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62 愚か者達②

 「ふん、唯の小娘ではないか。まあ教皇陛下への手土産には十分だろう」


 この馬鹿は気が付いて居ない。恐らくアリスを奪えた事で、アリスの異変に気が付いて居ないのだろう。背後の教会騎士達は剣を抜いて構えてるが、じりじりと後ずさってる。


「隊長閣下‼その者は何か変です。お下がりください‼」


 後ろの部下が馬鹿に忠告をする。


「何を言ってるのだ…がああああああああああ‼」


 所の瞬間、無表情で眠っていたアリスは突然口を開けると数多の魔物を屠った破壊の光が出ていた。それは【疑似≪オルタナ≫ドラゴンフレア】と言う物らしく、ドラゴンのブレスを再現した物らしい。それを馬鹿に至近距離で打ち込む。普通なら蒸発するが、アリスは人を殺せない。無意識か知らないが、吹き飛ばされた馬鹿は生きていた。最も世の女性をたぶらかす美貌も火傷で爛れてるし数多くの魔道具らしい物は全て砕け散ってる。ある意味人生は終わったとも言えるだろう。

 馬鹿が吹き飛ぶ時に捕まってたアリスはそのまま空中に投げ出されるが、まるで空に地面があるかのように空に着地する。明らかにアリスの身体能力じゃ出来ない行動だ。アリスなら【飛翔】か【フライ】で飛ぶか浮かぶ。


「敵性反応感知。代行者が起動しました。基本人格アリスティアを再起動します…エラー…リトライ…エラー…リトライ…エラー……原因探索…魂に損傷を確認しました。現在創造主の娘アリスティアは活動不能と判断し代行者が今案件を対処します。敵性勢力の戦力を計算…現状でアリスティアの望む勝ちの可能性は30%と判断し、全リミッターを一時解除します」


 ……あれは誰だ?代行者?創造主の娘?母上が何かを仕込んだのか?いや母上ならそんな事は絶対にしない。それにあの禍々しい魔力は何だ?アリスの魔力は無色の筈だ。まるで…これではまるで魔王では無いか。


「貴様‼」


「手足を切り落とせ。本国に戻ればどうにでも出来る‼」


「やれ化け物」


「「……分かりました」」


 教会騎士もアリスの異変に戸惑い、異世界人をアリスにぶつけようとする。

 一人は転移でアリスの背後に回るが、ショートソードを素手でへし折られた。どうやら手の表面にシールドを張ってるのだろう。しかしアリスに剣を素手で受け止める技量も無いし、そこまで無謀でも無い。少女は転移で下がるともう一つのショートソードを抜く。


「【魔術殺し】起動」


 そこに魔法殺しの異世界人が切りかかる。アリスは抵抗する訳でも無くバッサリと切られるが倒れない。

 切られた後には既に治ってるのだ。結界は切られたがどうやら異世界人の魔法殺しの技法には何かしらの制限があるのだろう。その異世界人はアリスの様子に一瞬だけ隙を作ってしまった。当然だろう確かに切ったのにアリスには傷一つ残って居ない。その隙を突いてアリスの裏拳を顔面に受けた。


「敵対勢力に不確定要素を確認。魔法及び技術のコピーを開始します」


 アリスはグラディウスを出すと2人と切り合いを始めた。普段のアリスのように必要以上に手を抜かない。相手も転移や魔法殺しの技法で対処するも、アリスはどんどんその動きに適応し、魔法なしでも相手の剣を躱してる。動きに無駄がなくなり始めてる。それだけでなく、無効化されるのを分かってて魔法を使ってるし転移で逃げられるのに切りかかってる。


「何を遊んでる‼貴様等は化け物だろう。さっさと捕まえろ‼」


 教会騎士達は参戦しないようだ。趣味の悪い連中だが、奴等ではアリスに勝てない。所詮異世界人頼みなのだろう。それに私が参戦させない。状況は良く分からないが異世界人をアリスが抑えてるのならこいつらは私が抑えよう…その前に。


「起きんか‼」


「ふぎゃ‼…姫様‼」


 一括入れるとアリシアが起き上がった。既に意識が戻ってる事くらい私でも気が付いて居る。恐らく隙を突いてあの馬鹿を殺すつもりだったのだろう。相変わらずまともに戦わない奴だ。


