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58 オストランドの混乱⑤

「チェックメイト。それと王手。後全部私の駒だからもう置けないよ」


「負けた~~‼」


「……3つ同時で対戦してるのにどうして勝てるのよ」


「全部…真っ黒の駒だけで…私何処にも置けない」


 現在3人でゲーム中です。スライムのような者達の報告では30分程で王都内部に侵入した魔物は駆逐出来るそうです。もっとも航空戦力が戻りつつあるそうで、30分後に結界の大拡張を行う予定です。しかし私達はまだ好奇心旺盛の子供です。30分も大人しく出来ません。なのでゲームをしようと言う話になったのでリバーシと将棋とチェスを出したのですが、皆やりたいゲームがバラバラで譲らない事態が発生したので全員VS私となりました。結果は全員私に負けました。むふん、私に勝つには修業が足りませんね。この3つはお兄様でも私には勝てないのです。


「この状況下でゲームしてるとは…大物じゃのう。全員将来が楽しみじゃな」


 王様はアリシアさんに淹れて貰った紅茶を楽しんでるようです。まあ現実逃避ですよ。先を考えたら悲しい未来がありますし、大人しくしてると私が寝る事を皆知ってるのです。私は10分以上何もしないと眠る事がありますから寝ないように気を逸らしてくれてるんです。アノンちゃんとか普段よりハイテンションですからね。


「王様とこうも普通に話せるなんて人生分かんないな。私まだ8歳なのにな、にゃはは」


「アノンは落ち着きなさい。申し訳ありません陛下。普段はここまでハイテンションではないのですが…」


「ごめん…なさい」


「よいよい。子供は元気な方が良い寧ろここで沈んでたらどうすれば良いのか分からなくなるからの」


 まあアノンちゃんが絶賛暴走中なのでシャロンちゃんとケーナちゃんが抑えに回ってます。私ですか?眠いのです。魔力の消費が激しい禁術を使った上に結界等も使ってるので疲労がハンパないです。最悪の場合は魔法で疲れを取りますが、それも最悪の場合にしか使いたくない。


「私としては何故カップ一式と姫様と一緒に飲もうと密かに購入した茶葉がここにあるのか姫様を問いただしたいです。そのカップを私が無くしたと王妃様に怒られたんですよ?減給3か月ですよ?遂に厨房にまで勝手に入ってきましたか…王妃様に言いつけてやる…私のお給料…」


 私は厨房立ち入り禁止令が出てます。前に料理なる物を嗜もうとしたらアリシアさんとお父様がタッグで妨害してきたのです。どうやらお母様が壊滅的に料理下手なので私も出来ないと判断されたそうです。

 しかしアリシアさんは気づいていない。私が厨房に居る事は多いのだ、主にアリシアさんが私用のおやつを作ってる時はこっそりと侵入してテーブルの上にある出来たてのおやつを宝物庫に放り込んでます。

 アリシアさんは結構抜けてるので減っても気づきません。足りないかな?と増産に入ります。そしてそれも私が頂く。ほどほどにしておけば結構なおやつを貯蓄出来ます。まあそろそろお母様かボルケンさんが気が付くでしょう。私のおやつ代がかなりの金額になってる事を。


「いえ普通に気が付いてますよ?姫様がこっそり盗み食いもとい、おやつを強奪してるのは物陰から陛下が観察してますから。と言うか私は姫様の中ではどれだけ天然扱いなんですか?」


「……お母様には内緒の方向で…」


 まさかバレてたとは。怒られますね。脅威ですね。私に抵抗する事は出来ませんよね?ならば為政者の娘らしく隠蔽しましょう。権力とはお母様に怒られないようにする為にあるのです。


「手遅れです」


 私は崩れ落ちた。またお説教ですか。何か何時も怒られてる気がします。私は悪くないんです。私のメイドなのに気まぐれでしか手作りおやつを作らないアリシアさんが悪いんです。私は必要なおやつを貯蓄してるだけなんです。


「お転婆王女だ」


「少しは自重すればいいのに。何時も全力で行くからよ…と言うかそれは怒られるでしょう。おやつを回収してるアリスって簡単に想像が出来るよ。バレて無いって堂々と持って行ってそう」


「あれは…良いクッキーだったね」


 ひし‼っと私はシャロンちゃんに抱き付いた。私を理解してくれるのはシャロンちゃんだけです。世界は皆敵だらけなのです。


「でも…勝手に盗っていくのは駄目だと…思う…かな」


 ピンクの髪を弄りながらシャロンちゃんが横を向き私を否定する。もう駄目です。おやつ無しの生活は私には耐えれないのです。一定数持ってないと落ち着かないんです。だってお母様とかよく私におやつ禁止令を出しますからね。こっそりと食べる分は持っておきたいじゃないですか‼


