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53 転生王女は止まらない

 皆と食事を終えて、今日は午後から特進クラスでの授業です。

 基本的に特進クラスで授業を受ける時間は日によって変わります。幼等科のホームルームで一日の授業を説明されるので、そこで普段は何時から移動するのか聞かされます。

 後は特進クラスでの授業が続く場合はその時に日程を説明される事もあります。つまり私に日程と言う物は有りません。


「つまり魔法とは自分の魔力を起爆剤として世界の理に干渉する技術であり、世界に満ちる魔力と自身の魔力の2つが揃わないと発動が難しくなる。自分の魔力を起爆剤とするが、それを元に周りの魔力にも影響を与えてるのが理由だ。当然自分だけの魔力で世界の理に干渉するのは不可能では無いが、発動難易度が数倍から数十倍に跳ね上がる」


 今日は魔法学と魔道具学の授業です。魔法とは何か?何が出来るのか?と言う授業ですが、私はこう思います。魔法は何でも出来る…当然死者の蘇生すら…まあ尋常じゃ無い魔力が必要なので出来ないとされてますけど。

 何が言いたいかと言うと魔力を代償とすれば世界の理に干渉できるのだから明確なイメージと必要な魔力さえ揃えれば大抵の事が出来る技術と言う訳です。

 これはかなり凄い事だ。例えば腕が無くなっても魔法さえあれば治せる…もっとも明確なイメージが必要なので腕の構成を熟知しなければならないが、魔力次第で出来るのは物理現象に反してます。色々ズルい技術ですが、その反面学問が向こうより進み難い環境でもあります。

 魔法があるこの世界で何でリンゴが木から落ちるのかと言う事を考える人が出てこない。何故なら魔法でも落ちるのだから。つまり考えるだけ無駄と考える人も多いと言う事です。


「魔法には具体的なイメージを持たないと安定しない。それは直接目で見るなり知識を深めるなり各個人の特色が出る。一部の人間は見ただけで他人の魔法を理解するようだがな」


 今日も教師は私を見ながら嫌味を言う。私にとってこの世界の魔法は甘い。概念も拙い魔法はその構造も私からすれば見るだけで分かる…基本的に異世界人程魔法が上手いのだ。何故なら火が何故燃えるのか?水とは何か?などを理解出来てるからだ。火種は摩擦で起こせる。小さい火種に酸素を送り込めば一気に燃え上がるし、空気中の水分を集めれば水も出せる。それに電気だって作れる。異世界人がこの世界で生きていけるのも前の世界の技術が進んでる事が多いからだ――当然世界によってはこの限りでは無いけど。

 まあ私が一度見れば大抵の魔法をコピーするのは特進クラスの生徒なら大体知ってる。当然私は避けられますけど。だって自分の苦労を一瞬で水の泡にしますからね。

 だけど私だって日々勉強してます。自由な時間は多くの本を読んだり魔法の修業をしたりしてるので、理不尽扱いは酷いと思うんですよね。


「今日は魔道具の作り方を説明する。魔道具とは核となる物に魔法を込めた物だ。それをさらに使い易いように他の物をつけることがある」


 例えば振動を起こす魔道具を作り、それに歯ブラシを付ければ電動歯ブラシモドキが出来ると言う事です。勿論それ単体で動くのなら指輪にしたりもする。簡単なのは結界や攻撃魔法をアクセサリーに込めるなどだ。

 これが出来れば魔道具職人として生きていけます。基本的に魔法使いは魔道具職人でもあります。

 まあ、さらに細かく説明すると付与魔法と被るのでめんどくさい。実際さほど違いが有る訳でも無いので。


「諸君には火を起こす魔道具を作ってもらう。これは魔道具の中でも基礎中の基礎だ。最低限このくらいは出来なければ魔法使いを名乗れない。尚、この手の魔法が使えない者は外で実戦訓練となるので模擬剣を持って校庭に移動するように」


 魔道具ですか…しかも今更ライターモドキを作れと?よろしい全力で作りましょう。

 私は速攻でノートに設計図を描きだす。途中幾人かの生徒や教師が私のノートを覘きこんだが顔を顰め立ち去った。こういうのを暗号化する人間は多いのです。象形文字すら混ざってるこの言語を理解出来る筈もない。私独自の混ぜ方なので地球の一流の情報機関でも解析されない自信があります。

