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47 上級騎士

 アーランド王国には騎士爵が2種類ある。一つは通常の騎士、つまり貴族の最下級。そしてもう一つが上級騎士。

 上級騎士は一代限りの爵位ですが一軍を率いれる特別な爵位です。上級騎士爵になるには王族から認められる事が必要で、上級騎士は王族しか任命出来ない。つまりは近衛のトップです。

 本来公爵になるはずだった私には選ぶ事は無いはずの物でしたが副王家を興した為、私も選ぶ事になりました。

 まあ副王家と言っても未だ未成年の私には副王としての役職はありませんし、副王の役職は王の補佐なので今すぐ役職が必要な訳でも無い。しかし正式に副王になってしまった私は本格的に公の場に出る事になるのでどうしても近衛である上級騎士を任命しないといけないのだ。

 しかし私は未成年。任命権は持ってても保護者兼後見人のお父様の要請を受け、お父様が選んだ人を選びなさいと言われました。そして送られてくる本。中を見れば候補者のリストですね。しかもあろう事か最後のページにはページ一枚分を使ってドラコニア国王と書いてありました。国王が上級騎士になるとか何を考えてるのでしょう。私が任命しても無効ですよ。だってお父様の方が上位者ですから。

 しかし考えた。これはお父様の目の前で最後のページに任命のハンコを押してお父様のハンコを貰えば任命できるのでは?アリシアさんを。

 仕掛けは簡単。お父様に気づかれないように水魔法を駆使してインクの形をアリシアさんの名前に変更、そのままサインしてお父様に渡す。運が良ければ喜んだお父様がそのままサインして国王認定の上級騎士にアリシアさんが任命されるのではないか?と。


「ぬおおおおおおおおおおおお」


 結果は大成功。大喜びのお父様は何も考えずにハンコを押してしまった。名前がアリシアさんに変わってるとも知らずに。

 私は宰相さんに見せると証拠物件を【クイック・クローズ】で仕舞いました。正式にハンコが押されてる以上、アリシアさんは今後、国では無く私に仕えます。


「大成功」


「考えたわね、これはドラコが完全に悪いわ。良い教訓になったでしょう」


 お母様も私が他の人を選ぶとは思ってなかったようで、何かしらの行動を起こす事を予想してたようです。因みにお兄様は何故私が選ばれないんだ‼とお父様の横で嘆いてます。この親子はそっくりです。

 アリシアさんは現在他の所で何かの打合せなので居ません。後で驚かせましょう。私はお母様の許可を貰うと宰相さんにも話を通す。邪魔をされると困るのです。


「私は認めませんよ。王国の歴史上、女性の上級騎士は居ません。それは女性より男性の方が身体的に優れているからです。いざと言う時に主を護れないのなら上級騎士になる意味はありません。それにこういう物は情では無く実力で選ぶ物です。長い付き合いだから選べば良いと言う事ではありません」


 やはり認めませんか。しかし今日は準備をして来たのです。


「じゃあこの疲れが癒させるリフレッシュバンドは要らないんだ。仕事大好きの宰相さんが疲れで考えが鈍らないようにって作って来たのに…」


 仕事大好き宰相さんは常に目元に隈があります。なので体力を少しづつ回復する魔道具を作って来たのです。これを付けてれば体の疲れや病気予防に寝不足の肌荒れも大分防げます。


「そうですね。前例が無いから許されないのではなく、柔軟に考えを持たねばなりません。なのでこれは前例を作る良い機会なのでしょう。アリシア卿は実力もそれなりにありますし私は良いと思います。後それを陛下と殿下の分も貰えませんか?最近仕事の進み具合が落ち込んで来たので」


 速攻で手のひら返しをする宰相さんとその後ろで虚ろな目をしたお父様とお兄様。どうやら仕事漬けの日々は終わらないそうです。

 そして私はアリシアさんゲット‼これで私に対する無礼の数々もなりをひそめるでしょう。そしてアリシアさんは私の部下として私の秘密は他の王族にも話せない。完璧ですね。お父様とお兄様が犠牲になったがお父様は元々仕事を溜めこむ人なので自業自得でお兄様はちょっと可哀想だったので頭を撫でてみた。


「ふふふ書類がなんだ‼私は後1万枚でもイケるぞ‼」


 何故か速攻で復活したお兄様は超スピードで書類を捌きだした。因みに今凄い忙しいのは無理やり作った副王家のせいです。まあ私のせいでもあるけど私は公爵でも何も問題は無かったので自業自得です。別に公爵でも家族は家族だと思うんですよね。公の場では今でもお父様達に頭を下げてるのは変わらないのに何が違うのかよく分かりません。

 それとお父様は指を銜えてこっちを見ないでください。見つめ続けられる事10分位で根負けしてお父様にも頭をナデナデする事になった。そう言えば撫でるのって初めてですね。余り子供らしくなくてごめんなさい。


「ぬおおおおおボルケン、さあ書類を寄越せ‼」


 2人の超スピードの書類捌きに魔道具で疲労から回復した宰相さんがどんどん書類を渡す。皆充実した生活をしてるようです。


「と言う訳でアリシアさんは今日から私の騎士になったから。勝手に私の情報をお父様やお母様に報告するのは認められない」


「何で私が上級騎士なんですか‼凄い初耳ですよ。これ以上貴族に嫌味を言われろと?姫様は私が嫌いなんですか?」


 正式な任命は今度ですが既に決まった事なのでアリシアさんに報告するとアリシアさんは私の予想通り取り乱した。まあ女性の上級騎士って王国初ですからね。暫くは私に取り入ったとか言われるでしょうけど私的に全く知らない人を傍に置きたくないんですよね。日常生活にこれ以上のストレスは要りません。


