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42 英雄病。そして取り戻す力

 今日はやっと帰って来たイグナス老師の診断の日です。老師はお父様の知り合いらしく…お父様の知り合いって意外と多いんですよね。昔は冒険者だったので各国に知り合いが居るらしいです。まあ昔は王道物の勇者様みたいな物だったのでしょう。なのでこの世界一の医術を持つ魔導士のイグナス老師に健康診断を頼んだそうです。

 別に私が健康なのは確認済みなんですけどね。しかしアリシアさんは私が何処まで確認してるのか理解してない。私は自分の血から色々鑑定出来るんですよ。何故出来るか分かりませんし、言っても何を言ってるんですか?と首を傾げられた。確かにこの世界の医術は全然進んでない。なので仕方ないのでしょう。子供の私より世界的に有名なイグナス老師の診断の方が信頼できるのでしょう。


「ふむ。これと言って病気の類は無いようだが…魔力資質がのぉ…」


 やはり何も問題は無いようです。老師は医術に特化した固有魔法を持ってるらしく、それを使って色々と診てくれたようです。ですが他に何かあるのでしょうか?歯切れが悪いです。


「何かあるのですか‼」


 アリシアさんが声を荒げる。まあ私の健康はそれだけ重要なのでしょう。耳元で大きい声を出した事は不問にしてあげます。


「いや…直ぐにどうこうと言う問題じゃ無いのじゃが…よくぞ生きておったなと。アリスティア嬢は所謂英雄病じゃな。普通ならこの歳まで生きては居ないがここまで無事に生きていれば何も問題ない」


 英雄病とは文字通り英雄がなる病気らしいです。先天的に魔力が多く、その魔力に耐えられないと生まれて直ぐに死んでしまう病気らしい。だけどその魔力に耐えれる強靭な体を生まれつき持ってたり何かしらの要因で生き残ると大人になった時に他の人とは比べられない程の魔力を持てるそうです。私の場合は生まれた時点で魔力切れを起こし、その後も割と魔法を使ってたせいで魔力の多さを消費する事で耐えたらしいです。これは英雄病の患者には効果的らしいです。

 魔力が多くても、それが体を害する程溜まる前に消費すれば何も問題ないそうでアリシアさんもそれを聞いて落ち着いたようです。確かに魔力切れを起こせば数日から1週間程魔法が使えませんからね。


「じゃあ姫様は何とも無いんですね?」


「そうじゃな。ここまで成長すれば命に係わる事はあるまい。しかし魔法を封じるのは辞めといた方が良いの、無理に封じれば中から食い破られるのがオチじゃし、下手をすると体を害する」


 つまり魔法学的に私の魔力を封じるのは駄目と言う事でしょう。


「それと魔法の負担については魔力回路の成長不足じゃな。本来成長と共に回路も強く成るのじゃが、アリスティア嬢はそれが強くなる前から魔法が使える。じゃから体に負担が掛かってるのじゃろう。これは時間経過を待つしかないの」


魔力回路…ヤバい聞き流してた所です。確かに基本中の基本でした。アリシアさんもギロリとこっちを見てきます。流石に私が悪いんです。これは…ふむ。


「要は魔力回路さえ何とかなれば前のように魔法が使えるんですよね?」


「まあそうなるの。今は魔力回路が出力に耐え切れないのが魔法の制御を乱してるだけじゃからな。だがそれは時間の経過を待つ以外は…何をしとるんじゃ?」


 即座に【サーチ・アイ】を発動し私の体を見る。しかし魔力回路はある意味幻想器官なので見ても分かりません。しかし今日まで調べた魔法の中に有った魔眼を私は再現できてます。