 ライターモドキなので20分程で設計終了…魔晶石?そんな魔力を込める手間が出る素材等不要です。私は魔玉を取り出す。大きさはオーククラスから取れる魔玉です。まあ特殊素材なので私以外に入手は出来ないけど。

 それに火の魔法を込めると外装を付けていく。見た目は100円ライターが出来ました。倍くらいのサイズだけど。


「アリシアさん出来た」


「…………変な機能を付けてませんよね?絶対に付けてませんよね?」


「ここを調整して起動すると…剣になる‼」


 火力を調整するつまみを最大にすると1メートル程の炎の剣になった。温度は所有者と反対方向から永遠と酸素を強奪するのでこの程度の大きさの魔玉(厳密には違う)ではあり得ない程の火力を誇ります。しかも対峙する相手は酸素が減ってる環境下で対峙する為、妨害効果も出ます‼素晴らしい発明をしました。護身用としてアーランド王国の正規装備に申請しましょうか?常に使うのは酸素の関係上よろしくないので。

 しかし素晴らしいで出来ですね。欠点は切りあうとか出来ないんですよね炎ですから…外部パーツで一時的に物質化させますか?いや、限定的な結界を施し任意で打ち合いも出来るようにするべきか…悩みますね‼

 まあ鋼鉄程度なら速攻で解けますけどね。


「また…ですか。何を作ってるんですか‼小さい火を起こす程度で十分ですよ‼」


「それは当然クリアしてる。野営時の火種からいざと言う時の護身まで出来る万能アイテム。ちょっとお兄様に試し切りして貰って来る」


 窓からお外にダイ…アリシアさんが狂気を孕んだ目でこっちを見てたので普通にドアからダッシュします。まあ足は遅いので地面から数ミリ浮いて移動してますけど。


「おにーーさまーーー‼」


「カモンアリス‼」


外で知らない大人を気絶させてたお兄様に抱き付く。倒れてる見知らぬ大人は恐らく剣技の教師でしょう。私は一切関係の無い授業なのであった事は無いけど。まあそんな事はどうでも良い。まずは私の発明品をお兄様に検証して貰わねば。


「早速作った新装備の検証をお願い」


「ふむ、妹の頼みなら仕方ない。これで竜でも狩ってこれば良いのか?」


 ちょ‼流石に対竜装備じゃないですよ。基本的に竜は火に耐性を持ってる事が多いので怒らせるだけかと。

 それに持って来る間に外部パーツをさらに新素材に換装しといたので使い勝手はさっきより良いはずです。私の作る魔法生命体の材料ですからね。


「使い方はこのつまみをスライドすると剣になるし、最低にすれば小さい火も起こせる。それと起動と唱えると魔弾モードに換装する」


 使い方を教えるとお兄様は躊躇いなく起動と唱える。するとライターが溶けて腕輪型に変わった。魔玉の液体化は既に完成してるので形状変化は雑作も無いのです。


「凄いな…しかしこれだけじゃないのだろう?」


「当然。これはお兄様用に遊びで作った物。ショットって唱えて…強すぎ‼」


 お兄様はまた躊躇う事無く力強くショットと唱える。すると大火球とも言える火炎が出現した。

 流石のお兄様も焦ったらしく、直ぐに腕を空に掲げ、大火球は空の彼方へ飛び去った。

 そうこれは放出系の魔法が使えなくても火球を打てるようにする魔道具でもあるのです。素材にとある混ぜものをした結果、威力は自由ですが際限なく魔力を使用者から奪うので使い方に要注意です。


「これが魔法を使う感覚か…キツイな。私はそこまで魔力は多く無いのだが、殆ど持っていかれた」


「吸魔の宝珠が入ってるから強く唱えると魔力を一気に奪われる」


「何だそれは?」


 お兄様は目を丸くした。確かに知られた素材じゃない…と言うかノリで高密度の魔力結晶を作ってた時の副産物です。

 魔玉にとある加工すると魔力を発生する性質が消え、扱いが簡単になり、魔力を溜める性質の魔晶石になります。私はそれをさらに凝縮して吸魔の宝珠を作りました。基本的に魔晶石100キロに1グラム程度しか精製できませんがとんでもない量の魔力を保存できる代物です。

