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50 頼み事をされました。

帰国して1ヵ月程経ちました。そろそろ学園に戻らないと間に合わないのですが、王都近くに転移すればよくね?と言われ向こうには魔法陣を描いた3m級特殊な布を竜籠で送られました。これにより対応する転移魔法が使えます。一度行った所に自由に行ける転移はまだまだ使えないので対になる魔法陣間を移動できる限定転移になります。しかも使い捨てと言うある意味魔道具を冒涜する出来なので私は嫌いなんですよね。

 魔道具の利点は繰り返しかつ楽に使える点です。単発の魔道具は好きじゃないんです。何度も作り直しになりますから。


「転移が使えると便利ですよね。普通なら長々と馬車で移動ですから」


「その代り私がめんどくさい」


 普段は投影で魔法陣を出すだけなのですが、流石に距離があり過ぎるので今回は私が特殊な布に魔法陣を描きこんだんです。

 転移は特殊な魔法です。当然魔法陣は1ミリのズレを許されません。もし失敗すれば何処に送られるか分かった物じゃないです。なので作るのにかなり神経を使いましたよ。


「しかもまた面倒事を頼まれた」


 私が残った理由、それは依頼です。まあ冒険者では無く、学者としての依頼ですね。

 依頼内容は何かを作ってくれと言う曖昧な物です。これは私に本当に物作りの才能があるのか?と貴族の人達が首を傾げてる事が原因だそうです。

 確かに年齢を考えれば仕方ない事でしょう。国の予算を使う事になるので、道楽で始められても困る。と言う訳で皆が納得できる何かを簡単に作れないかと言う無茶ぶりを頂きました。よく考えれば私が表だって行動してなかったので魔道具作りは知ってる人が意外と少ないし噂程度です。

 しかし私は某青狸では無いのです。何か出してと言われても何を出せば良いのか分かりません。試作レールガンでも城壁のバリスタの代わりに設置してみますか?属性竜なら一撃で撃ち落とせますよ?と言ったらお母様にお尻を叩かれたし…


「行き成り物騒な物を出すのがいけないんです。何か平和的な発明って無いんですか?」


「持ってない。必要ならその時に作るから私個人が持ってるのは兵器の類」


 面倒ですよね。危ない物じゃ無ければ隠しませんよ。第一生活に不便が少ない地位に生まれたので余りそう言うのを作って無いんです。まあドライヤーとか有ったら楽だなって小物は作りましたけど。

 う~ん。何か便利そうな物…かつ持続的に使える物…ああ城を改造すればいいんですね‼


「お父様思いついた‼」


 私は執務室に駆け込む。室内ではお父様とお母様が仕事をしてました。お兄様は私と一緒に帰るので隅の方で、何かの資料を探してます。


「思いついたか。普段なら速攻で動くアリスティアにしては少し時間が掛かったな」


「この城を改造する」


「思考が一周してないか?」


 お兄様とお母様が可哀そうな物を見る目で見てきますが、私はめげませんちょっと涙目になる程度です。身内にそんな目で見られると悲しいのです。


「いっいや素晴らしい考えだ。私は賛成だな。好きに改造すると良い。どうせ数十年後には私の城になる物だからな」


「今は私達のよ?」


 お兄様が賛成をくれますが、返答にお母様が難色を示した。確かに今はお父様やお母様の物だろう。お兄様の物になるのは何時になる事やら。


「城の景観をぶち壊しにする摩訶不思議な建物にしなければ俺は良いと思うぞ」


 と言うお父様のお言葉を頂いたので、計画書を渡す。

 内容は城の内部に魔導炉を設置して、城門や各部屋のドアを自動化する事。そして魔道ポンプを設置して城の多くの場所に水道を設置する事です。

 魔導ポンプと蛇口には浄水、解毒の魔道具をつける事でいつでも清潔な水を簡単に手に入れられます。水源は城の給水に使われてる川です。

 それに各種明かりをLED的なライトに変更。これで夜でも昼間のような明るさを手に入れられます。後は魔晶石を使った懐中電灯的な物ですね。これらは全部魔導炉から魔力を供給されるので魔法使いが魔力を補充する必要はありません。懐中電灯も充電器のような物を作ってそこから魔晶石に魔力を補充します。