「瞳に映すは幻想世界。世界に連なる世界を見せよ【疑似オルタナ魔力眼】」


 魔力眼。それは魔力の流れを見る魔眼です。これを【サーチ・アイ】に掛けると私の体が透けて魔力の流れが見えてきた。

 確かに弱い…と言うか細いです。しかも魔力が漏れてる。恐らく私の魔力が魔力回路の強度以上に多いのでしょう。なので魔法を使う度に魔力が漏れて流れがおかしくなってるのでしょう。つまりこれの強度を上げれば良いと。


「材質解析…バイパス構築…構築成功。及び魔力回路増強…」


「なっ何してるんですか‼」


 アリシアさんが私に触ろうとしてますが手を出して止める。イグナス老師も椅子から立ち上がってます。私が何をしてるのか見てるのでしょう。しかし現在私は物凄い集中してるので相手にしてる暇が無いのです。

 魔力回路はおおざっぱで疑似魔眼で見ると棒人間ですが私は血管のように幾つものバイパスを通していく。そして一本一本の回路を増強する。これは体の改造でもあります。これが成功すれば私は在りし日のように自由に魔法が使えます。最初の頃のように呼吸するように魔法を行使できるのです。


「魔力回路増強完了…魔力の通過を確認。魔力回路再構築終了」


 バイパスや全ての回路に魔力の流れを通すと膨大な魔力が溢れ出した。これは今まで弱くて細々とした魔力の流れが一気に増えた回路のせいで濁流となって体中を駆け巡ってるのでしょう。そして私の【変化】もパシュ‼と吹き飛びました。


「………何したんですか?」


「魔力回路の増設と強化。これで私は無詠唱を取り戻した」


 私は近くのコップに【念動】を無詠唱で掛ける。するとコップはブレる事無く私の手に飛んできた。

 さっきまでの私にはこんな細かい作業は出来ませんでしたが魔力の流れが正常に動き必要な魔力も直ぐに出せるようになった為、私の想い通りに全ての魔法が使えます。


「まさか…魔力回路に干渉したのか…そんな事は儂も聞いた事が…それに無詠唱じゃと」


「お帰り…私の魔法。これで私は完全な魔法使いに戻った」


 魔力が溢れます。生まれて暫く感じてた全能感。使える魔法は全て私の意のままに使えます。今までの私とは大違いの力です。しかも幼児の時と違い、今の私は魔力量も十分。これにより宝物庫内の全ての武装も私の思うままに使えます。まあ別に何かする気もありませんけど。


「…それでどうなさるのですか?その魔力を使って悪さも起こしますか?」


 振り向くとアリシアさんが不機嫌そうにこっちを見てました。まあ全能感が有った所で悪い事なんてしませんけど。私はこれで研究が捗ると思っただけです。


「これでアリシアさんに邪魔されずに研究が出来る。もはやお母様でも私は止めれない。お母様の【幸福】は既に見当がついてる。当然対策も思いつく。これで誰も私の邪魔は出来ない」


 悪役みたいに言ってますが、ただ私の実験や研究を擽ったりほっぺを抓ったりして妨害出来ないと言ってるだけです。そしてそれを完全に理解したアリシアさんは顔にびっしりと汗を掻いてます。それの意味を理解出来たのでしょう。

 そして力を完全に取り戻した私は止まりません。それは私が赤ん坊の時を知ってるアリシアさんは理解してるのでしょう。何故なら私はハイハイより先に飛翔を覚えて飛び回ってましたからね…まあ5分程で力尽きて王女が床に落ちてると城で噂になりましたが。

 しかし今ならその失敗を繰り返しません。今の魔力なら私は国まで飛んで帰れます。さあ、実験を研究を…捕まりました。


「これは本格的に再教育を施さねば姫様を止めれません。マダムをこっちに呼ぶのも検討しなければ」


「ふふん。私は既にマダムも怖くない。これでアーランドをもっと発展させてみせる」


 さて何を作りましょうか。町や街道の開発用にシャベルカーとか色々作りましょうか?それとも国境沿いの砦を難攻不落の要塞に改造しましょうか?魔法を思うように使えなかったので出来なかった事…まあシャベルカーは作れるけど。出来る事が一気に倍増しました。