「負けず嫌いでおやつ大好きな所だけは見た目と変わんないよな」


「最初はもっと大人なレディーだと思ってたけど、何時もメイドさん泣かせてるもんね」


「失敬な………否定できない」


 私は普段猫かぶりなのだ。っと全部終わったみたいですね。


「結界を拡大させる準備が出来た。拡張‼」


 ジャーンジャーンと楽器を鳴らしながらクマたちが境界に向かって歩き出す。そして境界に触れる寸前に境界が伸びて、結界が広がっていく。当然建物とかに隠れてた人が驚いて逃げるように飛び出すが、周りに避難してる人を見るとへたり込んだ。安全だと気が付いて気が抜けたのでしょう。

 そして10分程で王都全域を結界がカバーする事に成功しました。


「大丈夫かアリス‼」


「ん、ちょっと驚いただけ。流石に王都全部は厳しいかな。強度は問題なし。魔物はもう王都に入れない。それと出来ればポーションの類が欲しい」


 一気に負担が掛かったが、まだ許容範囲内です。それと王都中に結界を展開したので、お店とかからポーションとかが有ればもっと長く結界を維持できます。しかしゲームではないので飲める量は多く無い。基本的に ポーションは激マズなのだ。私は成分を弄ってオレンジ味とかにしてるけど市販品は飲めた物じゃない。

 それに胃が小さいので多くは飲めません。なので回復出来るのはそう多く無い。


「分かった。直ぐに王都中から集めよう。儂はこれから城壁等の修理を指示しに行くのでここで失礼する」


 王様は護衛の人と何処かへ行ってしまった。孫姫さん無事だと良いですねって大丈夫そうですね。あっちにもかなり…と言うかあっちの方が護衛が多いらしい。

 王様は結構な年齢だから王太子夫妻とその子供の方に護衛を多く配置したそうです。自分はそう長くないので、未来の国王を護るべし。っと騎士達に命令したとか。まあ城が落ちた際に別行動になったそうですが、王都の何処かの拠点で防衛に徹してるそうです。

 そして暫くするとスライムのような者達が戻って来た。全身血まみれで。


「グロイ」


「どんだけ暴れさせたんだよ」


「見れた物じゃないわね。正直不気味だわ」


「…怖い」


 まああれは決定的な火力が無いから体内に侵入して内臓をズタズタにする戦法を取りますからね。基本的に私の開発のアシスト兼防具なので仕方ない。寧ろここまで戦果をあげれたのは素材の強度に依存してるだけなので、普通に作ったらここまで強くはならないんですよ。

 兎に角気持ち悪い見た目に変わったので宝物庫入りです。魔法生命体は疑似生命なので、宝物庫に入れる事は出来ます。

 それと流石にこれ以上はスライムのような者達も限界です。かなり分裂して魔物と戦ったので残存魔力も心許ないのです。暫く休ませないといざと言う時に機能停止しますからね。やはりこれもコストが高かった。低魔力使用の道具をもっと作るべきでしたかね?まあ今言ってもどうにもならないけど。

 

そして三日目の夜。


「イライライライラ」


 私は凄い不機嫌オーラを出してます。何で私がこんな目に合わないといけないんですか。何故皆で買い物に行くはずの休日を魔物如きに邪魔されないといけないのか。何故私が3徹しないといけないのか…これは自業自得だし後悔は無いけど魔物だけは許さない

 絶対に許さない絶滅するレベルで殲滅してやる。魔力さえあれば…魔力さえあれば20万だろうが100万だろうが戦えるのに…。


「イラついてる場合じゃないだろ‼結界。結界にヒビ入ってる‼」


 現在揺り返しが来てます。魔物20万でも干渉出来ない結界がガリガリパキ゚パキいってます。流石に魔法陣を展開して各所を補強して回ってます。ヤバいですね。100人以上も死人を復活させたので想定以上に揺り返しが大きいです。結界の外は物凄い地震が発生してます。

 取りあえず無事な魔術師を魔法陣の上に置いて魔力を供給して貰ってます。流石にこの結界が壊れると王都も落ちるので協力的に行動してくれますね。これだけでもかなり楽になります。取りあえず壊れそうな場所に魔法陣を描いたり人を送ったり徹夜続きでイラついたりで散々な展開ですが結界は保ちそうです。


「がるるるるるる。殲滅してやる絶対に一匹残らず後悔させてやる」


「決して姫様に近づかないでくださいね。平気で噛みつくので」


 昨日の夜辺りからアリシアさんが崇めてる蘇生者達に何か話をして解散させてくれました。これ以上近くに居ると幻想を壊すとか何とか言ってましたが、私は眠いイラつくで話の1割も聞いてませんでした。何やらアノンちゃん達も若干離れ気味です。

 そんな感じで大混乱とは言いませんがかなり慌ただしい夜でしたが、王様も結界維持には全力で支援してくれたのでかなりの魔術師を派遣してくれました。

 まあ結界内では夜も昼も無いですし、外に干渉出来ないので魔物の迎撃も出来ません。下手に外へ干渉されると結界の強度に関係するので今は城壁の強化に専念してるそうです。

 もっとも時間的に壊れた個所を直すのが限界だそうですけど。


「魔力さえあれば全武装を起動して殲滅出来るのに…アリシアさんを使うか…全力でアリシアさんを走らせれば…いける」


「無理ですよ~逃げ場無いじゃないですか。あんな密集してたら逃げる間もなく食われますよ」


 揺り返しも終わり私達の生存が確定したのでさっさと魔力を回復して魔物に復讐する為に結界の外にアリシアさんを押し出そうとしてるのですが本気でイヤイヤと抵抗します。さっさと外に出て私の魔力を回復する為に手を貸してください。


「まだ死にたくないです‼姫様を私のせいで死なせたくないんです~誰か助けて~」


「大人しく外に…わきゃ」


 後ろから羽交い絞めにされました。何事ですか!