「断れば不敬罪で逮捕監禁して代理人が任命を受け入れる事になる」


「それって断っても私以外の人が私の代わりに受けるって事ですよね⁉」


 そうですね。体調不良を理由にアリシアさんの代わりに誰かに代理出席させます。逃げ道なんて作りませんよ。このまま生涯私の傍に置く予定なんですから。


「アリシアさんは私と一緒に居たくないんだ…嫌われてたんだ…」


「いえ大好きです。しかしこれは認められませんよ」


「でもお父様もお母様も宰相さんも許可を出した。私の作戦勝ち。既に邪魔をする人は居ない。もし居たらお父様に何とかして貰う。だって許可出したのお父様だし」


 ふふん。恨むなら喜びのあまりに書類を確認せずにハンコを押したお父様を恨んでください。私はお父様の性格からこうなるかもと思って行動しただけです。

 尚、今回の件は宰相さんの怒りを軽く買ってお父様は宰相さん直々に再教育だそうです。確かに書類の確認もしないで許可を出すのはいけませんね。


「何を綺麗に纏めてるんですか‼どう考えてもアウトですよ」


 結局アリシアさんは任命式の当日まで慌て続けた。

 騎士生活から遠のいて既に7年も経ってるアリシアさんは武術の腕こそ衰えて無いそうですが貴族生活からは大分離れて既にメイド生活に慣れてしまったそうです。なので上級騎士の任命式に着るような服など持ってないとささやかな抵抗もしましたが、王都で一番の服職人であるパールさんと言う80歳の男の人は私の知り合いです。前に疲れが抜けないと町で休んでたのでリフレッシュバンドの前身でもある癒しのペンダントをあげた事がきっかけで仲良くなりました。今回の件でペンダントからバンドに交換してあげたら喜びましたね。ペンダントはバンドよりも微々たる効果でしたから。

 歳を気にせずあっという間にアリシアさんの儀礼服を作ってくれたパールさんは最近で一番の出来だと褒めました。お礼にアリシアさんの任命式を2階の一室から見れるように手配しときました。お父様に頼んだら元々信頼できる人だから許可とあっさりOKです。


「何やら分不相応な感じがします」


「正式に私から下賜した物だから大事にしてね。それだけでも金貨100枚くらいするから」


 そう言うとアリシアさんが絶句した。まあ私からの正式な贈り物…つまりは新副王家が正式に送った初めての物です。これは私がどれだけアリシアさんを信頼してるかと言う事にも繋がるので奮発しました。正確には仕事漬けで不眠に陥ったお父様にリラックスして眠れる魔道具を設計図毎売っただけです。もう少しで仕事も落ち着くそうです。

 そして始まる任命式。アリシアさんは周りの嫉妬の視線を受けて既に半泣きですが、決まり通り私に剣を渡す。私はアリシアさんの肩に剣を横向きに置いて自分に忠誠を誓うかを問う。


「我が生涯は全て姫様に捧げます」


 既に姫と呼べる物なのか分かりませんが呼び名は皆姫って言いますね。何人かはクスクス笑ってるので本来は違うのでしょう。

 私は上級騎士の証である羽根の形をしたブローチを渡す。アリシアさんはそれを受け取ると胸につけて周りの人に見せるように振り返る。

 意外と拍手も多いですよ。特に女性騎士達は割と祝福してます。これは前例となりますから、彼女達にも上級騎士になれる可能性が生まれたと言う事です。因みに上級騎士ですが多すぎると判断されなければ何人でも任命できますが私はアリシアさんだけで十分ですね。後アリシアさんを頂点に私の親衛隊が結成されるそうですが、それは私も関与しません。アリシアさんが自分で決めるそうです。黒服集団的な怪しい人達で無ければ良いのですが…


「上級騎士就任おめでとう。これでアリシアさんは私に対して不義を行えないよね?今後とも共犯者として一緒にお母様いにばれないようにこれをしよう」


 就任式も終わり、部屋でぐったりしてるアリシアさんに私は追い打ちをかける。渡したのは地下研究所の設計図とお父様の秘密同意書だ。


「こんな事を…そうですよね私姫様に逆らえないんですよね‼もう良いですよ従いますよ。一緒に怒られましょう」


 城の地下を大改造するのはお父様が認めてもお母様は認めないだろう。見つかれば埋めろとか言われそうです。なので完成してもうどうにも出来ない段階にしてしまえば私の勝ちです。後で怒られるのもアリシアさんと一緒なら半分の被害で済むと言う最高の状況を作りました。

 まあお父様やお兄様も噛んでるので半分以下に出来る筈です。これで私の覇道の邪魔は排除されました。

 私同様慣れない貴族活動にぐったりしてた所に爆弾級の衝撃事実に既にやけくそ気味のアリシアさんは泣きながら私に協力する事を誓った。アリシアさんの性格上裏切りは無いのでスーパーな味方兼助手をゲットしたのです。

 舞台は揃いました。それでは私の本領を発揮しましょうか?既に手札は揃ったのです。これからは本気で行きます。


「ですが、最初に報告しなければならない事があります」


「何?」


 今後の展開を考えてた私にアリシアさんが突然真剣な顔で話しかけてきた。


「姫様は現在身柄を狙われてます」


 …………身に覚えの無い敵は無用ですよ…

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