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閑話3 メイドの主人観察日記

 どうも皆さんこんにちわ。メイド兼護衛兼監視のアリシアです。最近仕事の忙しさにリアルに死にそうです。

 私が仕えてるのは我が国の元王女にして現副王家当主のアリスティア様です。

 あのお方はとても珍しい感性をお持ちの方です。まずは観察。そして魔法で再現出来るか?そしてそれを魔道具化出来るかしか考えてません。王家や貴族特有の謀略なんて欠片も企む知性は持ってないのです。職人ですね。

 しかし私は護衛兼監視です。監視の任務は私が上級騎士になったので解除されました。それに姫様が国を害する存在になるなら最悪私が暗殺する事も有ったのですが、姫様は権力を露骨に嫌います。本人曰く、今でも十分?あるからこれ以上は研究の邪魔ときっぱりと拒否してます。拒否する理由が残念過ぎます。これは宰相閣下にも同じきらいがあるので影響を受けてる可能性もありますが、興味を持ってないのは間違いないのでしょう。

 今日は姫様の日常を紹介したいと思います。


「…それはブラックホールだよ~地上じゃ出しちゃいけないよ~」


 謎の呟きをしつつも睡眠中の姫様を起こすのは私に与えられた重要な任務です。もし起こし方を間違えれば普段大人しい姫様とは全く違う猛獣のような寝起きをします。基本的に寝起きは機嫌が悪いお方です。


「姫様、そろそろ起床の時間ですよ」


「………後12時間」


 このまま放置すれば冗談では無く12時間は寝てしまいます。姫様はそこらの大人を超える知性をお持ちですが精神はまだまだ子供です。自由気ままに生きる御方です。なので、ここは心をオーガにしつつ起こさなければなりませんが、先ほども言ったように下手に起こせば被害甚大です。取扱い注意の姫様です。


「不敬極まりない起こし方なのですが、これ以外で大人しく起きてくれないんですよね…」


 本来王族の目の前で尻尾を振る…しかも顔の近く何て斬首されても文句は言えないのですが、王妃様も姫様の寝起きは洒落にならないと特例で認めると言う命令を受けてます。なので顔の近くに尻尾を近づけ、フリフリします。

 何故か姫様は私の耳や尻尾に謎の情熱を向けてます。これは生まれて初めて会った時から変わらないもので、陛下すら見破れない私の【隠形】を尻尾や耳限定で察知する程です。なので寝てる最中でも手が届く範囲に来ると瞬時に掴みに来ます。

 本日も手の近くを尻尾が通った瞬間、私の動体視力を駆使しても霞む程のスピードで毛布から手が伸びてきて私の尻尾を掴みました。

 ちなみに獣人の尻尾は気安く触る事は許されません。本来伴侶か親以外は触れる事も許されないので他人が触ればプロポーズと取られます。まあ姫様には教えませんよ。地味に心地よいので…但し、朝の場合はそのまま毛布に引きずり込まれますが…


「いっだだだだだだだだ‼」


 そのままベットに引き込まれれば痛くは無い。しかしそれでは姫様は起きません。それにベットに引きずり込まれれば、抱き枕扱いされたり、幼い子供のように口に入れたりされます。ああそう言えば未だに幼い姫様でした。余りにアンバランスなので偶に忘れてしまいます。


「……五月蠅い」


 5分程抵抗を続けるとようやく起きてくれました。ボサボサに寝癖のついた髪を払うと私を半目で見てくる姫様…今日は失敗ですかね?


「……ぐぅ」


 どうやら未だに覚醒してないようです。座ったまま寝てしまいました。今度も近くに尻尾を出しますが、手を動かした瞬間に尻尾を離す。それを繰り返す事5分程でようやく起きてくれました。


「うみゅぅ…アーシャさんおはよう…」


 噛み噛みの姫様マジ可愛いです。眠そうな顔に少し涙目の姫様は激レアです。もしこの瞬間を絵にすれば城に居る騎士団の奴等が破産してでも買おうとするでしょう。まあ私が居る限りそんなマネはさせませんが。この瞬間に立ち会えるのは私と陛下と王妃様だけです。王太子殿下は姫様の貞操に危険がある為、一緒に寝る事は出来ません。何が殿下を駆り立てるのか私も分かりません。


「おはようございます。お水をどうぞ」


寝起きの姫様は危険物です。早急に目を覚まして頂かないといけません。城に居る時は割と陛下が朝特攻を掛けて切れた姫様に素手で壁にめり込ませられます。あの細腕の何処にそれだけの力があるのか分かりませんが、完全に目が覚めると本人も覚えてないので教えない方が良いと判断されたので私は何も言いません。