「これは酷い」


「ちょっとのレベルじゃないわね」


「やはり作ってたか」


 魔導炉の平和的利用法ですよ?まあもう少し出力があれば王都全体を覆う対物理、対魔法の結界を常駐出来るんですけどね。流石に未だ低出力の魔導炉しかないのでそこら辺の利便性を上げる事で我慢しましょう。どうせ、魔導炉の出力が上がればそれと交換すれば良いんです。

 三者三様な返答を無視してその場でプレゼンを行う。これらの利便性や明かりの充実により侵入者も見つけやすいと言う利点や今後の発展性…つまりは魔導炉は取り換えれると言う点などもアピールします。


「しかし学園に帰るまでに間に合うのか?それなりに大規模工事になるだろう」


「ならない。大体魔法で設置するし、作るのに時間はかからない」


 念動を改造して作った魔法で私は触らずとも大抵の物は作れます。つまり物を作るのに私の体力や身体能力は必要ない。明確なイメージをもってすれば大抵の物は作れるんです。それに魔法を組み込むのは流石に自分でやりますが、そこは慣れてます。

 後は城の強度に支障の無い部分に穴をあけて水道用の水道管を設置するだけですし明かりはオリハルコンを樹脂で囲った電線的な物を各部屋に配置すれば魔導炉から魔力を供給出来ます。ミスリルよりオリハルコンの方が魔力伝達率が高かった。普通は逆かな?とも思ったけどオリハルコンの方で問題ないでしょう。あれなら私の宝物庫に在庫が結構残ってますので、細く伸ばしてしまえば問題ないです。


「と言う訳で私が損をする事になったから予算は全て貰っていく。報酬は私に直接で」


「駄目ね。アリシアに渡しておきます」


「アリスにお金を渡すとまた資材補充に全部使うだけだからな」


 ぐぬぬ、それでは私の持ってるオリハルコンが減ってしまう。計算上では数百キロ程残りますが高級素材ですよ?まあゲームと違って伝説レベルじゃない。お金をかければ手に入ると言うレベルです。


「使った資材分だけこちらで用意する。報酬は貯金だな」


「貯金は良いけど自由にお金を使えないのはおかしい。副王家当主として正式に抗議する」


「そう言うのは成人してから言いなさい」


 交渉の余地は無いそうです。無報酬では無いけど報酬は自由に使えない…理不尽です‼いずれは鉱石なども自分で生成してやりましょうか?私の野望がどんどん膨らみますが、それを察したのかお母様が凄く怖い笑顔でこちらを見てくるので瞬時に萎えました。怖すぎる。

 と言う訳で工事開始です。途中でグランツさんが何故か作業着で手伝う‼と来ました。しかし他人の手を借りる作業でも無いのですが、ドワーフも土属性の魔法の使い手なうえ、グランツさんは物作りのスペシャリストです。

 何が得意なのではなく、物を作る事全てに特化してるある種の天才さんなので城の強度測定や設置場所のアドバイザー兼私の作業の観察だそうです。


「それでどうやって埋め込むんだ?穴を開けてたら日が暮れるぞ。嬢ちゃんも学園に戻るんだからそんな手間暇掛けないんだろう?」


「当然。魔法で埋め込む。土魔法で一時的に壁を開けて埋め込んだら閉じる。出来ない場所は穴を開けて管を通す。資材は私が持ってるから強度に支障が出る場合は教えて」


「了解だ」


 そんな訳で工事再開。グランツさんがちょくちょくここは駄目だとかここはこうしろとか色々教えてくれますがかなりの速度で工事は進みます。因みにこの管は繋ぎ目は無いです。数m感覚の管ですが魔法で一体化させてるのでネジとかでは止めてません。基本的に土の壁なら埋め込みでそれ以外の木壁とかなら穴を開けて短距離転移と透視の複合魔法で一気に取り付けを行います。3日ほどで設置完了しました。