「落ち着けアリス。流石にそりゃ無理だろう」


 アノンちゃんだった。それとシャロンちゃんも私の服を握ってる。あれは止めようとしてるのですか?


「早く終わらせて寝るの‼もう限界」


 早く寝ないと…ぐう。


「起きてください‼」


「ガブ‼」


「わきゃ~~!」


 余りにイラついたのでアリシアさんに噛みついた。アノンちゃんのチョップで正気に戻りましたが既に限界です。このままじゃ本気で寝落ちしちゃいますよ。ここで寝たら魔物に食われます。まだまだ苦難は続いてるのです。


「姫様、物凄いスピードで飛空船が王都に向けて飛んできましたよ…あれはアーランドの国旗‼まさか援軍ですか!」


ん?ありゃ援軍じゃないですよ。どう見ても小型の飛空船です。精々50人程しか乗れません。流石にあの程度の飛空船に乗れる人数じゃ援軍にもなりませんよ。と言うか過剰なスピードで内部機関が暴走してませんかね?あのままじゃ墜落します。幸い落下地点は結界の中なので法則を操作し地面を軟化させ、魔力暴走を禁止。これで墜落しても爆散しませんし衝撃も最低限でしょう。

 そして案の定墜落しました。全く無駄な魔力を…結界内とはいえ法則操作は魔力をかなり食うんですよ。私は不味いポーションを飲みながら近づきました。はしたないとか言わないでくださいね。結界を維持するのに魔力は必要なのです。


「ぐぬぬ。この変な空間が無ければ死んでいたな。多分アリスの結界だろう」


「正解。飛空船は直すから大人しく帰ってくださいお兄様」


 まあこんな事だろうと思いました。こんな状況で少数で援軍に来るなんて両親かお兄様位無謀な人で無ければあり得ません。私は最悪死んでもお兄様が居るので問題ないのですがお兄様が死ぬのは不味い事になります。なのでお帰りして貰いましょう。


「アリス‼」


「わきゃ‼」


 よろよろと飛空船から出てきたお兄様は私を確認すると行き成り抱き付いてきました。苦しいです。少しは手加減を…お父様と一緒で興奮してる時は加減を忘れる人でした。意識が…。


「申し訳ありませんが姫様を離してください。気絶したらこの結界が消えてしまいます」


 慌てたアリシアさんが私をお兄様から解放してくれました。寝不足に過労と若干の衰弱のあるこの状態でキツイ抱擁をされるとあっさり気絶しそうです。まあ少しは眠気も飛びましたけど。


「少し痩せたか?全く君の何処に痩せるだけの物があるんだ。この状況だからって食べるのを怠ってはいけないよ。まあ私が来たからにはもう大丈夫だ」


 何の根拠も無い発言です。でも頼りに思ってしまう。若干涙が出そうですが頼る事は出来ません。これは勝ち目が無いのです。私に魔力が残ってれば魔道具を動員して何とか勝てる可能性が出る程度です。しかし秘術とも禁術とも言える【聖域】を発動した代償に私は結界維持以上の魔法を殆ど使えなくなりました。これでは私は何も出来ない。オストランドは私が来るまで魔物を止めるので精いっぱいで勝てる段階では無い。事は既にどう被害を少数に抑えるかの段階に来てます。つまりは王都からどれだけの民間人を逃がせるかです。私は友達だけは必ず逃がすつもりです。その為に転移に必要な魔力だけは絶対に残してます。これで有無を言わさずアーランドの私の部屋に彼女達とその家族程度は逃がせるでしょう。それ以上は…まあ出来るだけの事はするつもりです。


「……帰って」


「…ハア。少しは兄を頼りなさい。そんな捨て犬みたいな目をしてる家族を見捨てれる程私は非情にはなれないよ。ここで君を見捨てるなら国王になっても色々な物を適当な理由を作って見捨てる人間になってしまいそうだ。それに後数日耐えれば父上達が援軍に来てくれる。私は先行してアリスに必要となる物資を持ってきたに過ぎないよ」


 騎士達が飛空船から荷物を運び出している。そこには大型の魔玉やポーションに各種機材…つまり私の活動に必要な物が全部揃ってました。多分グランツさんでしょう。彼しか知らない工具も多く揃ってます。恐らく研究所から持ち出したのでしょう。


「それともう一つ。父上が昔ダンジョンで手に入れた秘薬級の魔力ポーションだ」


 それって飲めるんですか?

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