「一体姫様に何が‼あれじゃ世界一可愛いプチ魔王じゃないですか‼求婚者が増えてしまいます」


「君はまだ寝ぼけてるようだな。そんな事になれば私は全世界の男を殺す」


 それにあれは可愛いとは言えないぞ。まあ求婚者は今までのように私が処理するが、さっさと終わらせてアリスを止めねば。


「術式の解明成功。対抗魔法展開【幻想封じ】」


 私が教会騎士達に挑もうとした矢先にアリス放った唯の火魔法で異世界人が倒された…何が起こった‼


「化け物が負けた…のか。馬鹿な‼寝て無いでソイツを食い止めろ‼いや既に劣勢か、私達を逃がすんだ‼」


 オストランドの兵士達が慌ててこちらに駆けつけてくる。国王も居ると言う事は本気で私達か教会かを選んだのだろう…果たして敵か味方か。


「……申し訳ありません。能力を封じられました」


「…【転移】が起動しません」


 …まさか、異世界人の能力を封じたのか。異世界人は倒れたまま起き上がらない。

 いや今はまず教会騎士とオストランドの動きを見なければ。もし敵ならここから逃れるのはそう難しく無い。異世界人が倒れた今、私達は止めれんだろう。


「ほっほっほ。勝手に密入国してきたと思えば儂等の恩人に何たる無礼か‼皆の者、全員ひっ捕らえよ」


「「「「「「「「応‼」」」」」」」


「問い。状況は終了か?」


 いくら精鋭の教会騎士も20倍以上のオストランド勢には勝てず、次々と武器を手放す。異世界人が負けた上にトップは半死人で、アリスは健在。勝てないと判断したのだろう。拍子抜けだが、行き成りアリス(仮)が話しかけてきた。その瞳には何も映っていない。アリスは確かに無表情で居る事は多いが普通の子だ。泣くし喜ぶ。だが今は何も無い。全てを拒絶するような無表情だ。流石に怖いな。


「ああ終わりのようだな。君は一体『何』だ?」


 今更面倒な駆け引きをする暇は無い。アリスに何が起こってる。それにアリス(仮)には長々と話す気は無いと雰囲気が語ってる。


「私は代行者。創造主よりアリスティアの防衛を命じられた『物』なり。状況終了を確認。全てのリミッターを再起動し、休眠モードに戻ります」


 アリスの瞳はゆっくりと閉じて行き、倒れる。すかさずアリシアが受け止めた。


「姫様が作った新魔法の類でしょうか?」


「違うだろう。それならアリスが創造主と呼ばれる筈だ。それに者では無く物か…少し気になるが…アリスは覚えてないんだろうな…」


 アリスは寝起きの記憶が無い。いくら暴れても、父上を3階の窓から放り棄てても覚えていない。アリスも知らない事は答えれないだろうが、父上には報告しないとな。


「私達に手を出せば教会が、皇国が黙って無いぞ‼聖女を派遣してやったのに何たる無礼か‼」


「我等は派遣した聖女がアーランドに奪われないように迎えに来ただけだ。聖女は皇国に所属する『物』だぞ」


「黙らんか‼貴様等の戯言等聞く耳持たん。王族に対する不敬罪として死刑を命じる。広場に連れて行け‼市民の前で殺さねば収拾がつかん」


 既に市民は野次馬のように集まっている。その瞳には激しい怒りしか映っていない。


「「「「殺せ、殺せ、殺せ。恥知らずを殺せ‼」」」」


 確かに収拾がつかないだろう。奴等の敗因はアリスの影響力を甘く見過ぎた事だ。既にこの国に教会を信用する者など居ないようだ。彼等の眼からも教会が手柄を奪おうとしたのは明らかだった。アリスを奪っても成功等しない企みだろうに。


「何だ?急いで来てみれば騒がしいな。おい爺さんうちの娘に手をだしてねぇだろうな?それにそこらに転がってるゴミくらい掃除しろよ」


「父上‼」


 行き成り市民をかき分けて父上がやって来た。だが来たのは父上と母上とアルバート団長の3人だけだ。何かあったのだろうか?他の兵士や騎士も居ない。


「おう、馬鹿息子。アリスティアと一緒に命令無視しやがったな。説教は後だ。それと他の奴等は置いてきた。強行軍で飛空船壊れて全部落ちたからな。今頃走ってここに向かってるだろう。俺達はシルビアの【飛翔】で先に飛んできたんだ」