 ライトの設置はグランツさん率いるドワーフ部隊が手を貸してくれたので私は魔道具と配線を渡しただけです。

 残りのドアは少し面倒だった。何が面倒だと言うと、ボタン式にするか、感応式にするか迷ったのです。なので両方付けました。感応でドアの前に立てば中に人が来た事のアラームが鳴ります。因みにアラームは変えたり止めたりも出来ます。

 そして許可ボタンを押せばドアが開きます。まあこれは執務室等の部屋だけで普通に入れる場所は人がドアの前に立てば勝手に空きますし、一定時間で勝手に閉まります。それとドアの横のボタンを押せば開いたままにも出来る仕組みです。

 ちなみに某国王対策で、私達の自室などは強化魔法が扉に付与されてるので今までのような突撃粉砕はさせません…多分無駄だけど。


「うちの息子の嫁に欲しいくらいだぜ。今からでも工作隊の隊長はやっていけるな‼」


 ガハハと笑うグランツさん。確かに早かったがドワーフ部隊の活躍も大きいですよ?一人だったら倍の時間が掛かりますから。

 それとアルバートさんの要望で、謁見の間や宝物庫等の重要施設に通じる通路にも強化付与された隔壁を設置する事になりました。これはカードを隔壁の横にある魔道具に読み込ませると上から重厚な隔壁が降りてくる物です。


「それで魔導炉は何処に置くんだ?場所次第じゃ警備のルートも考え直しだろ、あれは盗まれたら洒落にならんからな」


「例の場所に設置する。それと知ってるのは極少数だけにして貴族の人達にも教えない。だって本気で隠すなら隠し場所を誰も知らないのが一番」


 真実は闇の中。どうせ魔導炉を貴族に見せるつもりは無いのです。なので地下に建造中の研究所に設置します。どうせ動力炉的な場所は最初に作ったので仮で置いておきましょう。

 工事は20日程で終わりました。最後の方は工期が早すぎて蛇口等の魔道具の生産が追い付かなかったので私は急きょ生産に掛かり切りでグランツさんが工事を取り仕切ってくれました。


「作業終了。私は明日にでも学園に戻る」


「ご苦労さん。毎週戻って来るんだぞ?絶対だぞ、俺は庭で待ってるからな」


 仕事をしてなさい。どうせ日曜的な日には戻ってきます…ハァ。休みなのにそんなに休んでない…あ‼お土産買って無い。アノンちゃん達に何て言おう…今から作りますか…

 その後、水晶を変形させ、青い鳥の置物を作りました。アーランドは元々人の住んでいない場所を開拓して出来た国なので、国旗も蒼い生地に渡り鳥です。なので、渡り鳥の置物は割とポピラーな代物です。

 小さい物なので割と可愛く出来ました。初めての同い年のお友達なので嫌われたくないですね。これで大丈夫かな?何か他にも用意した方が良いのかなと作った後もうろうろしてたらアリシアさんにそれで大丈夫と言われました。

 まあこの青水晶もそれなりの値段がするので決して手抜きじゃない。それと失敗作になってしまうが結界の魔道具を送っておこう。これは超強力な結界を少しの間だけ展開出来る代物ですが代わりに一回で壊れる腕輪です。強度がいけんのです。もっと耐久性のある素材を生み出さねば…。

 まあこれで何か事件に巻き込まれても一回は助かる筈です。私の父が試供品で持ってきたのでおすそわけと言えば大丈夫でしょう。どうせ私が魔法を使えるのは知ってるので私が持つ意味は少ないです。


「もう夜ですよ~良い子は寝る時間です」


「私は意外と悪い女だからまだ寝る時間じゃない」


「今日は赤い老騎士と塔の王女と言う本を持ってきました。塔に囚われた王女を通りかかった老騎士が助けるお話です。因みに恋愛シーンはありません」


 また微妙な物を…そう言うのって普通はラブシーンの一つでもある物では?と思ったら本の表紙に検閲済みと書かれてました。

 今日は30分耐えました。耐えすぎて途中から何を話してたのか記憶に無いけど耐えたんです‼

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