「ん、ありがと」


 冷たい水を飲めば割と目が覚めて安全域になります。この状態なら少し寝ぼけてるだけで危険はありません。精々甘噛み程度です。

さて寝起き凶暴の姫様ですが、普段はとても大人しい御方です。じっとしてる時なんかは気品溢れてて思わず涙が出てしまいます。出来ればずっと大人しく座っててください。

 しかし私の願いは叶いません。何故なら姫様が読んでる本…いえ、あれは姫様の書いてる異界の書とも呼べる代物です。姫様の前世の文字を10数種類混ぜ合わせた謎の文字で書かれており姫様以外では異世界人ですら読めないだろうと言ってました。何やら地球と言う世界の古代文字も多く入ってるので視てるだけで頭痛がしてきます。

 内容は姫様考案の魔道具の事らしいのですが中身を見ても学者では無い私には何が何やら分かりません。しかも盗難・コピー防止の為とかで本人以外が触ると白紙化して何も見れないとかどれだけ秘密主義なのでしょうか?


「そこまでする必要があるのですか?」


「この世界で作れば世界を取れる物ばかりだからね」


 話を聞くと姫様の考案する物は基本的に兵器だそうです。しかも異世界でも最新鋭の兵器の知識が大多数を占めてるとか。姫様はそれらから使える技術を取り出して他の物を作ってると教えてくれました。

 そんな話は初耳です。道理で武器の類が多いと思いました。レールガン?何それって思ってたら詳細を聞いて青褪める程の武器ですし、他に似たり寄ったりで泣きたくなります。

 流石の姫様も「ファンタジー感ガン無視の物しか受け継いで無いな~」とぼやいてました。姫様の前世はこの世界最大の謎でしょう。本当に何をしてたのやら。

 城に居る時の姫様は割と忙しいです。基本的に習い事とかが午前中に入ります。午後はケースバイケースで五候の方々と会ったり執務室で仕事の観察兼陛下の逃亡阻止の為の置物をやってる事があります。

 姫様の前では威厳ある父親で居たい陛下は姫様の前では滅多に仕事から逃走しないのです。しかし限界が来ると3階にある執務室の窓から飛び降りて町に逃げます。凄いのはそれにキレた宰相閣下も同じく飛び降りて物凄いスピードで追っていくと言う点でしょう。あの方は本当に文官なのでしょうか?

 最近は戦闘訓練を受ける事も多々出てきましたが、今の所順調です。歳も重ね、殺さなければ戦える強さは既に持ってます。それでいて、魔法の腕は既に一流なので、殺さない戦闘では私は既に手も足も出ません。しかし殺し合いは無理でしょう。魔物ならば多少心が痛む程度だと言ってましたが人を殺すのはまだ早いのでしょうね。

 アーランド王家の人間であそこまでの実力を持ってれば遠からず戦場に出る事になるのですが、まだ数年はそのままでも大丈夫でしょう。既に自分の身を守るには十分過ぎる能力を持ってくれたのでこれ以上は誰も望みませんでした。


「術式解凍【フレイム・バレット】」


 本日は全ての仕事を陛下に押し付けた王妃様と模擬戦をしてます。場所は練兵場です。流石にお二人の魔法戦になると多くの魔法使いや騎士達が野次馬の如く集まります。

 魔法使いは既に自分達を超えてる姫様の魔法を見て自身の向上心に火を付けてますが私と騎士達は違います。心配なのです。あの小さい体でちょこちょこ動いてる姫様が模擬戦では飛んだり跳ねたりしてるのです。もしミスをすれば大怪我しちゃいますよ。姫様は姫様でどうせ治せるから気にしないとばかりに危険な事も平気でしますし、自爆技も混ぜてきます。

 私も騎士達も心は一つです。いざと言う時…主に飛んでる最中に落ちたら地面に激突する前にキャッチしなくては…全員が身軽に動けるように鎧を脱いで直ぐに動けるように構えてます。

 ハラハラして落ち着きません。王妃様も既に姫様の魔法の腕は認めてるので【幸福】を使わないだけで全力で行きます。


「甘いわね。全てを焼消す焔の断罪【火炎葬送】」


 噴き出した焔が姫様を覆い私達からは姿が見えなくなった。流石にやり過ぎです。あれは上級魔法ですよ。あそこまで詠唱を短縮するのは流石王妃様ですが、あれでは姫様が火傷してしまいます。


「幽獄の時計塔よ鐘を鳴らせ。全ての終焉【ディスペル】」


 吹き荒れる焔の棺桶はまるで何も無かったかのように消え去った。しかし高温で焼かれたのは周囲を見れば分かる。しかし姫様には火傷一つ無い所か、服にすら傷一つない。


「結界を張り過ぎよ。一体どれだけ展開したのよ。普通なら結界毎燃やす魔法よ」


「ほんの20枚程張っただけ」


 言葉も出ません。結界を同時に20枚も張ってれば確かに上級魔法でも破れないでしょう。しかしそれを支えるにはかなりの魔力が…ああいくらでも魔力あるんでしたね。流石に姫様も結界で消耗してるようなのが救いです。一体どれだけの魔力を持ってるのでしょうか?