「またなんかやらかしたの?アリスの影響かしら、最近貴方にも悪い噂を聞くのよね~ちょっとアリスと一緒にお話ししましょうか?」


 私はアリスと違って何も問題を起こして等いませんよ母上。まあ命令無視は大人しく怒られましょう。アリスと違ってこの場で逃げるなど出来ないからな。


「母上、確かに命令を無視しましたが、私にやましい事はそれだけです」


「そう。じゃあアリスの婚約者候補達が全員辞退したのは何でかしら?皆何も話さないのよね~」


 …………ふむ。


「母上、私にすら劣る連中に何故愛する妹を差し出さねばならないのですか?私は彼等が真にアリスに相応しい連中か確認したに過ぎません。残念な事に一人たりとも私の目にとまる者が居ませんでしたが」


「良くやったギル‼うっとおしくて仕方なく候補にはしたがあのままだったら俺が暗殺してた‼」


 父上も私と同じ考えのようだ。


「貴方は黙りなさい」


 ゴスっと鳩尾に杖を叩きこむ母上。しかし父上には効いてないようだ。父上は生物としては何かおかしい人なので私は驚かない。しかしオストランドの兵士達はかなり動揺してるようだ。一見悶絶するどころか気絶する勢いで叩きこんだからな。


「痛いじゃないか。それに俺だってアリスティアが嫁に行くところなんて見たくないし婿を取る所だって見たくない。良いじゃん、どうせ候補者で終わらせる予定の連中だったし。まあそれは後だ。この状況の詳細を教えてくれ。何故アリスに市民が群がってる。俺に対する新手の嫌がらせか?それに寝てるアリスを外に出すなぞ自殺行為だぞ。お前も俺のように空を舞いたいのか?」


「私が3階から落とされたら最悪死んでしまいます。それだけされても無傷で懲りないのは父上だけです」


 何度アリスの逆鱗に触れても懲りない父上。アリスが寝起きの記憶が残ってたら確実に無視するだろう。

 父上は忙しい人なので朝くらいしか暇が無い。最も暇と言うより少しだけ時間が開いてるだけだ。しかしその時間はアリスは寝てるのだ。突撃しては外に放り出されたり、アリスに素手で壁に埋められるが全く気にしない処か親子のスキンシップと言い張っている。

 話が逸れたが今回の件を報告した。


「面倒な連中だ。どうやってここに手勢を送ったのかと何故アリスが此処に居る事を知ってたのかを問い詰めないとな。爺さん、処刑はストップだ。ちょっとこっちで借りるぞ。まあ後で返すから」


「ここで処刑しないと儂の立場が無いのだがの…まあ詳細を調べんといかんか…先ずは何も知らない末端の教会騎士を処刑して時間を稼ぐとするか」


 確かにアリスがオストランドに居る事自体イレギュラーだ。何故知ってるのかは疑問に思う。私と父上で大分掃除したが、まだ国内にゴミが残ってる可能性もあるからね。ここはきっちり話を聞くとしよう。それに末端は何も知らないだろうから処刑には反対しない。どうせ見逃してもうちの暗部に引き渡されて拷問された挙句に暗部御用達の毒の実験体にされるだけだから、ここで死んだ方が楽に死ねるだろう。


「父上、そこにゴミのように倒れてるのが奴等の隊長です。」


「うわ、グロイな。教会の奴等何を考えてこんなの使ってるんだ?正気じゃねえ」


 そうしたのはアリス(仮)なのだが、別に言う必要は無いだろう。私は鎧を脱ぐと怪我の手当をしてもらう。思ってたよりは酷い怪我では無いようだ。暫く休めば治るだろう。アリスはそうでも無いが、アーランドの王家は兎に角頑丈で怪我の治りも早い。これくらいなら問題ないだろう。

 こうして今回の一件の指揮官達はオストランドに『偶々』残ってた暗部に引き渡された。何故残ってたのかは聞かない。世の中王族でも知らない方が良い事もあるのだ。

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