノンは少し…手加減と言うか容赦しなさいよ。小父さん物陰で落ち込んでたわよ」
「アノンちゃんは…強すぎだから仕方ない。私はお父さんが剣を持つなぞあり得ないって怒られちゃった」
シャロンちゃんに剣…落として自分に刺さりそうだ。
「まあ仕方無いじゃん?私も努力してるんだしね。後馬鹿親父が後でお礼を言いたいって。何故かアリスのお父さんと話してるけど」
「近衛でしょう?用事があるんじゃない?無礼千万な娘がすみませんって謝ってるかもよ」
「それはひてーしないよ」
否定しようよ‼と言うと笑われた。
「何かまた少し変わったけど前のまんまで安心できたよ。ところでこれ何?」
「私は凄い魔法使いである事は明白だけど、スルーするアノンちゃんは大物になると思う。それ?魔導携帯。離れてもそれを使えば話せるし、それを起点として私も転移で来れるから何時でも助けに行ける。起動時に髪を一本入れれば本人以外に使えないからそうしておいて」
「もももももも貰えるわけが無いでしょう‼」
「そうサンキュー」
「…大事にするね」
凄いケーナちゃん以外が普通の態度だ。ケーナちゃん倒れそうな位息が荒い。何やら後ろから気配が…アリシアさんが駄目でしょう?って怒ってる感じ。私は手招きして、白・黒・赤・オレンジ・緑・青・スカイブルー・メタリックの携帯を出すと4人に好きなのを選ぶように言う。量産済みですが何か?
今じゃアリシアさんを含めて皆これが良いとかあれが良いとかワイワイ選んでる。アリシアさんは黒にするみたい。目立たないのが良いとか。
アノンちゃんはスカイブルーで、ケーナちゃんが恐る恐ると言う感じで緑。シャロンちゃんは速攻で白を選んでた。選ぶの早いな。早速起動させて所有者登録を行う。皆に説明書を渡して、これを読めば携帯マスターだ。因みにガラケーである。
「ひひひ姫様?この待ち受けなる物は何ですか?」
「それは写真とかを待ち受け画面に登録できる機能。私は転んでるアリシアさんだよ?ほら」
「……何時の間に。削除…ロック?パワスワード?アリシアっと、あ!当たった、削除は…」
「ストップ。勝手に削除はいけない」
即座に私が考えた最強のパスワードを解析するとレア画像を削除しようとするアリシアさんから携帯をひったくる。パスワードはクート君にしておこう。
アリシアさんも特に抵抗が無いようだ。まあ魔導携帯はあるにはあるからね。因みに私はピンクに近い明るい赤色だ。
「辱しめを受けました」
「へ~メイドさんも転ぶんだ。うちにはメイド何て居ないから新鮮だね。ケーナやシャロンの家のメイドと話した事無いし」
「まあそこそこの教育は受けるから滅多に転んでるシーンに遭遇する事は無いけど…アリスは隠れて付いて行ってそうだしね。ほら鳥の子供みたいにちょこちょこと」
「私は日々進歩してるからアリシアさんでも感知不能の隠蔽魔法を開発してる」
むふん。凄いでしょうっと言うと何故か残念な物を見る目で皆に見られた。何故だ‼
しかしこの携帯便利だよ。契約魔法を応用したから、大陸どころか星の裏からでも繋がるし、妨害も出来ない。それに魔力を持ってれば何時でも使える、小型の吸魔の宝珠を入れてるけど、小さく、容量の低い吸魔の宝珠は魔力を無理やり吸収する特質も落ち込む。完璧な出来だ。また私は凄い物を作ってしまった。因みに電話代は無い。後でグランツさんや、他の五候の人にもあげよう。お父様達は…持ってるだろう。
「これで前のような失敗は無い。危ない目に会ったら即座に私に連絡していいよ?それとも護衛用のゴーレム要る?」
「何でそこまでしてくれるの?流石に貰い過ぎだよ」
「私はもっと強くなるから大丈夫‼」
「貰い過ぎ」
ふむ…
「だって友達初めてだし…死んじゃったら会えないじゃん…最近色々危ないし…正直オストランドの兵士って弱そうだし」
「にゃはは。確かに弱いよね~まあアリスの気持ちは嬉しいけど、やり過ぎは悪いよ?私達も気を付けるから、そこまで心配しなくてもいいよ。流石にあの時みたいな事があったら頼むかも知れないけど、私ももっと強くなってアリスの負担にはなりたくないね。だってそう言うのが友達でしょ?」
「私も護衛を増やすから大丈夫よ。アノンの言う通りよ、やり過ぎだと重い女になるんだって?体重かな?私もよく分からないけど」
ケーナちゃん多分体重じゃない。でも確かに心配し過ぎは良く無いのかも知れない。気を付けよう。同年代との接し方が分からないけど3人と一緒にいれば何れ違和感なく接する事が出来るかもしれない。
まあアノンちゃんが居れば暴漢の心配は無いね。チンピラレベルなら無双出来そうだし…今度剣でも見繕う。
結局夕方まで皆でゲームしたり、久しぶりのアリシアさんお菓子で私が大興奮したり…宝物庫に仕舞おうとしてアリシアさんに怒られたりして楽しかった…いや最後は別に楽しく無いけど。
後アノンちゃんのお父さんは近衛の人みたい。娘をよろしくお願いしますとお願いされた。渋めのダンディーな人だ…独身だったら危うかったかもしれない。あの人結構強そうだったけど…アノンちゃんって…考えるのは良そう。アノンちゃん平気で蹴ってたし。
3人が帰ると少し休憩と言う事でアリシアさんと一緒にお茶を飲んでると。
「アリスティア早急に帰国するぞ‼」
「ここに居ては危険だ直ぐに帰る準備を‼」
お父様と…あろう事かお兄様が2人でドアを蹴破って来た。