 本日の訓練はその後数分で終わりました。その後も魔法を繰り広げて戦ったのですが姫様の体力が切れて倒れました。慌てましたが疲れただけだそうです。

 普段なら魔法で回復をしながら戦うのですが、まだまだペース配分が出来ていないのでしょう。回復しなければ500mも走れない御方ですからね。


「もう無理…」


 まるで暴行された乙女のような…死んだ目をしてます。因みに姫様は限界を超えるとよくこんな目をしてます。

 嗚呼、昔を思い出しますね。ハイハイする前に飛翔を覚えて飛び回ってた姫様を。あの頃は多少魔力が多いだけだったので10分程で魔力切れで落ちます。

 よく部屋の隅であんな目をしながら力尽きてました。

 今日はこれでおしまいです。放置すると次の日に動けなくなるので念入りにマッサージしてお風呂に入ります。私ですか?勿論一緒に入りますよ。基本的に王妃様と一緒に入る時以外は私が姫様の御体を洗うのです。ちょっと鼻に詰め物をしないと…


「おっふろ~」


「滑りますよ…‼」


 言ってるそばから転んで悶絶する姫様はまだまだ子供です。すぐさま自分に治療魔法を掛けてます。まあ興奮するのも仕方ないでしょう。城のお風呂は大きいです。現在は姫様のお蔭で24時間お湯が出てるので何時でも入れます。城の改造は余り目立ちませんが利便性は確かに良くなりました。練兵場にもシャワー室なる物が設置され、騎士達が大喜びしてます。冬場に水浴びは厳しいですからね。

 それとお風呂場では姫様は体を隠しません。タオルなどは一切無しです。誘ってるのでしょうか?私の理性も限界が近そうですが、もし手を出せば首が飛んでしまい姫様に会えなくなるので、残る理性を振り絞って耐えましょう。

 ツルーンで幼児体型な姫様の裸体を脳内に保管しつつ姫様の体を洗います。最近は少し大きくなりましたね。まあ、平均より小さいのが姫様の悩みらしいです。姫様は「将来はお母様のようなナイスバディ―に成長するから今は苦渋を味わう」と言ってますが私的にはそのままで十分イケます。寧ろ永遠にそのままでいてください。

 お風呂で泳ごうとする姫様を制止し、私もお湯に浸かる。姫様の好みの温度は少し熱いです。姫様は43度くらいだと言ってましたが水の温度なんて言われても分かりません。唯少し熱いだけです。まあ癒されますね。横で100数えてる姫様もレアなので音声付きで脳内保管し、私は癒されてます。

 本来私は姫様の視界に入る事も許されないのですが、こうして幸せを感じて居られるのも姫様のおかげです。まさかこんな自分に幸せを感じる時が来るとは昔の自分が見たら盛大に羨ましがるでしょう。

 さて着替えも済ませネグリジュ姿の姫様ですが、ここから寝かせるのも一苦労です。基本的に姫様は夜になると再び活動期に突入します。しかも研究方面で。

 姫様は無言でノートを取り出すと高速で筆を進めてます。恐らく新しい魔道具の設計を行ってるのでしょうが、一切手が止まる事はありません。迷いなく筆を進めてると言う事は既に設計が終わっていて、それをノートに起こしてるのでしょう。このまま放置すれば宝物庫なる危険地帯に籠って力尽きるまで研究を始めてしまうので無理やりベットに寝かせます。因みにノートの内容は複雑過ぎて私には理解が出来ませんが、こちらも管理が厳しく詳しく見た事はありません。


「寝る時間です。大人しくしてください」


「ここからは私の時間。邪魔は許されない」


 流石の姫様もこういう場では魔法を使いません。なので無理やりベットに入れると本を取り出してベット脇の椅子に腰かけます。私も偶然知った事なのですが子供にベット脇で本を読み聞かせると直ぐに寝入るらしいです。

 流石に姫様には効かないだろうと思いました。姫様はアンバランスですが年相応とはかけ離れてます。そんな子供扱いが通じるのか?と思いましたが他に思いつかずに試した所、効果抜群です。

 こんなアンバランスさが私達を安心させるのです。いくら賢くても私達を必要としてくれますし子供らしさをしっかり持ってくれてます。

 静かに小説を読み聞かせると数分でウトウトしだす姫様。こうなると寝るまでもうすぐです。流石に眠気に抵抗を示す姫様も30分もする頃には寝息をたて始めました。

 私は姫様に毛布を掛けると静かに部屋を出る。今日もこれから護衛や暗部との会合で眠るのは深夜になるでしょう。嗚呼忙しい。ですが充実した日々です。

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