 当然欠点もあります。これは魔力を溜める性質が強すぎて、ある一定以上の魔力を溜めておかないと使用者の魔力を奪います。

 なので火球の起動時に威力を選べるようにして出力制限を掛けたのですが、強く唱えると威力が上がるけど魔力もかなり食います。

 それと魔法の発動に必要な魔力が1.3倍と若干増えますね。まあ放出系の魔法が使えない人でも自由に…と言ってもこのライターモドキの場合は火を操るだけですが、自由に形を変えたり温度を変えたりできます。


「面白いな。確かにこれなら魔力を溜めておけばいくらでも魔法が使えそうだ」


 まあ魔晶石の使い道何て基本的に魔力の外付けですからね。魔力が尽きれば魔晶石から取り出すのも出来ます。効率が悪いので4割程しか回収できませんが。


「私の魔法生命体の素材を流用して形状変化も出来るから使い道は多い。それに形状変化させなければ吸魔の宝珠は封印状態になるから問題は無い。後で安全圏まで私が魔力を入れておく」


「どれくらい魔力を溜めれるんだ?」


「ん~私の全魔力の300倍くらい」


 めっちゃ魔力を溜めこむ物が出来ました。将来的にはバッテリー代わりに飛空船の動力源になる予定です。最低でも10分の1は魔力が無いと魔力の強奪を始めるじゃじゃ馬ですがかなり有用ですね。これで飛空船の動力問題は解決です。近くに大きい魔玉を置いておけばそっから勝手に魔力を吸い取るので魔導炉とは別の機関として使えます…それに爆散する危険もありませんし。


「恐ろしい程魔力が溜めれるんだな…学園に提出するのは辞めておきなさい」


「分かった」


 私は【クイック・ドロー】で初めの頃に練習で作ったライターモドキを取り出す。見た目はサイズダウンしただけですが、こっちは普通のライターです。


「お嬢様?先ほど魔法生命体とか飛空船の動力源とか不穏な発言が聞こえましたが、そんな物をギーシュ様に使わせたのですか?やはりマダムを呼びましょうか?今お嬢様に必要なのはお嬢様力ですよ。今は枯渇して欠片も見当たらないだけですがマダムに補充して貰いましょう。そうすれば昔のように優雅なお嬢様に戻ってくれるはずです」


 行き成り声を掛けられ後ろを見るとアリシアさんが立っていた。それはもう泣きそうな顔をしてます。どうやら授業を抜け出したのが不味かったのでしょうか?

 いえ違うでしょう。しかし何故この素材の素晴らしさを理解出来ないのか?これは歴史を作る大発明ですよ?これが有れば飛空船何て作り放題です。

 欠点は恐ろしい程に精製コストが高いと言う事ですが、現状この世界で飛空船を作れる技術は無いので仕方ないのです。

 むうアリシアさんはまだまだ教育が足りないようです。まあいずれは慣れるでしょう。取りあえず当主権限でマダムの召喚するのは却下です。


 閑話休題

 まあアリシアさんの小言は無視して新しい魔道具の評価は上々でした。腕輪モードの魔力消費も魔力さえ溜めてれば火限定で魔法が使い放題なのも素晴らしいと絶賛です。これは込める魔法を変えれば使用者もある程度使いこなせるので誰でも疑似的にですが魔法を使えるアイテムです。早速お父様に量産…吸魔の宝珠が高すぎるので量産は出来ませんね。

 まあ宝珠自体に使い道が多いのでサンプルケースとしては上々でしょう。教師が嫌な顔をしながら唯のライターを受け取ってました。欲しかったのでしょうが、あれはあげれる程安く無い。魔玉は魔物の素材で一番高いのです。しかも普通の魔物の魔玉はかなり小さい。お兄様の腕輪の宝珠を生成するのに300キロ程度の魔玉が必要なのです。実際にそれを教えたら珍しくお兄様が噴いてた。

 だが仕方ないのです。本来なら飛空船を動かす動力源をどうにか小型化出来ないかと実験してた時の産物なのです。飛空船の動力がそこらで手に入る程安いのですか?と聞いたらお兄様も黙り込んだ。実際これで動かせるだけの魔力を溜めこむ事が出来ますからね。私は日々遊んでるように見えて色々と考えてるのですよ。

 だけど私は考えが足りなかった。それを数日後に体験する。自分がどれだけ甘い世界に居たのかと。

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