「姫様が愛国者なのはありがたいですが、大人しくしててください。それにそろそろ城に帰る時期ですよ?」


「城には帰らない…お母様が怖い」


 絶対にお仕置きされます。私は城には戻りませんよ。

 もし、戻るとしたらお仕置きなしと正式に書類にして。お父様のサインを入れて貰わねば絶対に戻りません。言葉じゃ信用しません。一国の国王が措置無しと明言して証拠を提出しなければ私は帰りません。無論マダムの再教育も無しです。

 これは先日の手紙にも書きました。返事はお父様が全力で何とかするから帰ってきてくださいとお父様から手紙を貰いました。つまりは私の一人勝ち。まあ書類はまだなので揉めてるんでしょう。


「今まで以上にやりたい放題を許す気は無いんですけどね。それに王妃さまから縛ってでも連れ帰れと命令を受けましたし」


「…もう聞きたくない」


 お父様…貴方だけが頼りです。


「それでどうやったのじゃ?儂には何をして魔力回路を強化したのか見当もつかん」


 ん?さっきのですかこうやってこうとやったと言ったら首を捻られた。説明って難しいです。かと言って専門的に魔力回路の材質を確認しそれを疑似的に作り体中に張り巡らせたと言ったらさらに首を捻られました。どう説明しろと?


「古代技術と言われた方が分かり易いくらいじゃな。それは他者に使う事は可能なのか?それが出来ればどんなに魔力が少なくても魔力さえあれば魔法使いに出来る技術じゃぞ」


「体に自分以外の魔力を流すのは高等技術。元々人間に無い物を植え付けるから自分になら兎も角、他人にやるのはおススメしない」


 私も汗でびっしょりな程魔力制御が必要です。しかも失敗しても自分なら自分の魔力なので最低限の被害で済みますが、拒絶反応でも起こされるとどうなるか私にも分からないと言うとがっかりしたようです。実際は研究次第で作れそうなんですよね魔法使い。しかしそれは既に人造人間の域で作ったとしても兵器にされるのがオチなのでしませんよ。私はそこまでマッドな科学者ではありません。なので存在自体話しません。まあ作り方と言えば魔法使いの持つ因子を遺伝子に組み込むだけですけど機材も無ければ出来ない所業なのでこの世界でそこまで行くのは数百年後でしょう…文明がまた滅びなければと言う条件が付きますが。

 実際古代の時代は人造人間や魔法的なアンドロイドは居たそうですから。


「そうか…分かった」


 イグナス老師も危険性は分かってるのでしょう。無理やりどうこうとは考えていないようです。恐らく魔法が上手く使えない人や放出系の魔法が使えない人を普通に魔法使いにできれば?と思ってるのでしょうけど、難しいと思いますよ。受精卵に魔法使いの因子を混ぜる方が有能な魔法使いに出来るくらいですから…まあそんな事をして魔法使いを量産すれば古代の魔法文明と同じ末路を辿るでしょうけど。

 道具として魔法使いを量産するのは良く無いんですよね。制御を外れて暴れられるのがオチです。

 そんな感じで健康診断も終了。私は魔法をさらに使えるようになってホクホク顔でアリシアさんは私を止めれなくなったので涙目ですね。命に心配が無いのなら健康診断を受けさせるべきじゃ無かったって顔をしてます。


「これで【飛翔】の禁止も解けるでしょ、私は空を飛びたい」


「駄目です。それは城に帰ってからちゃんと確認を取ってください」


 むー仕方ないですね暫く我慢しましょう。ここで無理を言ってお母様の逆鱗に触れる訳にはいきません。城に戻るとしても美容系の魔道具をさっさと作りましょう。

 学校も楽しく無いけど図書館通いは割りと充実してますし、留学は概ね成功だったと思います。今後も精進を続けて立派に生きていきたいです。

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